コーヒーに「サブスク」の波 ネスレ日本が先行しUCCも参入、手間の削減や好みの商品探しにメリット
〈家庭向け「定期お届け便」とオフィス向け「ネスカフェ アンバサダー」を展開/ネスレ日本〉
サブスクリプションの重要性を日本の食品業界でいち早く注目し、取り組んできたのはネスレ日本だ。同社は2013年から「定期お届け便」サービスを展開し、申込者にコーヒーマシンを無料でレンタルし、コーヒーを定期購買してもらう仕組みを作った。
同サービスは1~3か月に1回の頻度でコーヒーを定期購入すれば、コーヒー代(1杯あたり約20円~)だけで一杯抽出マシンを無料レンタルできることから、利用者を拡大している。家庭向けにとどまらず、オフィスでも「ネスカフェ アンバサダー」としてサービスを展開し、現在約45万カ所まで広がった。サブスクリプションを導入する多くの企業が参考にしているビジネスモデルだ。
ネスレ日本のサブスクリプションで使用するマシンと商品
ネスレ日本飲料事業本部の島川基部長は、「世の中の“サブスクリプション化”はさらに進むと思います。それは、膨大な情報の中から、買い物のたびに製品を見比べて選択するよりも、毎日飲むものや食べるものは、定期的に届く方がメリットだと感じるお客様が増えているためです」と分析。
ネスレ日本は、オフィス向けでEコマースの「ネスカフェ アンバサダー」や、家庭向けのサブスクリプション「定期お届け便」サービスをいち早く導入。現在は、いろいろなタイプのネスカフェ製品を飲要する顧客のニーズに対応するため、レギュラーコーヒーの一杯抽出タイプやボトルコーヒーなど、品揃えを広げているという。
また、ネスレ日本には、いち早く取り組んできたからこその強みがある。それは、スマホのアプリを利用してコーヒーを抽出する機能があるため、ユーザーがどの時間帯にどのようなコーヒーを飲んでいるのかというデータが蓄積されていることだ。定期的に届くという価値だけでなく、データをもとに顧客に合った製品提案や情報提供を行う考えだという。
「お客様が、どんな時に、どんなものを、どんな気持ちで飲みたいのかということが、コーヒーを飲む瞬間にわかるので、その情報からお客様に合ったコーヒーを提案していきたいです。ずっと使い続けたいと思っていただけるようなサービスを提供することにより、現在の利用者の方々の満足度を高めていく方針です」(島川部長)。
〈「My COFFEE STYLE」で利用者の好みに合うコーヒーを提案/UCC上島珈琲〉
一方、UCC上島珈琲は、利用者の好みの味覚に合ったコーヒーを提案するWEBサービス「My COFFEE STYLE」の展開を3月末にスタートし、注目を集めている。これは、16種類のコーヒー豆から嗜好性に合わせた商品「My COFFEE お届け便」が毎月届く定期購買のサービスだ。
利用者は、まず、自らの嗜好傾向を診断する「テイスティングキット」(お試し価格500円税込・送料込)を注文すると4種類のコーヒーが届く。そして、コーヒーを飲んだ感想を同社の作成した「My COFFEE マップ」にスマートフォンで登録すると、好みに合ったコーヒーと、その嗜好傾向から同社が選んだコーヒーが届くもの。
UCC上島珈琲の「テイスティングキット」(左)と「My COFFEE お届け便」のコーヒー(右)
利用者は、飲む際に感想を「My COFFEE マップ」にボタン一つで登録すれば、自分だけのコーヒーマップの完成度が高くなっていくのが、このサービスの面白いところだ。毎回同じ味のコーヒーだけにならないため、利用者の“自分好みのコーヒーを探したい”というニーズに応えることができる。
同社担当者は、「コーヒーに興味はあるけれど、選び方がわからないという方にお勧めです。テイスティングキットなどコーヒーを飲んだ感想を『My COFFEE マップ』に登録すると、ご自身の嗜好傾向が分かるので、実際のお店で購入される際にも役立ちます」とする。
コースは、1杯分が個包装になった5杯分のコーヒーが紙製ドリッパーとセットになった月額980円の「おきがるコース」(税抜・送料別)、3種類5袋分のコーヒー約300gを届ける「いつでもコース」(月額2580円、同)など5つ。4月下旬からは、siroca社と共同開発した全自動コーヒーメーカーのレンタルセットも受け付ける。
実店舗での試飲イベントも行っており、4月12日~14日には神奈川県・横浜の「COFFEE STYLE UCC」(横浜駅直結、ジョイナス地下1F)で、テイスティングキットの4種が楽しめる企画を実施した。同店の店頭には、コーヒースタイリストと呼ばれるスタッフや、抽出大会の世界チャンピオンである木次日向子さんらが、試飲する来店者にいろいろな味わいがあるコーヒーの楽しさを語った。同社担当者は、「『My COFFEE マップ』を開設してもらうことをきっかけに、利用者の皆様がコーヒーの世界へ冒険に出られる手助けを行っていきたい」としている。