【元気企業に聞く】北村味噌醸造場「美味しいみそをつくる」目の届く範囲で商売
京阪枚方市駅すぐ、歴史的な景観を残す「枚方宿」沿いに老舗の風情ただよう店舗を構える「北村みそ本家」。明治16年に大阪市北区天満で創業し、大正10年に枚方市に工場を設立した。商売の考え方は、「おいしいものをつくる」こと。5代目の北村晋也取締役は、規模の拡大は求めず、「目の届く範囲で」商品を大事に販売する。生活者に発酵の本質を伝えるワークショップ「発酵ラボ」や、地元枚方を盛り上げようと、地元高校との取り組みも行う。
「北村みそ本家」の代表商品は、地元枚方の名物である「菊人形」をモチーフに命名した「菊人形みそ」だ。「鯛みそ」といったおかずみそなどもラインアップしている。「おいしいものを作る」という考えのもと、国産の原材料のみを使用し、毎年最良のみそを作ることを目指している。「国産の原材料を使用していることを、当社からあえて言うことはない。みそは日本の文化であり、国産がスタンダードだと思っている。味覚で勝負している。情報によらず、自分自身の舌で味わってほしい」と話す。
店頭販売を基本に、電話注文やネットショップで北海道から九州、沖縄まで全国に販売する。海外から注文を受けることもある。スーパーでの販売は、地元の一部スーパーに限られる。
「作っているものを大事に扱ってほしいという思いが強くなっている。目の届く範囲でお客さんとコミュニケーションをとりながら販売したい」考えだ。
店頭販売の醍醐味を聞くと、「お客さんがみそを食べた瞬間にニコッと笑ってくれる。特に子どもは無邪気なのでわかりやすい。おいしいと言ってもらえるのが率直にうれしい」と笑顔を浮かべる。
「まずは食べてみてほしい」と、店でテイスティングしてから好みのみそを買える。100gから小分けで販売もしている。使い切ってもらえるよう、家族構成などを考慮して容量を提案することもある。
同社では、インスタグラムなどで参加者を募って実施するワークショップ「発酵ラボ」を実施している。参加者は、みそやしょうゆこうじなどの発酵食品作りを、成功だけでなく時には失敗も含めて体験できる。「みそは元々、発酵という生きるための手段、知恵によるもの」とし、発酵の本質を伝える。
また、地元高校と連携し、新たな枚方名物づくりにも取り組む。その一つが、常翔啓光学園中学校・高等学校の高校生10人と取り組んだ甘酒を使ったノンアルコールシェイク「しぇしぇしぇいく」の開発だ。同社の甘酒シェイクをベースに、生徒のアイデアで、味、パッケージ、商品名を作り上げた。8月に開催された同校の文化祭で数量限定で販売し、好評だった。
北村氏は現在53歳。将来の目標は、「65歳を過ぎたら、フランスでみそを作りたい。枚方には外国語大学があり、海外の学生が店に立ち寄ってくれる。文化と美食の国フランスで、みそを作り、発酵食品の魅力を伝えたい」と力を込める。
〈大豆油糧日報2024年12月24日付〉