ヤマタネらの籾殻利活用、8年産籾殻600tでセルロース2億円売上見込

◆東北や新潟で取り組み拡大図る、籾殻処理費軽減でカントリー使用料低減効果
ヤマタネ(河原田岩夫社長)とトレ食(沖村智代表)、新みやぎ農協(大内一也組合長)の3者は、「未利用バイオマスの活用に関する協定」を締結、4月23日に都内で記者会見を開いた。まず取り組む籾殻(もみがら)利活用や、今後の展望などを説明した。
河原田社長は「米生産には、生産者の高齢化や担い手不足、数年後には需給が逆転する恐れがあるなど様々な課題がある。その一つに籾殻処理がある。重量は軽いが容積が大きく、発生には季節性があり、出来秋から約半年は籾殻処理でプラントを稼働させられるが、残りの半年を稼働させることがビジネスとしては重要。籾殻以外の未利用バイオマスからセルロースを抽出できないか検討している」と展望を語った。
3者はまず、籾殻からセルロースを抽出し販売する。ヤマタネは協定締結に当たり、トレ食に1億円を出資している。ヤマタネは新みやぎ農協管内にセルロース抽出プラントを年内に設置、試験稼働を経て8年産米から本格稼働を予定。抽出の技術指導をトレ食が担う。
ヤマタネは新みやぎ農協から無償で約600t(8年産)の籾殻提供を受け、約240tのセルロースが抽出可能で、売上高2億円を見込む。将来的には有償での籾殻取引を視野に入れる。ヤマタネは籾殻のセルロース活用を全国に拡大する考えだ。籾殻発生量は全国で約150万t、約3割の45万tが未利用だとされている。
今後の取組拡大については「まずは新みやぎ農協との取組を開始するが、東北や新潟などの農協でも籾殻処理が課題。一部では産業廃棄物として処理しているところもある。同様の取組開始に向けて話を進めている」とした。
基本的には籾殻輸送を減らすために産地ごとの規模に応じたプラントを設定する考え。籾殻以外のバイオマス原料については、地域ごとに発生状況(夏野菜の茎やハウス栽培の残渣など)が異なるため、地域特性に合わせてプラント稼働率上昇が、収益性向上につながるとした。
新みやぎ農協では現状、籾殻を畜産農家に敷藁原料として提供するほか、一部は燻炭処理をしてほ場に還元している。「何とか産廃処理を防いでいる」(大内組合長)。しかし、稲作・畜産農家ともに集約が進み大規模化が進み、籾殻も発生時期が集中することで、将来的に有効活用ができなくなる可能性もあるという。「管内では100万俵の米生産を目指しており、同じ容積の籾殻が発生する。嵩張るのが最大の課題だ。カントリーでの籾殻処理費用が軽減されれば、使用料が下げられるメリットがある」。
トレ食の沖村代表は「木材原料以外からのセルロース抽出に取り組んでいる。セルロースは抽出コストが高く利活用が進んでいない。独自技術で籾殻を水熱処理してセルロースを抽出する。水以外に薬剤などを使用していない」と抽出技術を説明。
籾殻由来セルロースの製品化については「セルロースを51%含み、プラスチック混合したスプーンやフォークはプラスチック製品ではなく、紙製品になる。セルロース混合率は抽出原料や製品によって5~80%と幅広く、プラスチックとの混合が前提になる。我々は籾殻由来セルロースのすべてを、農業資材として生産現場に還元したい。抽出後の廃液(残液)には稲作に必要なシリカ(ケイ酸)が豊富。稲作農家はケイ酸を散布しているので、その代替として農家に還元したい」とした。
また、セルロースより細かいセルロースナノファイバー(CNF)にまで低コストで加工できれば、車のバンパー素材として提供できるとした。「今のバンパーはガラスを混合することで強度を出しているが、リサイクルができない側面がある。ほかにも、セルロースをさらに分解することで、バイオエタノールにするバイオマス燃料としての活路がある。これも製品化に低コスト化が課題になる。現状のバイオエタノール原料はトウモロコシなど、食用可能な穀物が多い。「未利用バイオマスが石油代替原料として期待されている」とした。
〈米麦日報 4月24日付〉