水出し専用のお茶やコーヒー 存在感高まる、利便性&コスパで需要拡大、三井農林「水出しアイスティー」はコロナ前比84%増
〈麦茶や紅茶、ハーブティーからコーヒーまで水出し専用商品広がる〉
夏本番を迎え、飲料市場は活況を呈している。なかでも利便性やコスパを兼ね備えたアイテムとして近年、存在感が高まっているのが水出し専用の嗜好飲料だ。麦茶や紅茶、ハーブティーなどのティーバッグからコーヒーバッグまで、メーカー各社が商品・フレーバーを拡充していることもあり、市場は拡大傾向にある。
コロナ禍で在宅時間が増えたことを機に飲用機会が創出され、水出し専用商品が改めて評価されている。軽量でまとめ買いに向き、家庭で保管する際もかさばらず、ごみが減る点などでも支持されている。消費スタイルのパーソナル化やエコ意識の高まりなどを背景とするマイボトル需要の拡大も、水出し商品の需要拡大を加速させる要因となっている。
〈三井農林「水出しアイスティー」22年度の出荷額 過去最高に〉
「日東紅茶」ブランドを展開する三井農林では、「水出しアイスティー」シリーズが好調に推移している。2022年度(22年4月~23年3月)の出荷金額は19年度比84%増(21年度比15%増)と大幅に伸長し、1992年の発売以来、過去最高を記録した。ロングセラーとして根強い人気を誇るが、「コロナ禍に在宅勤務が浸透し、1日に何杯も嗜好品を飲む人が増え、一度にまとまった量を作ることができる使い勝手の良さが受け入れられた」(三井農林)。
コロナ前に推し進めてきたリニューアル効果も、売上拡大とリピーター定着につながっている。同社ではマイボトル市場の成長に着目し、2018年に従来品の1袋1ℓから1袋500mlへ仕様を変更していた。併せて従来の「水出しティーバッグ」シリーズから「水出しアイスティー」へと商品名を変更するとともに、箱型からチャック付きアルミ製スタンドパウチへとパッケージを刷新し、利便性の向上を図った。その後、2019年以降は「トロピカルフルーツ」「ルイボスレモン」「はちみつ紅茶」など時流にあわせたフレーバーを拡充し、気分にあわせて味や香りを選ぶ楽しさを提供することで、新規ユーザーの獲得に成功。「特に、トロピカルフルーツは、甘いフルーツの香りが好評でリピーターも多く、売り上げを拡大し続けている」(同社)。今年も順調に配荷が進み、「水出しアイスティー」シリーズの23年3~5月の出荷金額は前年比約3%増と好調だ。
〈はくばく「水出しでおいしい麦茶」4・5月売上は前年比25%増〉
はくばくの「水出しでおいしい麦茶」も急成長している。22年度(22年4月~23年3月)の実績は前期比20%以上増となり、今年4~5月の売り上げも前年比25%増と大きく伸びた。幅広い穀物商品を手がける同社の商品のなかでもリピート率が高く、配荷拡大が売り上げアップに直結している。
これに加え、冬場の水出し需要の拡大も要因という。「これまでは流通企業様の間でも水出しは季節商品というイメージが強く、季節によっては棚落ちしてしまうケースが多く見られた。しかし今では年間を通じて水出しを購入していただいている。麦茶は煮出すもの、水出しの麦茶は味が出なくて不味いというイメージを払拭し、手軽でかつおいしい麦茶が飲めるという点が購入につながっていると感じる」(はくばく)。
同社では新規販路の開拓に加え、新規ユーザーの獲得へ向けたプロモーションも積極的に実施している。例えば22年にはタイガーのマイボトルとのコラボやサンリオとのオリジナルグッズプレゼントキャンペーン、SNSでのプレゼントキャンペーンなどを行った。過去には生活雑貨専門店のロフトで商品サンプリングを行うなど、喫飲機会の創出を図っている。
〈水出しコーヒーも伸長傾向/キーコーヒー・UCC上島珈琲〉
一方、コーヒーも、水出しカテゴリーはアイス市場全体の中で伸長傾向にあるという。キーコーヒーは、コーヒーバッグの「香味まろやか水出し珈琲」(30g×4袋)を発売している。水につけておくと最短4時間で、本格的なアイスコーヒーが楽しめるという商品だ。水出しならではのまろやかな味わいが特徴となっている。同社では、「水出しの場合は、できあがるまでに時間がかかるが、使用する器具も少なく、手順も少ないので簡単に作れるのが魅力だ」としている。
また、UCC上島珈琲は、水出し商品の販売店舗が昨年よりも増加し、好調だという。同社はカテゴリーシェアトップの「ゴールドスペシャル コーヒーバッグ 水出しアイスコーヒー」(30g×4袋)を展開。今年3月には、機能性表示食品の「UCC&Healthy コーヒーバッグ 水出しアイスコーヒー 4袋」も発売し、水出し商品のラインアップを強化した。同商品の機能性関与成分はコーヒー由来クロロゲン酸類。コーヒー由来クロロゲン酸類は、食後の血糖値の上昇を緩やかにする機能が報告されていることから、「華やかな香りとすっきりとした味わいで、『食事と合わせて楽しめる』ことを訴求していく」(同社)としている。