【新年インタビュー】味の素AGF 島本憲仁代表取締役社長
〈「ココロとカラダの健康」に貢献〉
味の素AGFは、環境に配慮しながらコーヒーをはじめとする嗜好飲料の3R(Relaxくつろぎ、Reset心の整え、Refresh気分一新)を進化させ、「いつでも、ふぅ。」をスローガンに、「ココロとカラダの健康」に貢献する企業を目指している。コーヒー相場は記録的高値で市場環境は厳しいが、家庭用コーヒーは、ニーズに応えて価値訴求すれば自宅や職場などで飲用機会は増えるとし、さらに強化する考えだ。
ーー2024年を振り返って
2024年はコーヒー豆の価格が歴史的な高値を記録した年であり、当社にとっても試練の年だった。コーヒー豆がここまで高騰するのはもう少し先だと考えていたが、世界は予想以上に早く変化しており、このような市場変動への対応として価格改定を余儀なくされた。
1年間で3回にわたる価格改定を実施しなくてはならなくなるが、このようなことは私が入社以来、初めての経験だ。ただ、我々の販売する家庭用コーヒーは1杯約10~40円程なので、1杯あたりで見れば飲むのをやめるほどのレベルではない。小売業の方との連携を強化し、お客様にできるだけ影響を与えないように、サイズ感など工夫を重ねた。
一歩外に出れば、外食のコーヒーは数百円かかるが、家庭用コーヒーはもっと経済的に、器さえあれば飲むことができる。家で飲んでいるものと同じものを職場でも飲もうとする風潮が起きれば、家庭用コーヒーはいっそう伸びるだろう。
その時は、パーソナルタイプのスティック商品が持ち運びに便利なこともありチャンスがあると思っている。賢い買い物をされる方が増えているので、スティックを会社にストックする方も増えるのではないか。
カテゴリーとしては、1杯あたり十数円で楽しめるインスタントコーヒーに価値を見出している。手軽で親しみやすい存在としての強みがありつつ、持続的においしいコーヒーを提供できると考えるためだ。
ーースティック商品の成長について
「ブレンディ」のスティックシリーズは、16種類の豊富な味わいのバリエーションがあり、家庭や職場などで自分好みの味わいを手軽に楽しめる商品として成長している。
さらに、スティックタイプの中でも成長著しいのはスティックブラック(インスタントコーヒーのスティックタイプ)で、2023年比で約1.2倍の成長を遂げた。
家庭用コーヒーが職場や外出先での利用にも適応するようになると、スティックは今後さらに広がりを見せるだろう。家族全員が異なる飲み物を楽しむような時代が到来している中で、スティックタイプの嗜好飲料は個々のニーズに対応できる柔軟性を持っている。
ーー消費者ニーズが多様化とともに細分化しています
ニーズの細分化に応えるのは、我々の得意なところだ。「ブレンディ」スティックで幅広いフレーバーを展開しており、それを店頭で並べていただくと店頭での見栄えが良くなり、選ぶ楽しさも提供できる。
世の中では“品数が多いのは非効率だ”とされることもあるが、当社の場合は非効率に見えるところから改善と技術革新が生まれている。その結果、これまでバリエーションを広げてカテゴリーを大きくしてきたのでニーズが細分化する時代の方が強みを生かせる。
商品開発における自由度の高さは当社の競争力の源泉でもある。「ブレンディ」スティックは、多様なフレーバー展開によりお客様を飽きさせない工夫をしている。SNSを活用した市場調査も迅速に進め、消費者の声を最優先に開発している。チャレンジ精神を持って市場開拓に取り組む。
〈インスタントコーヒーの可能性広げる〉
ーー2024年6月に初のプロパー社長として就任されました。現在感じていることは
日頃から、現在と10年ぐらい先のことを並行して考えている。中長期のことはこの会社で育った人間が考えた方がいいと感じているからだ。その中で私はインスタントコーヒーの重要性が高まると思っている。
コーヒー豆がますます希少になる中、レギュラーコーヒーは1杯分を抽出するために約10gのコーヒー豆を使うが、インスタントコーヒーはその2.5~3倍引き出せる。高圧でエキスを取り出す技術があるので、使い切ることができる。
数十年後に評価されることだと思っているので、技術を磨いてブランドを育て啓蒙活動をしっかりしていく。新たにインスタントコーヒーを提案し、コーヒー豆を使い切るような取り組みをしていくことが、お客様にリーズナブルに届けられる近道だと思っている。
十数年後の社会では、家庭から出るごみも規制されるかもしれない。その際、レギュラーコーヒーはコーヒーグラウンズ(抽出後のコーヒー粉)が出る。一方で、インスタントコーヒーは包材が少し出るくらいだ。
メーカーは先のことを考えて活動しなければならないので、そうなった時のことも考えて、インスタントコーヒーに注力していきたい。現時点でも最近飲まれていない方の頭の中にある味わいよりは、格段においしくなっていると思う。ただ、味はまだ改良の余地があるので、もう少し磨き上げることができればレギュラーコーヒーと遜色ないところまで行けると考えており、そこにビジネスチャンスがあると考えている。
ーー今年に向けての抱負を
ピンチをチャンスにしていく。想定以上に豆の相場が上がっているが、それもひとつのビジネスチャンスになると捉え、当社の商品がより必要な時代になると思っている。中長期的な視点で取り組んでいるが、少しでも早く実現し、お客様に届けられるように技術力や提案力を磨いていきたい。