お茶の文化、幅広い世代に発信 リアルな体験場所が拡大中

「日本橋 和の茶 伊藤園」では茶師が丁寧に楽しみ方を解説してくれる
「東京オリンピック2020」を控え、日本文化や国産素材への関心が寄せられる中、日本茶への注目が高まっている。急須を持たない家庭が増え、本格的な日本茶を楽しむ機会が少なくなっているが、大手飲料メーカーではお茶そのものの価値を発信するとともに、日本茶を体験できるリアルな場所の拡大や嗜好性の高い緑茶飲料のラインアップを拡充し、コト消費を意識した展開を行うことで、日本の伝統文化であるお茶の魅力を生活者に伝達している。

日本茶のリーダー企業の伊藤園は、量販店や観光地での大茶会を開催し、リーフやドリンクのお茶を身近に感じられる体験活動を行っている。それに加えて、今年9月には三越日本橋本店に茶文化を伝えるコンセプトショップの「日本橋 和の茶 伊藤園」をオープンした。店内には気軽に試飲できるコーナーを設け、同社の茶師の解説を受けながら産地別・発酵別・品種別に本格的な和の茶(茶葉)の飲み比べができる。全国から希少なこだわりの茶葉や茶畑単位で考えたシングルオリジンを常時30種類以上取りそろえており、お茶の初心者も上級者も満足できる体験スペースとなっている。

サントリー食品インターナショナルは、2008年に京都市内に開設した「伊右衛門サロン京都」が人気のスポットとなっている。お茶を通じた豊かな生活文化を、よりモダンにカジュアルに、カフェというスタイルで展開し、新しいライフスタイルの提案を引き続き行う。

キリンビバレッジは、東京・原宿に「キリン 生茶」発の体験施設「お茶のいろは by Namacha」を、今年7月からオープンした(来年5月中旬まで)。映像やパネル展示、お茶のプロによる淹れ方のレクチャーなど、体験型コンテンツを通じて栽培から飲用までの“お茶のいろは”が学べることが特徴。施設でお茶について知ってもらい、飲用機会を増やすねらいだ。

コカ・コーラシステムは、製品でお茶の奥深さを伝達する。緑茶飲料は、嗜好性と同時に止渇性が求められるため飲みやすさが求められるが、同社が10月に発売した「綾鷹珠玉の深み」は、本格的な日本茶の苦みを求めるユーザーに向けた飲みごたえのある製品となっている。液色も「綾鷹」本体や「綾鷹にごりほのか」とは大きく異なり、同ブランドの代名詞であるにごりは、本体の3~4倍もあるという。味覚の幅を充実させることで、緑茶の奥深さを訴求する。

日本茶を代表する緑茶飲料は、競争の激しいカテゴリーであることから、大手各社は毎年のように商品の見直しを行なっており、茶農家や茶匠が認めるほどおいしさは進化してきた。今後は、中味への投資を落ち着かせ、体験や飲み方提案などのコミュニケーションの強化に注力する方が、生活者の関心を集めることができそうだ。SNS全盛の時代に合った取り組みに期待したい。

〈食品産業新聞2017年11月9日付より〉
 

お茶の製造工程を体験できる「お茶のいろは by Namacha」には若年層女性が多数来場

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「綾鷹」はライン拡充で本格派からすっきり派まで幅広いニーズに応える

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