サントリー「ボス カフェベース」が前年比5割増に、コロナ禍で濃縮飲料に脚光、在宅需要拡大と汎用性で共働き世帯に人気
2020年の実績は前年比4割増、「カフェベース」にリニューアルして以降の3~12月では約5割増の出荷となった。“手軽”に“時短”で飲める“本格感のある”コーヒー・紅茶として、忙しい毎日を送る20~40代の共働き世帯を中心に支持されている。
2019年までは、「ボス ラテベース」として牛乳と割って楽しむラテタイプを展開していたが、2020年3月のリニューアルから、ラテもブラックも楽しめる味わいに進化させ、汎用性を高めた。現在のラインアップは、「無糖」、「甘さ控えめ」、「贅沢カフェインレス」と、ラテで楽しむ「焦がしキャラメル」、「紅茶ラテ」と季節限定品の「ほうじ茶ラテ」の6種類。
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「ボス」ブランドは、“働く人の相棒”として、これまで缶コーヒーを中心にオフィスなど家庭外で圧倒的な強さを発揮してきた。そして、コロナ禍で在宅需要の高まりを受け、現在は家庭内でも徐々に存在感が高まっている。
2021年は大がかりなマーケティング活動も予定しており、本格的に家庭内進出を目指す考えだ。サントリー食品インターナショナルのブランド開発事業部の城坂由佳さんに、同商品の取り組みについて話を聞いた。
サントリー食品インターナショナル ブランド開発事業部・城坂由佳さん
――「ボス カフェベース」は、2016年に「ボス ラテベース」として発売されましたが、当時、濃縮タイプのコーヒーは珍しい存在でした。市場に定着できたのはなぜですか。
とにかく味わいにおいて、すごくおいしいという自信があったので、一人でも多くの人に飲んでいただきたいという思いから、会社としてしっかりじっくり育てていく方針を立てていた。テレビCMなど一気に認知度を上げる取り組みはしてこなかったが、全社の営業担当が一体となり、流通企業各社の売り場のニーズに合わせてレシピを提案したり、レシピ動画を自分たちで実際に作って見てもらうような工夫をずっとしてきた。
それらの取り組みにより、2016年から2018年まで売り上げが前年比約1.8倍で拡大した。しかし、2019年には認知率の向上や取扱店舗の拡大が鈍化し、成長は微増にとどまっていた。“濃縮コーヒー”という新しいカテゴリーに対して、チャンスを感じて下さった流通チェーンもあったが、やはり一般的にみると変わったもの、ニッチなものに見えてしまったためだ。
そこで、ふと、商品自体にもしかしたら課題があるかもしれないということに視点を切り替え、“濃縮コーヒー”はヘビーユーザーが多い一方で、離脱してしまう人も多いことに着目した。その人たちに話を聞いてみると、「おいしいけど、濃すぎて飲み切れない」「非日常的においしいデザートコーヒーとして飲むのはいいが、毎日飲み続けるには、少しまったりしている」と指摘された。
それまで、濃縮コーヒーは、濃ければ濃いほどいいと思っていたが、もう少し“ドリンカビリティー”(飲みやすさ)を上げていかないと、日常的な飲料にならないと考え、ドリンカビリティーを上げた中身設計にし、より日常的なコーヒーを目指した。
レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーなどの嗜好品に対抗できる、日常的なコーヒーのポジションを獲得する考えで、商品も中味も、容量も含めてより使いやすい方向に切り替えた。試作品を濃縮コーヒーから離脱されたお客様に飲んでいただいたら、おいしいと言って下さった。さらに、ヘビーユーザーの方からも好評だった。それが大きなターニングポイントになった。
――2020年3月のリニューアルからは、牛乳で割るラテタイプだけでなく、水で割っても飲める設計にされました。
“水で割ってもおいしく飲める”というブラックコーヒーの需要も取りに行った理由は、2016年の発売以来、営業担当のメンバーたちから“水で割ったらおいしいぞ”という話をもらっていたり、お客様も約2割の方が水で割って飲まれていることがわかったためだ。
中味設計をする担当者も“水で割るのも実はおいしい”と言っていたので、2020年からは牛乳でも水でも割れる、ラテでもブラックでもおいしく飲める中味設計によりブラッシュアップさせ、汎用性の高さを打ち出した。
――2020年の「ボス カフェベース」の販売状況は。
2020年は新型コロナの影響で在宅需要が増加したこともあり、大きく成長している。特に伸長しているのは無糖タイプだ。また、ラテでもブラックでも飲めるという汎用性を高めたことで飲用回数が増えている。奥様はラテで、旦那様はブラックで飲むようなケースも増え、家族の中で飲用の間口が広がり、購入頻度も高まった。その結果、リニューアル以降となる3-12月では対前年約5割増の大幅伸長で着地する見込みだ。
――どのようなシーンで飲まれていますか。
調査によれば、一番多いシーンは朝である。朝起きて、台所で牛乳と「カフェベース」を割ってラテを作り、立って飲みながら朝ご飯を準備しているという方も多いと聞く。そして、コロナの影響で、男女ともテレワークが増え、パソコンの横に「カフェベース」をずっと置いて飲み続けているケースも増えているという。そのことからも、売上が伸長したのは在宅需要が増えた影響は大きいと思う。特に、2020年は男性のお客様が増えた印象だ。
――今後の取り組みは。
認知をさらに拡大し、新しいユーザーの獲得を目指していく。メインターゲットは、共働き世帯の20-40代男女だが、最近は単身の方も増えてきている。一部コンビニエンスストアの店舗などでは、通常サイズよりも小さい250mlPETを4月から発売したところ、新たに飲まれる方が増えた。2021年は、「ボス カフェベース」の大々的なマーケティングを展開する予定なので、より多くの方に知っていただき、大きな飛躍の年にしたい。
2016年から新しいカテゴリーを創造してきた「ボス カフェベース」。スタートから3年間で約8割増と大きく売り上げを伸ばしたものの、2019年は微増にとどまっていた。2020年はコロナ禍による在宅需要増加と、商品設計の見直しでブラックとラテの兼用提案を行い、リニューアル以降は約5割増となった。家庭外で成功を収めてきた「ボス」が、2021年はマーケティング活動を強化し、いよいよ家庭内に本格進出する年になりそうだ。