【業務用部門長に聞く重点方針】ピロー容器を外食向けにも拡販/日清オイリオグループ

白石部長
白石部長

日清オイリオグループは、フライ油では作業性の向上につながるピロー容器の提案を進めている。これまで総菜や中食を中心に展開していたが、人手不足などが問題となる中で、外食向けにも拡販を図っており、長持ち油と組み合わせることで、顧客にとってさらに高い価値を提供している。フライ油以外の付加価値型商品はBtoB専用の「業務用お役立ちサイト」などを通じて、ユーザーの困りごとを入口に、炊飯油や麺さばき油、風味油など、課題を解決できる商品提案に取り組む。10月からの価格改定が喫緊の課題だが、そうしたコスト課題も含めたソリューション提案によって信頼を獲得し、さらなる事業拡大を目指すとする食品事業本部の白石鉄業務用事業戦略部長に重点方針を聞いた。

――まずは業務用の課題について

外食業態は2019年度には戻り切れていない。売上金額ベースで増えているのは、原材料高騰による単価の上昇が要因だ。客数、店舗数が19年比で9割を割っている業態もある。油の需要量はフライヤーの数とある程度の相関性があり、店舗数が減ったままだと物量はなかなか回復してこない。さらに人手不足の問題があり、以前のように深夜まで営業できないことなどを考えると、マーケット全体は回復基調とはいえ、厳しい状況が続いていくのではないか。

――上期に注力してきた取り組みや提案は

フライ油についてはピロー包装の容器形態を強みにして、戦略的に推し進めてきた。これまで総菜や中食を中心に展開してきたが、人手不足や労働環境の問題が深刻化する外食向けにも拡販に向けて取り組んでおり、徐々に評価されつつある。

また、2023年からの猛暑の影響で米の高騰、品質の低下が問題となっているが、課題解決の一つとして、CVSベンダーや総菜工場を中心に販売している炊飯油を、飲食店でも使いやすい容器形態で商品化し展開している。使用したお店からは炊飯後時間が経ってもごはんの粒立ち、つや、おいしさが維持できると、高い評価を得ている。

オリーブ油の価格が高騰する中、国内充填により安定した供給、高い品質管理を実現した新ブランド「VIENT(ヴィエント)」を発売し、幅広い業態、メニューで採用されている。また、今年秋に発売した「日清キャノーラ&オリーブ」は、生食用途でもオリーブ油らしさをしっかり感じられるのが特長で、専門店でも高い評価を受けている。こうした商品を通じて今後もユーザーが直面するコストの課題に対して積極的に提案を行っていく。

〈業務用のBtoBサイトに誘導、ユーザーの困りごとを入口に〉

――注力するピロー容器の利点について

これまで中食向けの販売が中心であったのは、一般的に年配のパート社員が多い中食業態において作業性の向上が大きな課題だったからだ。斗缶を持ち上げるのはかなりの重労働になるだけでなく、怪我のリスクも大きい。一方で外食業界ではアフターコロナ以降、エネルギーコストの上昇で光熱費も上がる中、厨房自体がコンパクト化しており、使用されるフライヤーも小型化していると聞いている。調理スペースが小さい厨房が増えているため、飲食店でも作業性の高いピローが重宝されているのではないか。

――長持ちの油の需要は

長持ち機能を持たせた油は2014年頃からシリーズ化を始め、現在に至るまで段階的に酸価上昇抑制機能を高めてきた結果、現在も販売量は着実に伸長している。ユーザーにとって油を長持ちさせ、コストを抑えることは、ある意味永遠のテーマであり、これからも幅広い業態で需要が高まっていくのではとみており、今後も更に商品機能のブラッシュアップを行っていく。

――付加価値品の提案事例について

風味油はさまざまな使い方があり、加工メーカーや中食の総菜工場、CVSなど幅広く使われている。当社のセールスが営業活動でご紹介するだけでなく、SNSでの発信や、昨年立ち上げたBtoB専用の「業務用お役立ちサイト」に誘導し、機能性の高い油を知ってもらう取り組みを行っている。いきなり商品を紹介するのではなく、ユーザーの困りごとがないかという入口から、課題解決できる商品の提案に進んでいく形で知ってもらう。今年度は展示会などで接点ができた顧客にメルマガで情報発信するといった取り組みも進めており、サンプル依頼につながった話も出てきている。

また別の事例だが、スーパーマーケットの総菜を対象に、節分の恵方巻に合わせて炊飯油の提案を一斉に実施したところ、普段使用していなかった小規模なチェーン店で採用されるきっかけになり、販売の裾野を拡げることができた。

――下期の部門長としての方針は

足元では10月からの価格改定を確実に実勢化することが大きな課題だ。単純に価格を上げるだけではお客様から理解を得るのは難しく、コスト削減のためのオペレーション改善なども併せて取り組むことで、実現していきたい。また今年度の重要課題として、既存販売先の回復とともに、新たな顧客の開拓を進めることを掲げているが、引き続き販売量の拡大には注力していく。ただし、価格による獲得ではなく、当社が得意とする提案型営業で顧客が抱える課題、ニーズを的確に捉え、最適なソリューションを提供することで成果に繋げていく。

――価格改定の手ごたえについて

今回はユーティリティコストや物流費といった油以外のコストアップが主な要因で、値上げをお願いしている。その部分は一定の理解を得られているが、一方で為替は短期間で大きく変動しており、原料相場も一時期と比べると落ち着いた感はあるものの、ミールの環境は厳しく状況は流動的である。現時点では目指している水準にまでは至っていないが、原料相場だけでなく複合的な要因で上昇しているコストについて丁寧に説明し、理解を得られるよう引き続き努力したい。

〈安定供給に対する要望は今後も大きくなる、全ての起点は「調理現場での課題」〉

――外食ユーザーからの要望は

最近は安定供給のためにBCP(事業継続計画)の観点から当社に新規の引き合いが来ることがある。逆に、当社が1社で供給しているユーザー様から、生産拠点を複数にするなど、有事の際にリスクヘッジできないかという相談も寄せられたりすることもある。直近でも水害、台風、地震などによる物流インフラへの影響が頻繁に起きているが、安定供給に対する要望は今後も大きくなると考えている。

商品面においては、慢性的な人手不足・調理人不足の中、いかに調理工程を短縮でき、かつコストをかけずに料理の本格感を出せるかが求められている。

また、外食店においてテイクアウト需要が一定数定着しつつあるが、経時変化による食味低下の抑制を実現するためのソリューションも今後強く求められるのではないか。

――今後の付加価値品の注力商品について

先程も申し上げた通り、全ての起点は「調理現場での課題」と考えており、課題を解決するために、どれだけの引き出しを持っているかに尽きる。当社は油メーカーだが、ベストな解決手段であれば、油にこだわらずさまざまなアプローチで顧客にとって最適な提案を考えていきたい。

また、5月から稼働している研究開発施設「インキュベーションスクエア」は価値協創の場という位置づけで、当社起点の価値提案に加え、お客様と一緒に手を動かしながらモノづくりと評価を繰り返し、より共感が持てる新しい価値を創造していきたいと考えている。

――最後に今後の意気込みを

2023年のコロナ5類への移行後、業務用マーケットは回復基調ではあるものの、これまでとは消費者の生活行動パターンも大きく変化し、従来のアプローチの仕方では通用しない局面が増えている。

常に現場でのアンテナを高く保ち、ユーザーの「お困りごと」を捉え、柔軟な発想でソリューションを提供し続ける油メーカーであり続けたい。

〈大豆油糧日報2024年11月7日付〉

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発行:
昭和33年(1958年)1月
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