「スティック ドリンクバー」で被災地のコミュニティ形成を後押し、年間約50回のコーヒーセミナーも/味の素AGF社

仮設住宅を中心に無償で設置している「スティック ドリンクバー」
災害が発生した直後に支援を行う企業は多いが、数年が経過しても活動を続けている企業は少ない。味の素AGF社は、東日本大震災の被災地などで「コーヒーセミナー」を18年度に年間約50回開催しているほか、お湯さえあればコーヒーやココアなど好きな飲料が楽しめるスティック製品をBOXとともに提供する「スティック ドリンクバー」を開発し、被災地の仮設住宅を中心に無償で設置する活動などを行っている。なぜ、支援を続けているのか。それは、同社の取り組む社会的価値の創出活動「AGF‐SV」の一環として、事業活動を通じ、「ココロ」と「カラダ」の健康、「人と人のつながり」の創出に取り組むねらいがあるという。

味の素AGF社は、東日本大震災・熊本地震・九州北部豪雨被災地の各地域での応援活動を現在も継続し、また、2018年に発生した西日本豪雨・北海道胆振東部地震の被災地に対しても支援を行っている。災害の発生直後から、味の素グループとして義援金や飲料などの物資を支援しているが、同社の特色ある活動はその後だ。災害から数年たっても継続的な取り組みを行い、18年度は被災地住民を対象とした「コーヒーセミナー」を単独で43回、味の素社との共催で5回実施し、仮設住宅などへの「スティックドリンクバー」は48カ所に設置している。直近では、今年3月17日に昨年豪雨被害のあった岡山県倉敷市で現地AGF社員の応援を得て、〈支え合いのまちづくりフォーラム〉の集まりにおいてレギュラーコーヒーと「スティック ドリンクバー」を提供し、約100人の被災住民が温かいコーヒーなどで憩いのひと時を過ごしたという。

被災住民から寄せられたAGFへの感謝の寄せ書き

被災住民から寄せられたAGFへの感謝の寄せ書き

味の素AGF社環境・CSR部の野木克也さんは、同社の被災地応援活動の背景について、「AGFとしてできることは何かを考えた時、コーヒーはくつろぎの時間を作ることができると思いました。そして、みなさんが集まる場所の飲み物として、お湯さえあれば簡単にコーヒーやココア、フルーツティーを準備できるのがスティックです。“スティック ドリンクバー”の活動は2016年の熊本地震を支援している時に開始しました。その後の九州北部豪雨災害や西日本豪雨災害の仮設住宅、北海道胆振東部地震の被災地には道庁を通してドリンクバー企画を提案しています。現在では、取り組みを知った他の地区の行政・団体職員の方から“支援活動にうちも使いたい”という打診をいただくので、お応えしている状況です」と語る。
 
なぜ、現在まで支援を継続しているのか。それは、被災住民がコミュニティを形成しなければならない機会が一度でないことも要因だという。「被災地の住民のみなさんが集まるきっかけ作りや、コミュニケーションが取りやすい雰囲気作りを応援するために活動しています。しかし、住民の方々は仮設住宅のイベントなどで親しくなった後にも、数年が経つと仮設住宅を出て災害復興住宅に移られます。すると、また新たなコミュニティ作りをしなくてはなりません。そのコミュニケーション作りに当社の活動が役立っていると評価を得たため、可能な限り“コーヒーセミナー”や“スティックドリンクバー”の要請に応じています」(野木さん)。

味の素AGF社 中四国支店・小嶌支店長、東中国営業所・馬場所長、環境・CSR部野木氏

3月17日に倉敷で行われた支援活動(味の素AGF社 東中国営業所・馬場所長、中四国支店・小嶌支店長、環境・CSR部・野木シニアマネージャー)

支援する際には、市役所などの行政を通じた取り組みを心がけているという。「被災地は混乱しているので、急いで地域のコミュニティに直接問い合わせをしたらかえってご迷惑になる場合があります。基本的には、これまでの活動を通して知り合ったNPOや被災地で活動を続ける方々から情報を得て、行政の窓口に連絡させていただいています。そして、実際に現地にうかがって情報を収集しながら、継続的な活動を行うことを大事にしています」。
 
社会的価値の創出に向けたAGF‐SVの一環として、事業活動を通じた「ココロ」と「カラダ」の健康、「人と人のつながり」の創出に取り組む同社。被災地の復興支援活動は、直接的にはビジネスに結びつかない取り組みだが、スティック製品の提供やコーヒー教室の実施は、被災者の「ココロ」の健康に貢献している。また、コーヒーは楽しい語らいの場を作り、「人と人とをつなぐ」存在であることを改めて示しており、同社社員の働くモチベーション向上にもつながっているため、AGFは継続的な活動を続けている。