低迷する果汁飲料市場で「トロピカーナ」が強い理由とは

「トロピカーナ」シリーズ(「W オレンジブレンド」、「エッセンシャルズ プラス」乳酸菌スムージー・ビタミンスムージー)
〈100%果汁以外に大きな柱を確立、今年の目玉はスムージー〉
果汁飲料市場は、生活者の甘さ離れによる無糖飲料の活性化や、原材料の高止まりで値ごろ感のある商品が少なくなったことなどの理由から6年連続で減少し、2019年の生産量は2013年比で20.2%減の156.8万リットルとなった(全国清涼飲料連合会調べ)。

同市場の中で、奮闘しているのは、出荷量で2018年に前年比4%増、2019年に同1%減に踏みとどまっているキリンビバレッジの「トロピカーナ」ブランドだ。100%果汁飲料の世界ナンバーワンブランドとして知られるが、日本で成功している理由は、意外にも栄養成分入り商品の躍進にあるという。

「トロピカーナ」ブランドは、チルド売り場で展開する大型容器の「100%まるごと果実感」(900ml紙)が、昨年も前年を上回る実績になったが、小型の紙パック容器の100%果汁商品がやや苦戦している。同ブランドで、大きく実績を伸ばしているのは栄養成分入りの商品だ。

これは、果汁飲料に鉄分や食物繊維の栄養素を加えた「トロピカーナ エッセンシャルズ」シリーズ(330mlプリズマ容器他、5種類)であり、体調を維持したいというニーズのある30~40代女性から支持されて5年連続で出荷量が拡大し、柱商品となっている。キリンビバレッジの担当者は、エッセンシャルズシリーズについて、「『おいしいついでに栄養補給』という健康習慣を日本のお客様に浸透させたい」とねらいを語る。

また、昨春の発売以来、特に男性ユーザーがリピート買いをして人気となった「トロピカーナ W オレンジブレンド」(500mlPET)も、1日不足分のマルチビタミンと2種のミネラルが入りなどの特徴が支持されている背景にあるという。

同社は栄養成分入りの商品の人気が高まっていることから、今年は、男性の20~49歳の朝食欠食率が高いことに着目し、新たに「エッセンシャルズ プラス」を立ち上げる。ラインアップは、3種のビタミン(A・C・E)と1食分の野菜が入った「エッセンシャルズ プラス 乳酸菌スムージー」と、プラズマ乳酸菌1000億個と1日分のビタミンCが入った「エッセンシャルズ プラス ビタミンスムージー」(各330mlプリズマ容器)の2商品で、4月7日から発売している。

これは、調査で“果汁で摂りたい栄養素”は、男女ともにビタミン各種や乳酸菌が上位に入ったことや、スムージーが身体によいイメージを持つことが開発背景にあるという。担当者は、「既存のスムージー飲料は、味・素材の違いで商品が提案されているが、トロピカーナは摂りたい栄養に着目し、栄養で選ぶスムージーを提案します」と語る。

世界トップブランドの「トロピカーナ」でも、世の中の“甘さ離れ”という大きな波から逃れられない。そこで、果汁100%の商品だけに固執するのではなく、「果実そのものの美味しさ」という独自イメージが浸透していることを活かし、栄養成分入りなどに取り組む。キリンビバレッジの担当者は、「おいしさ・栄養のつまった果汁を、現代の様々な生活シーンにあわせて提案し続け、明るく、そして元気な毎日をサポートしたい」とする。市場は減少傾向だが、果汁飲料の魅力を発信し続けるために、トップブランドの生活者の変化と向き合ったチャレンジに注目したい。