温かい島豆腐を小売で販売できるよう衛生管理手引書を改正、当時を振り返る/全国豆腐連合会

クロックワーク 伊志嶺哉社長
クロックワーク 伊志嶺哉社長

全国豆腐連合会(全豆連)はこのほど、第12回ニッポン豆腐屋サミットを沖縄県で開催した。このうち、基調講演を2つ行い、沖縄県食品衛生協会専務理事でもあるクロックワークの伊志嶺哉社長、上間フードアンドライフの上間喜壽会長が、それぞれ講演した。

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伊志嶺社長からは、「温かい状態で販売する島豆腐小規模製造業者におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」を作成した当時を振り返り、島豆腐の現状について講演した。

伊志嶺社長によると、2021年4月から、島豆腐は通常とは異なる衛生基準を設ける必要に迫られたという。島豆腐は温かい状態で販売するためだ。

1974年当時に制定されたHACCP手引書の記載だと、豆腐の保存基準について、成型した後に水さらしをしないで直ちに販売される島豆腐は、小売店での販売ができないとされていた。

そこで、安全性を確保しながら小売店で販売できるようにするために、島豆腐が55度未満になってから3時間以内に喫食または速やかに冷却後冷蔵保管することなどを手引書に記載した。

しかし、手引書に対する反応は、「厳しすぎる」「人件費がさらに増える」といった厳しいものだったという。

HACCP改正に伴い、豆腐製造業の廃業が進むことを懸念する声も上がったが、豆腐営業許可数を沖縄県と全国で比較したところ、沖縄県は令和2年で平成15年比70%の149店、令和5年は同61%の129店だったのに対し、全国は令和2年で同38%の5,319店、令和5年で同30%の4,272店となっていた。令和2年はHACCP改正前の年だ。

この結果を踏まえ、「全国では、沖縄県よりさらに減っている」とし、HACCP改正を要因とした廃業は考えにくいとした。

そのほか、書籍「シマ豆腐紀行:遙かなる〈おきなわ豆腐〉ロード」を執筆した宮里千里氏をゲストに迎え特別対談を行ったほか、伊志嶺氏が1,425日(11月9日時点)継続している、島豆腐を毎日食べる島豆腐チャレンジについて話した。

〈法人向けかつ利益率が高いケータリングに着目、お客を定義し差別化を図る〉

上間フードアンドライフ 上間喜壽会長
上間フードアンドライフ 上間喜壽会長

上間会長からは、2億円の負債を抱えた家業を継ぎ、代表に就任してから12年で売上を1億円から8億円に増やした自身の経験を語った。上間会長はまず、「中小企業の弱点は会計と財務だ」と見解を述べる。当時、家業の弁当の原価率が67%と高かったことから、徐々に値上げを行いつつ、原材料費を下げ、工場の稼働率を上げた。

さらに、中食の事業領域を「法人向け・一般向け」と「利益率の低・高」の2軸で分類し、法人向けかつ利益率が高いケータリングに着目した。単価が高く取れ、競合が少ないため、販売数が多くなくとも利益が作りやすいと踏み、沖縄の行事・法事向けの仕出し弁当を始めたところ、大きな反響があり、仕出し弁当だけで月700万円の売上を作れるようになった。

他にも、沖縄県全店のファミリーマートで同社の沖縄天ぷらを販売していることを紹介した。

また、「新しい文化を作ることが必要だ。今は、以前からある文化で食べさせてもらっている。しかし、いつか衰退し、魅力を感じなくなるだろう」と指摘し、今ある文化の切り口を変え、魅力的に見える方法を模索していることを話した。

沖縄県豆腐油揚商工組合の瑞慶覧宏至理事長と上間会長との対談では、「差別化を図るには、お客を定義するのがコツ」とした。例えば、高単価で高利益率であるほど競合が少なく、BtoBよりBtoCの方が売上のアップダウンが激しい。またインバウンドはマージンが高く消費者の羽振りが良くなりやすいと述べた。

インバウンド向けの提案として、長期滞在により地元のスーパーに訪れた観光客に対して高単価な豆腐を販売することや、豆腐作り体験などのサービス業を始めることなどを挙げた。

〈大豆油糧日報2024年12月6日付〉

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