キリンが描くヘルスサイエンス事業の未来、プラズマ乳酸菌事業の海外展開加速

キリンは、ヘルスサイエンス事業のさらなる拡大を目指し、ファンケル、ブラックモアズとともに、アジアパシフィック地域(APAC)最大級のヘルスサイエンス企業となるビジョンを掲げる。単独では難しい市場開拓や事業拡大を、3社の強みを掛け合わせることで実現し、人々の健康課題の解決に貢献する狙いだ。
キリンホールディングスは3月5日、ヘルスサイエンス事業戦略説明会を開催し、グループで2030年までにヘルスサイエンス事業の売上収益を3,000億円規模に拡大し、事業利益300~330億円の達成を目標としていることを発表した。そのために、グループ全体のオーガニック成長に加え、M&Aや提携による事業拡大も視野に入れているという。
キリンホールディングスの取締役常務執行役員ヘルスサイエンス事業本部長の吉村透留氏は、「キリングループは、ファンケル、ブラックモアズとの協業によって、ヘルスサイエンス事業の新たな成長基盤を確立しました。我々の研究開発力と、両社のブランドや市場展開力を掛け合わせることで、より多くの人々の健康を支える企業グループへと進化していきます」と語った。
〈3社の強みを活かしヘルスケア市場を開拓〉

キリンは、プラズマ乳酸菌などのR&D(研究開発)基盤と健康に資する食品・飲料のノウハウを持ち、ファンケルは「不の解消」という理念のもと、化粧品と健康食品事業を展開。ブラックモアズは、オーストラリアを中心にナチュラルヘルス分野で強いブランド力と販売網を有している。これら3社の異なるアプローチを組み合わせることで、新たな市場開拓と価値創造を加速させる。キリンの免疫ケア技術、ファンケルのスキンケアおよび健康食品、ブラックモアズのグローバル市場展開力を融合させることで、各社単独では実現が難しかった事業のスケールアップが可能となるという。
〈プラズマ乳酸菌を軸にグローバル展開〉
キリンが強みとするプラズマ乳酸菌事業は、日本市場での基盤を確立しつつ、海外市場に進出している。2025年には台湾市場での展開を皮切りに、タイやオーストラリア、ベトナムといった市場への拡大を計画。ブラックモアズの販売網を活用しながら機能性食品やサプリメントとしての付加価値を高め、海外での認知度向上を図る。
さらに、ブラックモアズが持つ各国の規制対応ノウハウを活かし、医薬品レベルの品質管理を取り入れることで、信頼性の高い製品展開を推進。今後は、医薬品開発の視点も含めた新たな価値創出に取り組む。
〈ブランド力強化へファンケルとの連携強化〉
ファンケルの代表取締役社長執行役員である三橋英記氏は、「2025年は、ファンケルがキリングループの一員として本格的に動き出す重要な年です。ブランドマーケティングの強化と、プレシニア層向けの新たな健康食品開発を進めることで、より多くの消費者に選ばれる企業を目指していきます」と述べた。
特に「肌不調の解消」を軸としたスキンケアブランドの確立に注力し、40-50代向けの新シリーズ「toiro」を投入。また、プレシニア層向けの商品開発を進め、既存の「えんきん」や「楽ひざ」といった健康食品とともに市場拡大を目指す。
さらに、アテニアブランドの中国市場展開を加速させ、2025年には一般貿易を開始。中国市場では、KOL(キーオピニオンリーダー)との連携を強化し、ブランド認知の向上を図る。
〈東南アジア市場での成長を見据えるブラックモアズ〉
ブラックモアズのCEOであるアラスター・シンミントン氏は、「ブラックモアズは、東南アジア市場でのさらなる成長を目指しています。キリングループの研究開発力と、ブラックモアズの市場展開力を組み合わせることで、新たなヘルスケアの可能性を広げていきます」と意欲を示した。
ブラックモアズは、特にタイ市場ではコンビニエンスストアなどの新規チャネル開拓を進め、より多くの消費者にリーチできる環境を整備する。また、オーストラリア市場では、ナチュラルヘルス製品の需要拡大に対応し、高品質なサプリメントを展開。
デジタルヘルス分野でもリーダーシップを確立し、消費者と医療従事者向けの情報提供を強化。AI技術を活用したデータベース構築を進め、個別最適化された健康ソリューションを提供する体制を整えている。
〈ヘルスケア市場の成長を3社で牽引〉
キリン、ファンケル、ブラックモアズの3社が協力することで、それぞれの強みを活かしながら新たな価値を創出し、グローバル市場での競争力を高めている。ヘルスサイエンス事業の拡大は、単なる事業成長にとどまらず、人々の健康を支える重要な役割を担っており、今後の展開に大きな期待が寄せられる。