カゴメが「アーモンド・ブリーズ」を日本仕様に再構築、“低糖質&コク”で市場拡大へ

野菜飲料の最大手であるカゴメは2025年3月11日から、アーモンドミルクブランド「アーモンド・ブリーズ」の中味・パッケージを大きく変更する。
今回のリニューアルは、カゴメがゼロから商品開発を行ったという。味わいは、日本市場に合うように、従来よりコクを高め、パッケージは従来の白ベースから、グローバルと同じく青を基調とした。
なぜ、“野菜”の会社がアーモンドミルクに本気で取り組むのか。社内でさまざまな意見が出る中、カゴメが味覚を大きく変更した理由は何か。カゴメとブルーダイヤモンドグロワーズ社の担当者に聞いた。
〈日本市場向けにゼロから味を設計した理由〉
「アーモンド・ブリーズ」は、米国のアーモンド加工大手ブルーダイヤモンドグロワーズ社が展開するブランド。日本では2018年からポッカサッポロフード&ビバレッジが製品展開をしていたが、2024年9月からカゴメが製造・販売を手掛けている。
「『アーモンド・ブリーズ』の従来品は、米国市場向けに開発された、低脂肪乳のようなすっきりとした味わいをベースに設計されていました。しかし、日本の消費者が求める『ミルクのコク』とは異なっていましたので、その点は開発上の重要課題と考えました」と語るのは、カゴメ社マーケティング本部飲料企画部長の西村晋介氏だ。
カゴメの開発チームは、日本市場での成功には「より濃厚な飲みごたえ」が不可欠だと判断。そこで、アーモンドペーストの配合量を1.5倍に増量し、可能な限り原材料の力でコクを引き出した。
「これは、カゴメがトマトジュースや野菜ジュースで培ってきた、植物素材をブレンドするノウハウや製造技術を応用したものです。また、植物ミルクのブランド『畑うまれのやさしいミルク』(2022年発売、現在は終売)の導入で、豆乳やオーツミルクの開発経験を経たことが今回の味づくりにも生かされています」と西村氏。
さらに、低糖質であることも大きな特徴となる。「大切にしたことは、“毎日の健康・美容のために習慣飲用していただける品質とは何か?”です。アーモンドミルクは素材の特性上、低糖質のままおいしさを実現できると考えています。今回新たに発売する『アーモンド・ブリーズ』は「無糖」と「微糖」の2品ですが、「微糖」も低糖質設計で『毎日飲み続けられる甘さ』として開発しました」と説明する。
〈パッケージデザインの刷新、ブランドの原点回帰と契約農家のこだわり〉

一方、ブルーダイヤモンドグロワーズの渡邉貴雄日本カントリーマネージャーは、自社のアーモンドに関してのこだわりを次のように話す。
「社名のブルーダイヤモンドは、ダイヤモンドの中でも特に高品質なものを指す言葉です。アーモンドも同様に、契約農家が大切に育てた一粒であり、その価値を表現したいと考えました」
「当社は世界最大のアーモンド加工販売業者です。アメリカ農務省、カリフォルニアアーモンド協会と一緒になり品質訴求をしています。約3000の農家とともに、アーモンド自体の傷や虫食いなどをチェックし、きちっと優位性のあるものを作るなど、こだわりをもっています」。
今回、タッグを組んだカゴメとブルーダイヤモンドは、ともに契約農家と強い結びつきを持つ企業であり、「畑からの恵みを美味しく届ける」という理念が共通している。今回のパッケージ変更では、そのルーツを明確に打ち出すことを重視したという。
西村氏は次のように話す。「日本市場では、アーモンドミルクが機能性ドリンクとして捉えられがちでしたが、私たちはこれを『畑から生まれた自然な飲料』として再定義したいと考えました。そのため、パッケージの側面には『カリフォルニア契約のアーモンド』と明記し、原料の出自を明確にしています」。
カゴメの名前をパッケージ正面に入れない決断も、そのコンセプトを徹底するためだったとする。
「カゴメの名前を前面に出さないことについては、社内でも議論がありました。ただ、カゴメの名前を大きく訴求することが、アーモンドミルクのイメージと必ずしも一致しない可能性があると考えました」
「導入時において重視したことは、まずは“アーモンド・ブリーズ”というブランドの認知・理解を図り、一人でも多くのお客様にお試しいただき、結果としてアーモンドミルク市場の活性化につながることを最優先に考えました」(西村氏)。
〈100万人サンプリングを実施〉
「ターゲットは、単に健康意識の高い層だけではありません。日々の生活の中で自分の体と向き合い、メンテナンスしている人たちにこそ、アーモンドミルクを知ってもらいたいと考えています」と西村氏は語る。
サンプリングの実施場所は、スーパーマーケットのほか、フィットネスジムなどで、自身の健康に関心を持つ層に向けて展開する。テレビCM、SNS、飲み方提案も実施する。
また、業務用市場にも積極的に参入し、「アーモンドブリーズ バリスタブレンド」を展開する。ラテアートに適した微妙な油分バランスを持ち、プロフェッショナルなバリスタから高評価を得ている商品だ。カフェだけでなく、インバウンドへの対応メニューとしてホテルの朝食メニューとしての採用も進行中だという。
〈カゴメが見据える未来、アーモンドミルク市場の拡大へ〉

渡邉氏は欧米と日本でのアーモンドミルクの飲まれ方は異なると指摘する。「欧米だと1リッター以上の容器に入った製品が中心になり、牛乳と同じように飲まれている。自宅で大人から子どもまで家族で飲んでいるケースも少なくなく、大きな市場になっている」。
日本ではどうか。西村氏は以下のように語る。「日本のアーモンドミルクは牛乳や豆乳と比較してみると、朝食よりも間食などで飲まれることが多いことがわかりました。さまざまな植物性ミルクが注目されるようになりましたが、アーモンドミルクが朝にも飲まれるようになり、習慣化していけばマーケットはもっと広がると思います」。
当面は200mlサイズでトライアルを図りながら、1L大容量につなげたい考えだ。
「私たちはこの市場では新参者であり、まずは一人でも多くの方に飲んでいただく活動を地道に積み上げていくことが重要だと考えています。その結果、数年後のアーモンドミルク市場全体が、1.5倍、2倍と成長していくことを夢見て取り組んでまいりたいと考えています」と西村氏。現在120億円規模の市場を大きく育てることがカゴメの狙いだ。
「牛乳や豆乳などを含めたミルク市場は約7000億円規模ですが、近年、ミルク系飲料に対しての多様な価値を求める消費者は多く、新たな選択肢としてアーモンドミルクが広がる可能性があります。営業活動の中でも、こうした市場のポテンシャルをお伝えし、多くの流通の皆様から共感の声をいただいています」と語る。
カゴメとブルーダイヤモンドのパートナーシップによる新たなアーモンドミルクの展開が、日本市場にどのようなインパクトをもたらすのか。カゴメの挑戦は、新たな飲用文化を創り出す可能性を秘めている。アーモンドミルクが 日本の食卓に根付く日も、そう遠くないかもしれない。