マイボトルの家庭内保有率7割で粉末タイプなど中身飲料の品揃えが拡大傾向に、味の素AGFは専用ドリンク開発、米国では売り場のコーナー化も
自分用の飲料容器である「マイボトル」が多くの家庭で普及しており、ボトルに入れる飲料の市場も広がる状況になっている。味の素AGFが1万人に行った調査によれば、マイボトルの家庭内保有本数は約1.1億本となり、家庭内保有率は70%になったという(2023年10月「マイボトル実態WEB調査」)。
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容器別の保有数は、ステンレスボトルが67%、クリアボトルが22%だった。さらに、同社が5万人を対象に行った調査では、マイボトル飲用の伸長率は2023年と2021年を比較して14%増になるほど大幅に伸長している。
マイボトルを使用する理由は、日常的にこまめに水分を摂取したい、好きな味を好きな温度で飲みたいというニーズに加え、プラスチックごみが減らせて環境に貢献できることや缶やペットボトル飲料よりお得という考えがあるためとみられる。
また、普及した背景には、マイボトル自体の進化もある。2000年には、ステンレスボトルで栓とパッキンが一体化して洗う手間を少なくした“シームレスせん”タイプが登場し、ヒット商品となった。若年層のユーザーが増えてきたこともあり、サイズやカラーなどの品揃えが広がっている。
さらに、製造小売業の無印良品がプラスチックごみ削減の一環として、2020年から店内に給水器を設置し、無料で給水サービスを始めたこともマイボトルが注目されるきっかけになった。
一方、マイボトルを使用するにあたっては課題もある。それは、面倒なことと、品質がぶれることなどだ。前述の調査では、マイボトルの中身は約69%が茶系飲料で、約85%がティーバッグなどを使用して自分で作っているという(「マイボトル実態WEB調査」)。
その際の不満点として、お湯の用意や水出しの時間待ちの手間、ティーバッグなどの抽出時間で味が薄くなったり苦みが強くなったりすることや、バラエティの少なさがあるという。
そこで、各社はマイボトルの中身として使いやすい商品の提案に注力している。伊藤園は、2023年3月にインスタント製品「さらさらとける お~いお茶」シリーズとして、抹茶入り緑茶、ほうじ茶を発売するとともに、「さらさらとける 健康ミネラルむぎ茶」を発売した。
同社は、「インスタント日本茶市場は増加傾向となっており、今後も拡大が続くことが想定される。そこで、急須でいれたような味わいと、お湯はもちろん冷水でもすぐに溶ける溶けやすさを追求した」とする。
“マイボトル専用”を明確に打ち出すのは味の素AGFだ。同社は2024年3月1日から「ブレンディ」マイボトルスティックシリーズ(6品種)を発売する。
マイボトル専用のスティックタイプのパウダードリンクで、マイボトルに水やお湯を注ぐだけで手軽に作れる点が特長だ。「やさしく香るピーチルイボスティー」「華やかに香るジャスミンティー」「すがすがしく香るグリーンティー」「爽やかに香るマスカットルイボスティー」「すっきり香る レモンV.C」「すっきり香るアセロラV.C」の6品(各6本入)を展開する。
インスタントコーヒーで培った粉を溶けやすくする技術を活用したという。マイボトルはさまざまな大きさがある中、1本で350ml~500mlに対応している点も特徴だ。
「ブレンディ」マイボトルスティックシリーズは、5秒で溶ける簡便性、選べるカラフルな液色のバラエティ性、プラスチック使用量約88%削減(350mlPETとマイボトルスティック1本の比較)できる環境性、懐にやさしい経済性の4つの価値を提案するという。同社は、「マイボトルスティックでドリンクライフを充実させ、エコ&スマートライフを応援していく」としている。
粉末飲料は、米国のスーパーマーケットや、より大規模なハイパーマーケットの売り場においてコーナー化が進んでいるとされる。それらの売り場では小容量から大容量まで幅広くラインアップされ、種類も豊富だ。日本では、マイボトルの保有率や使用率はさらに上昇することが予想され、今後は中身の飲料のバラエティが粉末飲料を中心に広がりそうだ。