「コーヒー1日3杯」を各社が勧める理由とは ~ポリフェノールと健康習慣~
日本のコーヒー消費量は堅調に推移し、コーヒーが毎日の生活の中に定着する中で、“1日3杯のコーヒー”を勧める動きが出ている。
コーヒー販売量で国内最大手のネスレ日本は、「3Coffee a Day 1日3杯のコーヒー習慣がいい人生をつくります。」を、今年から様々な場面で訴求している。また、レギュラーコーヒーでトップシェアのUCC上島珈琲も、「ココロとカラダに1日3杯コーヒー習慣」として、“1Day 3Break”の訴求を強めている。
どちらも1日に3~5杯のコーヒー摂取を勧める活動だが、なぜ杯数の訴求まで行うのか。
それは、コーヒーには美容・健康成分のポリフェノールが含まれるが、そのことが生活者に知られていないことが大きな要因だ。
全日本コーヒー協会が20~79歳男女に対し行った昨年の調査結果によれば(n=1137人)、ポリフェノールと聞いて想起される飲料・食品のトップはワインで全体の66.6%、次いでチョコレートの55.8%で、コーヒーは、ぶどう、ブルーベリー、大豆食品に次ぐ6位で9.9%だった。ただ、実際に日本人がポリフェノールを最も多く摂取しているのはコーヒーからである(ネスレ調べ)。
一般的に理想的と言われるポリフェノール摂取量は、1日1000mg~1500mg以上とされるが、現在の平均摂取量は800mg程度にとどまっている。そこで理想の摂取量を達成するために、現状の1日に平均1杯とされるコーヒーの飲用杯数を、3杯以上にしようというのが、「1日3杯のコーヒー」訴求の大きな理由につながっている。コーヒーには100mlあたり約200mgのポリフェノールが含まれているためだ。
ポリフェノール摂取をコーヒーで促進するため、味の素AGF社は、今秋から主力製品でポリフェノール含有量を記載する活動を始める。
同社担当者は、「われわれはポリフェノールを通じたコーヒーの健康価値の訴求に取り組むべきだと考えている。影響力のある売れ筋商品の“ブレンディ スティック”では、ほぼ全品種でポリフェノール含有量を記載し、他の製品も段階的に取り組む。嗜好品に健康価値は合わないと言われるが、生活者の意識は変わっており、健康・栄養課題に対する価値の訴求は待ったなしだ。訴求する大事な価値のひとつであり、継続的に取り組む」と話す。
製品パッケージにポリフェノール含有量を記載(味の素AGF社)
UCC上島珈琲は、“1日3杯のコーヒー”飲用習慣を提案する中で、原料や製法でポリフェノールやカフェイン量をコントロールしたレギュラーコーヒー製品として「カフェリズム」を展開している。気分やシーンでコーヒーを選べる仕掛けで、若年層や女性のコーヒー飲用のきっかけを作っている。同社担当者は、「ポジティブにポリフェノールを摂れるように、“カフェリズム”のような製品投入や、コミュニケーション活動を行っている。菓子メーカーとチョコレートでコラボするなど、業界を超えた連携でポリフェノール摂取を訴求していく」と語った。
一方、ネスレ日本は、「1日3杯のコーヒー習慣」は、ポリフェノール摂取の促進にとどまらず、より大きな意義があるという。同社は、予防医学研究者の石川善樹氏との共同研究により、WHOが定義する“GOOD LIFE(良い人生)”を送っている人は、1日3杯のコーヒー習慣を持っていることを発見したという。これは、“ココロ”“からだ”“つながり”の面で、コーヒーが果たす役割が大きいことを示す。
ネスレ日本の担当者は、「コーヒーを飲むことは、生活者の毎日にとってどのような効用をもたらすのかということを、機能的な価値以外も含めて見直した。いきいきとした人生を計る上でわかりやすい要素が、世界的に調査されている幸福度だったのでその関係性を調べたところ、コーヒーを飲む杯数が多ければ多いほど、その人たちの人生の幸福度は高く、毎日を前向きに生きていることがわかった。人と会った時や疲れた時など、コーヒーは1日の中で切り替える時のスイッチ的な役割があるのではないかと考えている」と話す。
「“良い人生”を送っている人は、1日3杯のコーヒー習慣を持っている」(ネスレ日本資料)
「コーヒーと健康」については、2015年春に国立がん研究センターが多目的コホート研究の成果として、1日3~4杯飲む人の死亡リスクはまったく飲まない人に比べ24%低いことを発表した。だが、ポリフェノールが含まれることなど、コーヒーはまだ知られていないことが多い。コーヒー各社は、飲む価値を改めて伝えるとともに、1日3杯以上飲めるように、さまざまなシーンで飲用できるような製品・サービスの開発に取り組んでいる。