「お~いお茶」の新たな挑戦、“世界と若者に響く”緑茶の形

伊藤園が、お茶の常識を覆す新たな挑戦に乗り出した。3月17日、同社は緑茶ブランド「お~いお茶」から新商品「お~いお茶 PURE GREEN(ピュアグリーン)」(600mlPET/2LPET)と「同 LEMON GREEN(レモングリーン)」(600mlPET)を発売する。これまでの日本茶の枠にとらわれない、新しいコンセプトの緑茶飲料だ。
さらに、この商品には大谷翔平選手を起用したグローバル戦略が絡んでおり、海外市場を視野に入れた展開も進んでいる。日本茶に新たな風を吹き込む、新商品の狙いとは何か。
〈海外の茶文化からヒントを得た新感覚の緑茶〉

「PURE GREEN」と「LEMON GREEN」は、日本の伝統的な緑茶の枠を超えた商品だ。伊藤園は 「世界のティーカンパニー」を目指すというビジョンのもと、海外の茶文化からインスピレーションを得て開発を進めた。
「PURE GREEN」は、火入れを極力抑えることで若葉のようなフレッシュな香りを引き出した。低温でお茶の苦味と渋みを抑えながら抽出したという。さらに、「自然のままのおいしさ」を追求し、日本茶が持つ清々しいイメージを大切にした。
同社で緑茶飲料を担当する安田哲也マネジャーは、「緑茶飲料市場は拡大していますが、若い世代にとって“緑茶”はまだまだハードルが高い存在でした。そこで、“飲みやすく、自然なおいしさをそのまま感じられる緑茶”を目指しました」と開発の意図を語る。
また、「“水”を超えるようなナチュラルな飲み心地を目指しました」と述べ、従来の緑茶飲料との差別化を強調する。
一方、「LEMON GREEN」は、中国の伝統文化と現代文化が融合した新しいカルチャーの「国潮(グオチャオ)」「新中国式茶飲」からヒントを得て、緑茶とレモンのフレーバーを組み合わせた。無糖のフレーバー緑茶としてのポジションを確立する考えだ。
いずれの商品も、従来の「お~いお茶」とは異なるアプローチを採用し、 「はっとする香り」と「まろやかな口あたり」というキーワードを軸に、飲みやすさを追求している。
〈若年層ユーザーの開拓に挑戦〉
これまで「お~いお茶 緑茶」は、40~60代を中心に支持されてきた。しかし、「PURE GREEN」「LEMON GREEN」は、20~30代の若年層をメインターゲットに据えた商品だ。
安田マネジャーは、「若年層は香りに敏感で、強い渋みや苦みを敬遠する傾向があります。そこで、香りを際立たせ、すっきりとした後味を追求することで、新たなユーザーを獲得できると考えました」と狙いを語る。
市場調査によると、「飲みやすさ」「香りの良さ」を求める傾向が強く、それに応えるために苦みや渋みを抑えた製法を採用。これまで緑茶になじみの薄かった層にもアピールできる味わいに仕上げた。
また、パッケージデザインも工夫し、若者が手に取りやすい、洗練されたデザインを採用。シンプルながらも視認性を高めたパッケージにより新しい層にも興味を持ってもらう狙いだ。
〈プロモーションは大谷翔平選手を起用〉

伊藤園は、大谷翔平選手を起用した新たなテレビCMを展開する。「お茶の常識、すてましょう。」というキャッチコピーのもと、ビーチでサッカーのリフティングシーンを映すことで、これまでにない大谷選手の姿を紹介。視聴者に新鮮な驚きをもたらす狙いだ。
CMでは、大谷選手が 「おいしい!これ、僕のお気に入りです」 とコメントするとともに、アメリカ市場でも受け入れられそうな味わいだと話している。
〈海外展開を視野に、アメリカでは9月に「LEMON GREEN」発売予定〉
また、「LEMON GREEN」は、日本市場だけでなく、アメリカでも9月から発売する。その後、アジアやヨーロッパでの展開も視野に入れる。日本から海外へフレーバー緑茶の楽しみ方を発信し、新たな市場開拓を目指している。
安田マネジャーは、「海外では、緑茶の飲み方が多様化しており、フレーバーを加えた商品が広がりつつあります。レモンの爽やかさを加えたことで、海外の方々でも受け入れられやすくなると考えています」と語る。
さらに、6月下旬には夏季限定販売の「超爽快緑茶」を投入予定で、「酷暑の日本」に向け、より清涼感のある味わいを提案する。
伊藤園は、従来の「お~いお茶」の枠を超えた新たな挑戦を進めている。「PURE GREEN」と「LEMON GREEN」は、香りと飲みやすさを重視した新しい緑茶の形を提案し、若年層や海外市場を狙った戦略的な商品となっている。
これまでの緑茶のイメージを覆すこれらの商品が、若者や海外の人々からどのように受け入れられていくのか注目したい。