「水と生きる」サントリー食品が水のサステナビリティ活動方針を発表、国内での啓発と海外での水育・水源涵養活動を強化へ、小野真紀子社長「未来の水をいま、森からつくる」
サントリー食品インターナショナルは12日、水を未来まで守り育むこと、またその大切さを伝えるために定めた「水のサステナビリティ」の活動方針を発表した。水を製造・販売する会社として、取水量以上の水を水系に育む「ウォーター・ポジティブ」の実現に向けた活動を推進する。
サントリーグループは、日本の水源を守り育む活動として、2003年からサントリー「天然水の森」活動を開始し、水源地の森を保全・再生してきた。2023年11月時点の涵養面積は全国22カ所、約1万2000ヘクタールとなり、国内工場で汲み上げる水の地下水量の2倍以上の涵養をすでに達成している。
水をめぐっては、気候変動などにより2050年に世界で50億人が水不足の状態になる可能性が指摘されている。農作物の収穫量不足や生物多様性にもマイナス影響が出るなど、人類が直面する社会課題だ。そのような状況から近年、世界ではウォーター・ポジティブという概念が生まれ、注目されつつある。
「水のサステナビリティ」活動方針について、小野真紀子社長は次のように語る。「サントリーの事業は創業以来、地域と共有する水資源に支えられ、成長してきた。水を使うだけではなく、未来にわたって良質な水を保全し、育てていくこともサントリーの事業活動そのものである。グループ内で唯一、水そのものを製造販売している会社として、水のサステナビリティ活動の推進を率先して行う」。
「水のサステナビリティ」活動方針は、国内と海外でそれぞれ定めている。国内では、清涼飲料市場でナンバーワンブランドの「サントリー天然水」を通じた「ウォーター・ポジティブ」啓発活動を強化する。海外では、国内で培った知見を活かし「水のサステナビリティ」活動を推進する。
国内の活動は、20年の歴史がある水源涵養活動の「天然水の森」活動により、サントリーグループの国内工場で汲み上げる地下水量2倍以上の水をすでに涵養し、さらに、サントリー食品に限れば、地下水量の約4倍の水を涵養している。
「サントリー天然水」におけるサステビリティ活動は、この「天然水の森」活動や容器・包装において軽量化や植物由来素材の使用などがあり、今年4月には約6分の1サイズまで小さくたたみやすい2Lボトルを開発し、発売した。それにより顧客のサステナビリティ活動への理解が深まり、「サントリー天然水」をあえて選ぶという行動変容への兆しも見えたとする。小野社長は、「改めてサステナビリティ活動は、ブランド成長やブランド価値の向上に不可欠な活動だと実感している」と話す。
また今年9月から「ウォーター・ポジティブ」宣言のコミュニケーションを展開したことで、変化の兆しが出ているという。若年層を中心に、水の大切さや未来につなげる必要性への気づきを感じたという声が同社に多く寄せられている。
これらの兆しを受けて、サントリー食品は、生活者にとって身近な「サントリー天然水」を通じ、サステナビリティ活動を伝える必要性を感じ、いっそうメッセージとして掲げていく考えだ。小野社長は、「100年先の未来まで、ずっと水と生きていけますようにという思いも込め、製品、工場、店頭、コミュニケーションなど、あらゆる接点で“ウォーター・ポジティブ”の必要性をお客様に伝えていく」とした。
具体的には、「サントリー天然水」の製品ラベルで、「ウォーター・ポジティブ」に込める思いを大きく表記したデザインを採用し、来年春から刷新する。工場見学でも同様に、水を森から育み、50年100年先の未来へつなげていく姿勢を伝えていく。営業・店頭活動でも、得意先や顧客に対して、直接セミナーやワークショップという形で提案活動を強化していく。CMでは、「未来の水をいま、森からつくる」をメッセージに、ウォーター・ポジティブの大切さを感じてもらうため、芦田愛菜さんを起用したテレビCMを12日から放映開始した。
一方、海外における活動は、生産拠点を中心に「水のサステナビリティ」活動を推進していく方針だ。生産拠点での水使用量を減らし、原単位を削減する取り組みのほか、こども向けの次世代環境教育である「水育(みずいく)」、使用する水の100%以上をそれぞれの水源に還元する水源涵養活動などを推進する。
サントリーグループが実施している「水育」は、こどもたちが自然の素晴らしさを感じ、水や水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考える次世代に向けたプログラム。日本では2004年から取り組み、海外では2015年から国内での知見をベースに活動し、現在サントリー食品の事業展開国では7カ国まで広がり、受講者数は延べ19万人となった。
そのひとつであるベトナムでは2015年から活動を開始した。小学校3〜4年生の児童を対象に、節水、環境保全、衛生教育に関する授業を行い、2022年までの累計参加者参加者数は約14万人となったという。今後は、新たな海外拠点での展開も進める方針だ。
そして、海外では、新たな水源涵養活動も開始する。サントリー食品は12日、清涼飲料の海外拠点のスペインのトレド県で、地域と協業した水源涵養活動を開始することを発表した。同社のグループ企業であるサントリー食品スペイン社は、「シュウェップス」、「ラカスラ」などのスペインの清涼飲料ブランドを製造販売し、トレド県に清涼飲料工場を構えている。
2024年1月から地域の方々や各分野の専門家、研究者の協力を得ながら、同社トレド工場の水源であるグアハラス貯水池周辺とその上流域にて、植生回復による水質や生物多様性の向上を目的とした水源涵養活動を開始する。海外生産拠点としては、フランスに次ぐ2カ所目の展開となる。
小野社長は、「サントリーは、自然と水の恩恵を、商品やサービスとしてお届けする企業として、今後も水源涵養活動のグローバル展開を加速する」と語った。