「第29回安藤百福賞」表彰式、大賞に大阪大の関谷教授/食創会

〈シート型センサシステムで脳波など計測、食科学にも応用〉
食創会(~新しい食品の創造・開発を奨める会~、小泉純一郎会長)は3月11日、ホテルニューオータニ東京(東京都千代田区)で「第29回安藤百福賞」表彰式を執り行った。表彰式に先立ち大賞受賞者記者会見を開き、今回の大賞に輝いた大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授が受賞の喜びを語った。
同会は(公財)安藤スポーツ・食文化振興財団(安藤宏基理事長=日清食品ホールディングス(株)CEO)が主宰しており、1996年から「安藤百福賞」表彰事業を毎年実施。「食科学の振興ならびに新しい食品の創造開発に貢献する独創的な研究者、開発者およびベンチャー起業家」を表彰している。
今年度の大賞を受賞した関谷教授の受賞テーマは「フレキシブルデバイスを用いた生体計測センサの開発~食品と生体計測の融合で実現するウェルネス~」。世界最薄・最軽量のシート型センサシステムで脳波など超微小電気信号の計測を実現した。
食科学にも応用されており、おいしいと感じる時の色やにおいを脳波など様々な生体情報を計測することで科学的に分析できるという。軽量で装着感がないため自宅での常時ヘルスケアの道も開ける。未病状態をいち早く感知し、適切な食事につなげることで健康社会の実現を目指す。大賞以下、優秀賞と発明発見奨励賞は下表のとおり。

会見には小泉会長と安藤スポーツ・食文化振興財団理事長として安藤氏が列席した。
安藤理事長は「安藤百福賞は〈1〉食の発展に資する学術的基礎研究〈2〉新しい食品の創造に係る食品加工技術など〈3〉食に関わるベンチャーの起業――の3つを表彰対象にしている。29回の中で大賞の受賞は16人となる。小泉会長は9年目となるが、今回まで8回連続で大賞が生まれている。関谷教授の研究は大変画期的な技術だ。おでこにセンサを貼るだけで微細な脳波を計測できる。今後さらなる解析は量子コンピューターによることになるのだろうが、素晴らしい研究開発だと思う」と挨拶した。
小泉会長は「健康にとって一番大事なのは食だ。多くの人に食の重要性を知ってもらうためにも食創会には意義を考えながら健全に発展するように努めたい」などと挨拶した。
関谷教授は「健康や活発な活動には食事が最も重要だ。食事が身体に様々な影響を及ぼす。ただその影響を認知するために身体の状態を正確に計測するというのはまだ難しい。人には多様性があり、動きや発汗の影響、神経以外にも免疫や代謝と、健康に関わるいろいろな要素があるためだ。安藤百福氏がラーメンを低コスト性や保存性で、手軽に誰もが食べられるような食文化を創造したというのは偉大なイノベーションだった。
家庭で健康を維持するために、皆さん体温計、血圧計、体重計は使っているが、認知症や脳梗塞など脳の健康状態をはじめ、病院に行かなければわからない身体の状態が多い。家庭でいつもの生活を送りながら、身体の状態を正確に測りたいという思いから、フレキシブル電子デバイスの研究開発をしてきた。健康管理には早期発見・早期治療が重要だ。早く気づくことで、食事を通して健康維持ができる時代を目指し、これからも精一杯、研究開発と社会実装への取り組み邁進したい」と述べた。
〈米麦日報 3月13日付〉