【関西 百貨店などのバレンタイン商戦結果】高島屋大阪店は店頭売上14%増、あべのハルカス近鉄本店は10%増、阪急うめだ本店も好調

パーティーをテーマに華やかな商品を展開したあべのハルカス近鉄本店「バレンタイン ショコラ コレクション」
パーティーをテーマに華やかな商品を展開したあべのハルカス近鉄本店「バレンタイン ショコラ コレクション」

〈関西チョコレート戦争 カカオショックの影響は〉

今回は関西チョコレート戦争と題し、2025年バレンタイン商戦の各社の催事の特色と戦い方を調査した。阪急うめだ本店(大阪市北区)は日本最大級を謳い、何度も足を運びたくなる・・・ではなく、何度も足を運ばないと全部は見切れないほどの情報量だ。

高島屋大阪店(大阪市中央区)には、100ブランド以上が集結、独自の取り組みで多数の集客に成功した。あべのハルカス近鉄本店は、何度も足を運んでもらう施策として、1~2日ごとに異なるメニューのパフェが楽しめる「チョコパフェ博覧会」も同時開催した。それぞれのイベントの魅力を伝えるとともに、カカオショック下のバレンタイン商戦における商品施策も取材した。

2025年のバレンタインキーワードとして3社共通していたのは「何度も足を運びたくなる催事」ということだ。高島屋大阪店では会場で食べやすい商品を週替わりのコーナーとして展開した。あべのハルカス近鉄本店では1~2日ごとに異なるパフェメニュー展開し、限られた催事会場のスペース内でいかに多くの商品を展開するかに工夫が見られた。阪急うめだ本店はフロア全体だけでなく全館イベントとして展開したことによる、圧倒的な物量で勝負した。バレンタインギフトは贈り物としてだけでなく、この時期にここでしか味わえないスイーツの祭典として多くのお客に支持されていることがわかった。

〈阪急うめだ本店「バレンタインチョコレート博覧会」〉

阪急うめだ本店祝祭広場は「チョコアイス スペースランド」
阪急うめだ本店 祝祭広場は「チョコアイス スペースランド」

300ブランド3000アイテムが揃う日本最大級のバレンタインイベントで、売上高目標も31億円と破格。今年はカカオショックということもあり、チョコレート以外も楽しめる「スイーツの祭典」となっていた。

毎年バレンタイン催事用のパンフレットが店頭で配布されるのだが、年々分厚くなっていっており2025年は全275ページと大長編小説のような厚みに。

メイン催事場はショコラティエが目の前でチョコレートやスイーツを仕上げていく姿が見られる工房エリア、座れる大階段がある「祝祭広場」はチョコアイスを惑星に見立てた展示で目にも楽しいエリアに。催事場のある9階すべてがチョコレートイベント会場になっていたほか、各階のポップアップ物販ゾーンでもバレンタイン関連の商品を販売するなど、全館を挙げての一大イベントとなっていた。各階のポップアップもエスカレーター周辺に配置してあることが多いため、9階までたどり着かないうちに満足してしまう人も多そうだ。

阪急うめだ本店「バレンタインチョコレート博覧会」メイン催事場は「秘密のチョコレート工房」
阪急うめだ本店「バレンタインチョコレート博覧会」メイン催事場は「秘密のチョコレート工房」

来場客が百貨店の中央にあるエスカレーターを使って同フロアに到着すると、メイン催事場「秘密のチョコレート工房」のアーケードが目に入る仕組みになっている。できたてスイーツが多いせいか、フロアはチョコレートや焼菓子の甘い香りが充満している。「工房」を模したメイン催事場では、ショコラティエや職人の手仕事が間近で見られるため、出来上がりまでのワクワク感がキープされ、行列も苦にならない。

カカオショックの影響で原材料費が高騰していることもあり、客単価も高騰すると思いきや、ここで秘策が。ボンボンショコラや、チョコサンドクッキーなど箱入り商品の販売だけでなく、1つから購入できる商品を多く揃え、好きなもの少しずつ試せる新たな楽しみを提供した。

担当者は「会場をテーマパークに見立てて楽しさを全面に押し出した結果、チョコレート愛好家の人だけでなく、この時期だけのスイーツを求めに来られるお客さまで賑わった。バレンタインが終わっても、チョコレート愛はまだまだ溶けない」とし、休むことなく次回のバレンタインに向けてのリサーチをスタートさせている。

〈高島屋 大阪店「アムール・デュ・ショコラ」〉

多くのお客で賑わう高島屋 大阪店「アムール・デュ・ショコラ」
多くのお客で賑わう高島屋 大阪店「アムール・デュ・ショコラ」

2024年より16ブランド増の100ブランド以上が集結。店頭売上は前年比で約14%増、ECと合わせたトータルでも6%増と好調だ。海外の有名ショコラブティックのブースも展開する中で、人気ブランドのトップ3は大阪帝塚山に本店を置く「ポワール」、「マールブランシュ」(京都市北区)、「カカオティエゴカン」(大阪市中央区)と関西のスイーツ店が占拠しているのも特徴のひとつだ。

同百貨店は大阪ミナミの中心地なんば駅直結という位置付けで、「世界から注目を集める都市、大阪」を前面に押し出した結果がランキングにも表れた。

また、2025年はカカオショックによる原材料費高騰の施策として「食感」に注目したショコラスイーツを集めた。焼菓子やかき氷、パフェなどできたてスイーツのほか、パンやクレープ、パンケーキなどもイートインで楽しめた。

担当者から「カカオの原料高騰など引き続きバレンタイン商戦にとって厳しい状況が予想されるため、楽しむだけのチョコレート催事から、カカオの価値を感じられるチョコレート催事に昇華させていく。また、イートインゾーンが殺風景に見えてしまうなど、会場で楽しむ演出が弱かった。会場で食べやすいスイーツや、会場そのものの図面再考をしていきたい」と、来年の催事への期待が高まる回答があった。

〈あべのハルカス近鉄本店「バレンタイン ショコラ コレクション」〉

9階催会場のみの売り上げは前年比約10%増で着地した。事前の予想では8%増としていたため、好調だった様子がうかがえる。2024年3月から同館開業10周年を記念して様々なイベントが開催されていたが、今回のバレンタイン催事はその締めくくりとなった。「PARTY!」をテーマに、145ブランドが華やかな商品を数多く展開していた。

「チョコパフェ博覧会」
「チョコパフェ博覧会」

何度も足を運びたくなる施策のひとつとして同時開催している「チョコパフェ博覧会」も3度目の開催となる。今回も、1~2日ごとにメニューが入れ替わり、12種のパフェが提供された。パフェ以外でもイートインメニューを提供していたブランドが軒並み好調だった。

カカオショックの影響による原材料費高騰を受け、価格が高騰していたインポートブランドは苦戦傾向にあった。また、2025年はチョコレート菓子やキャラメル菓子など、カカオ含有量の少ないスイーツも数多く扱うなどの対策を講じた。

その一方で担当者は「チョコレート菓子は好調だったが、イートインメニューの展開が少なかった」ことを反省点に挙げた。「来年以降、よりライブ感やお祭り感にこだわったイベント催事に進化させていく。また、『ここでしか買えない・味わえない』限定コンテンツもさらに強化していく」(担当者)。

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食品産業新聞

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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