「食品の安全性確保と食品ロス削減に向けたMALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアム活動」が内閣府「第7回日本オープンイノベーション大賞」で農水大臣賞/アサヒ飲料、明治、九産大など

(左から)九州大学大学院の宮本特任教授(同大学名誉教授)、アサヒ飲料の青山氏、明治の高橋氏、日本食品分析センターの馬場氏、九州産業大学の中山素一教授
(左から)九州大学大学院の宮本特任教授(同大学名誉教授)、アサヒ飲料の青山氏、明治の高橋氏、日本食品分析センターの馬場氏、九州産業大学の中山素一教授

アサヒ飲料と九州産業大学、日本食品分析センター、明治、九州大学は2月5日、内閣府講堂で開催された「第7回日本オープンイノベーション大賞」で農林水産大臣賞を受賞した。アサヒグループが農林水産大臣賞を受賞したのは初めて。

質量分析装置「MALDI-TOF MS」
質量分析装置「MALDI-TOF MS」

「MALDI-TOF MS(マルディートフマス)※」という質量分析装置を利用した微生物同定(対象となる生物がどの分類群に属するか、どの学名と一致するかを選定する作業)において、微生物データベースを各機関と協力して構築することにより、微生物同定の精度・同定率を高め、食品の安全性確保および賞味期限延長に向けた商品設計に役立てることで食品ロスの削減を目指す活動という。

※MALDI-TOF MS=レーザー照射によって菌株のたんぱく質などをイオン化し、その質量を飛行時間によって測定する装置

「MALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアム※活動」は、九州産業大学を中核とし、国内の主要食品企業・分析機関等25団体(2025年1月時点)が参加する食品の品質向上と食品ロス削減を目的とした産官学連携のコンソーシアム(2つ以上の個人・企業・団体などで構成される共同事業体)活動。

2019年のコンソーシアム設立以降、MALDI-TOF MS質量スペクトルライブラリー(MALDI-TOF MSの装置を使って微生物の特徴情報をデータベース化したもの)の拡充による食品微生物の同定精度向上に取り組んできたという。

食品産業界において、安全で高品質な食品の製造・供給を行うためには、原料・半製品・製品・製造環境に悪影響を与える微生物の把握は喫緊の共通課題だ。この活動では、参画企業・機関が所有する微生物の特徴情報を共有し、データベース化することでMALDI-TOF MSを使った微生物同定法の精度、同定率を高めることに取り組んでいる。

また、参画企業・機関の微生物研究者、微生物管理実務担当者間のネットワークを構築することで、課題の共有や議論、勉強会を通じた品質管理・品質保証人材の育成等を実施しているという。

今回の受賞タイトルは、「食品の安全性確保と食品ロス削減に向けたMALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアム活動」。

受賞理由は、以下の2つが挙げられた。

〈1〉コンソーシアム活動での取り組みが本技術の定着に向けて実効性の高い活動になると期待される。

〈2〉本方法は基盤技術として確立済みであり、簡便性・迅速性に優れ、ランニングコストが安価である点が効率的であると評価できる。

会場での受賞者は次の通り。アサヒ飲料研究開発本部技術研究所品質技術グループ青山冬樹氏、明治研究本部生微生物研究ユニット衛生微生物グループの高橋尚美氏、九州産業大学生命科学部教授の中山素一氏、日本食品分析センター彩都研究所微生物研究課の馬場浩氏、九州大学大学院農学研究院特任教授の宮本敬久氏(九州大学名誉教授)。

「日本オープンイノベーション大賞」とは、内閣府が日本のオープンイノベーションをさらに推進するために今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取り組みを表彰するもの。内閣総理大臣賞をはじめとする13種の賞があり、厳正な審査のもと選ばれた取り組み・プロジェクトが表彰される。

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