「パパっと片付くダンボール」開発、ひも無しで3枚まとめて持ち運び/キリンビバレッジ&レンゴー
キリンビバレッジは、ネット通販(EC)向けの「キリン アルカリイオンの水」(2LPET×9本入り)のカートンにおいて、レンゴー社と協力して開発した、使いやすく、片づけやすく進化させた「パパっと片付くダンボール」を導入。2019年から本格的に展開する。
具体的には、開けやすさと廃棄のしやすさの2つが特徴。開けやすさでは「トップ&サイドオープン」の機能があり、各家庭のストック環境に応じて、上からも、横からも、2通りの開け方が可能となる。廃棄のしやすさでは「1枚ロック」と「3枚まとめてロック」により、1枚ずつロックしてスリムに収納できるほか、3枚まとめてロックした状態で廃棄が可能となった。
ストック環境に応じ、上からも横からもオープン可能
新カートン誕生は、EC利用者において、面倒なダンボールの処理への不満が顕在化していたことが背景にあるという。同社は、ストックのしやすさや、捨てやすさなどの機能を高めることで商品価値を向上し、顧客のストレスを軽減する考え。
開発に携わったキリンビバレッジ営業本部でEC担当の図子久美子さんは、昨年秋まで同社マーケティング部に所属し、人気ブランドの「世界のKitchenから」を担当していた。
「昨年10月からEC担当となって感じたのは、お客様からいただくレビュー(感想)は、商品の味についてだけでなく、実はカートン(箱)に関するご意見もたくさんあるということでした。コンビニやスーパーでは、商品だけがお客様の目に触れますが、ECでは、家に届いた時にまず目に入るのはカートンです。また、保存で使われる方もいらっしゃるので、まさに商品の顔といえます。その重要性にマーケティングを担当していた頃は気が付きませんでした」とする。
〈アマゾンのレビューでダンボール廃棄の手間に不満の声〉
もともと同社の「キリン アルカリイオンの水」(2LPET×9本入り)は、アマゾンの食品・飲料部門のランキングで3年連続ナンバーワンの人気商品だ。だが、図子さんは、「利用者レビューを見ていると、ダンボールを廃棄する時の手間に関して不満があることがわかりました。そういったストレスを少しでも軽減できるような、暮らしの助けになれることはないかと考えました。日本の住宅事情を考えると、ストックの環境は、上から開けるのがベストの方も、横から開けるのがベストな方もいらっしゃいます。また、ECが台頭するとダンボールに触れる機会が増え、かさばったり、捨てる時にひもでくくることが面倒だという声をききます。そこで、レビューをもとに生活者目線での課題をレンゴー社と共有し、ダンボールの使いやすさに着目した開発を進めました」と話す。
〈たたんだ状態を崩さず保管、ひもを使わず3枚まとめて持ち運び〉
新カートンの特徴について、開発を担当したレンゴー包装技術部の長田真一郎氏は、「基本ベースは、天面(トップ)と横(サイド)のどちらでも開けることができ、使用後はかさばはらずに廃棄できるという価値を付与することを目指して取り組みました。廃棄する時は、サイドの星マークを押し込むと、たたんだ状態を崩さずに保管できます(1枚ロック)。もうひとつは、サイドオープンの取っ手の穴をグッと押すと、3枚までまとめることができます。ゴミ捨てに行く時にひもがなくてもまとめられます。厚みに応じて段階的にミシン目を入れているので、2枚でも3枚でもロックできるように工夫しました」とする。
「1枚ロック」でスリムに収納、「3枚まとめてロック」でらくらく廃棄
〈ダンボールにも付加価値・機能が求められる時代が到来〉
新カートンの開発は、着想から発売までわずか8カ月間。現在のデザインのアイデアは4月にほぼ固まっていたが、その後の耐久テストで何度も改良を行ったという。
長田さんは、「ダンボールは工業包装という位置付けなので、輸送に耐えられることが必要最低限の機能です。しかし、ダンボールは何らかの付加価値や機能をつけないと売れない時代になっています。その中で今回のお話をいただいたので、スピード感を持って取り組みました。新しいカートンは、エンドユーザーの方のための利便性を付与しているのでミシン目が多く入っており、強度の面が課題でした。横から開けやすくすると強度が不足し、輸送時に破れるなどの課題が出たので、ミシン目の間隔や形状を変えたものを20パターン以上作り、改善していく中で現在の形にしました。テストに合格するまでは、寝ても覚めてもずっとこの新カートンのことばかり考えていました。ダンボールに、ここまで仕掛けを入れたものを設計することはまずありません。非常に思い出深い箱になりました」と語る。
図子さんは、「力の弱い人でも簡単にサイドオープンを可能にするなど、わかりやすさとやりやすさの面でまだ課題はあります。今回のような取り組みを通して、またお客様の声(レビュー)を集めて、さらなる改善や次のアイデアにつなげていきたいです。これで終わりではなく、まだ始まったばかりなので気持ちを引き締めて取り組んでいきます」と話す。
レンゴー・長田真一郎氏(左)、キリンビバレッジ・図子久美子氏(右)
EC市場の食品・飲料カテゴリーの中で、水とお茶と炭酸水は約8割のシェアを占めるという。どれもコモディティ(汎用性の高い)カテゴリーなので、健全な成長を続けるためには付加価値をつける必要がある。飲料メーカーは、これまで中味のおいしさの向上やバラエティ化を進めていたが、今回のような生活者視点の課題解決に向けた取り組みが、今後のヒットのカギになりそうだ。