ネスレ日本、JR貨物グループと連携で食品・飲料業界初の中距離での定期貨物鉄道輸送を2月から開始、1日あたり200tのトラック輸送を貨物鉄道へ移行、CO2排出量は年間約900t削減へ
ネスレ日本は2月21日、2024年2月からJR貨物(日本貨物鉄道社)と、そのグループ会社である全国通運社、日本運輸倉庫社とともに、500km以上の長距離輸送を対象としてきた貨物鉄道による輸送を、より貨物量の多い中距離輸送にも拡大し、静岡、大阪間における「ネスカフェ ボトルコーヒー」の定期貨物鉄道輸送を開始したと発表した。1社で1日あたり200t規模の輸送において、中距離帯での定期貨物鉄道輸送は、食品・飲料業界で初となるという(ネスレ日本、JR貨物調べ)。
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ネスレ日本は、バリューチェーン全体を通じ環境へ配慮する取り組みを行っており、物流分野においては、二酸化炭素(CO2)排出量の低減のために、トラックから貨物鉄道や船舶などに輸送を切り替える「モーダルシフト」を10年以上前から推進している。また、貨物鉄道や船舶を活用した輸送は、一度に大量輸送が可能となる。トラック輸送よりも環境負荷が少なく、また、トラックドライバーの長距離走行を減らせるため、効率よく輸送作業ができ、ドライバーの負担軽減の一助になることも期待されている。
「モーダルシフト」は、長距離になるほど効率的な輸送が期待できることから、これまでは長距離輸送(走行距離500km以上)が中心だったという。今回、ネスレ日本とJR貨物グループは、より貨物量の多い中距離輸送(走行距離約200から350kmを中心帯に想定)でも新たな輸送網の構築に取り組み、2024年2月からネスレ日本の島田工場(静岡県島田市)からJR貨物社の百済貨物ターミナル駅(大阪府大阪市)を経由した関西方面への「ネスカフェ ボトルコーヒー」の中距離帯での定期貨物鉄道輸送を開始する。
この取り組みにより、静岡エリアから関西エリアへ1日当たり200tのトラック輸送を鉄道へ移行する。年間の二酸化炭素(CO2)排出量は約900t削減できる見込み。今後は段階的に対象品目と地域の拡大に取り組む予定で、次年度以降は中・四国や東北エリアでも展開していく考えだ。
これまでネスレ日本は、鉄道貨物による長距離輸送を行ってきたが、今年2月からは、より貨物量の多い中距離輸送に関しても段階的に拡大し、持続可能な物流モデルについて構築できるように共同で取り組むことに賛同したという。
ネスレ日本の深谷龍彦社長兼CEOは、次のように語る。「本日、食品・飲料業界では初めてとなる中距離帯での定期貨物鉄道輸送の開始式を迎えることができた。心より嬉しく思うとともに、このプロジェクトに関わってこられた全ての皆様へ感謝を申し上げたい」。
「我々は物流において、大きな二つの問題を抱えている。1つめは物流の2024年問題だ。トラックドライバーさんの働き方への規制が今年の4月から始まろうしている。それを踏まえて、これから持続可能な物流に向けて、ますますチャレンジをしていかねばならない。2つめは、温室効果ガスの排出削減だ。ネスレはグローバルでサステナビリティに対するコミットメントを掲げており、具体的には、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指している」。
「日本においてもその目標を達成するために活動しており、例えば2023年は、国内の全3工場において、購入する電力を全て再生可能エネルギー由来のものに切り替えた。非常に重要な取り組みだと考えている。このように、少しずつではあるが歩みを着実に進めている。今回は、静岡県の島田工場からJR貨物 百済貨物ターミナル駅を経由した定期貨物鉄道輸送を開始する。今後も持続可能なサプライチェーンの構築に取り組んでいきたい」。
JR貨物の犬飼新社長は、次のように話した。「物流の2024年問題が、この4月からスタートする。これは、国全体で物流という観点から非常に大きな問題となっており、2023年10月には政府の方でも物流革新に向けた緊急パッケージが出された。その中では、鉄道へのモーダルシフトを今後10年間で倍増という言葉もあり、鉄道への期待や責任を感じているところだ。当社やJR貨物グループで一丸となって取り組んでいきたい」。
2024年には毎日40コンテナ、200tのトラック輸送を貨物鉄道輸送へシフトする計画。これにより、ネスレ日本の2024年貨物鉄道輸送量は、前年の約4倍を計画している。2025年以降は、中四国や東北に向けた中距離輸送も検討するとしている。