ペットボトルの水平リサイクルが拡大、飲料各社で自治体・企業との協定や啓発活動進む、“ボトルtoボトル比率”は年々上昇し29%に(2022年度実績)
ペットボトルの日本におけるリサイクル率は86.9%と世界最高水準だ(2022年度)。だが、海洋プラスチックごみ問題が話題になった2018年、身近なプラスチックの象徴的な存在のペットボトルは、環境に悪いのではないかというイメージが一部で広がっていた。
業界団体である全国清涼飲料連合会(全清飲)が2018年11月に“プラスチック資源循環宣言”として、「2030年度までにPETボトルの100%有効利用を目指す」ことを記者会見で発表した。その後、各社がペットボトルの水平リサイクル(使用済み製品を原料にし、再び同じ種類の製品を製造するリサイクル)である「ボトルtoボトル」などの活動に取り組んだこともあり、国内ではペットボトルが実は環境に配慮した容器であることが少しずつ認知された。
各社がペットボトルのリサイクルに取り組む背景には、ペットボトルは生活者にとって使いやすいことに加え、リサイクル適性が高く、国内で再資源化の仕組みが整っているため、適切に回収すれば資源として循環利用が可能なことがある。水平リサイクルの推進で、新たな石油資源の使用削減と容器由来の廃棄物削減に貢献できることも大きい。
以前は、回収されたペットボトルの多くはフィルムやシート、繊維などにリサイクルされ、その後焼却されていた。また、焼却の際に出る熱をエネルギーに変えて電力などに活用するサーマルリサイクルもあるが、ペットボトルには戻らない。
そこで、資源をより有効活用するため、使用済みペットボトルから新しいペットボトルへ半永久的に再生できる「ボトルtoボトル」の水平リサイクルの活動が拡大している。「ボトルtoボトル」比率は、2018年に11.6%だったが、2022年には29.0%(前年より8.7ポイント増)まで高まった。
これは、大手各社の環境に配慮した活動と、2021年4月に全清飲が「2030年までにボトルtoボトル比率50%を目指す」ことを発表し、業界内外の理解が広がったためだ。また、2018年から中国の廃棄物輸入禁止が続き、使用済みペットボトルの輸出量が減少。リサイクルの国内循環へのシフトが進んだことも背景にある。
飲料大手各社の「ボトルtoボトル」比率(植物由来などサステナブル素材含む)を見てみると、コカ・コーラシステムが2022年に50%を達成し、サントリー食品が2023年に53%となった。また、アサヒ飲料は同年に18%、キリンビバレッジは28%まで年々高めている。
ただ、近年はリサイクル素材の価格が高騰している状況だ。環境に配慮する素材を使用すればするほどコストが上がっていることは業界の課題となっている。
各社は水平リサイクルを進めるにあたり、使用済みのペットボトルの回収を積極的に進めている。そのため、オフィスビルや商業施設、自社工場がある自治体などと連携する動きがここ数年は活発になっている。また、スポーツ大会など、人々の注目するイベントでも活動が広がっている。大塚製薬は今年3月、東京マラソンとしては初となる「ボトルtoボトル」に取り組み、給水所でランナーに提供した飲料のペットボトルを分別回収した。
他社とタッグを組むケースも増えている。2023年9月には、伊藤園とアサヒ飲料、キリンビバレッジが、愛知県小牧市でペットボトルの水平リサイクルの連携協定を結んだ。アサヒ飲料とキリンビバレッジは、茨城県の4市でつくる常総地方広域市町村圏事務組合とも同年7月に連携協定を締結している。
その他、全清飲は自販機横に設置されているリサイクルボックスを、異物削減効果の高い新タイプに進化させ、2022年秋から展開している。
生活者の意識を変える取り組みも進む。商品面では、日本コカ・コーラが、2021年から「コカ・コーラ」の主要容器で100%リサイクルPETを採用し、商品ラベルや広告物に「リサイクルしてね」ロゴを導入。サントリー食品は、2022年から「ボトルは資源!サステナブルボトルへ」の表記を国内ペットボトル商品で展開した。
両社は2023年10月20日の「リサイクルの日」に合わせ、渋谷でペットボトル水平リサイクルの啓発活動をそれぞれで行っている。日本コカ・コーラは、「リサイクルボックスの中をのぞいてみた展」を宮下公園で行い、サントリー食品は、稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんを起用し、渋谷センター街でフラッグ掲出などを行い、ペットボトルの分別回収を呼び掛けた。
清涼飲料業界では、CO2削減や水資源保護、物流問題など、取り組む課題は多い。その中で資源循環社会の実現に向けたペットボトル水平リサイクルの活動は、各社が積極的に取り組み、成果が出ている分野といえるだろう。