野菜飲料市場が復調傾向、背景に外出機会の増加で栄養バランスの不安やトマトジュース人気、新商品は“ザクザク食感”や“甘くない”を切り口にユーザー拡大ねらう
野菜飲料市場が久しぶりに好調だ。業界最大手のカゴメによれば、コロナ過が終わり、人々が活動を活発化した2023年8月以降、前年実績を上回るペースになったという。外出の機会が増える中で手軽に栄養が摂れる価値が見直された格好だ。特に人気が高いのは、従来の健康価値に加え、美容ニーズからも選ばれているトマトジュースだという。大手各社は、市場活性化に向けて新商品を投入しており、甘くない野菜飲料や、ザクザク食感が楽しめるスムージーなどを提案し、これまで野菜飲料を飲まなかった層へのアプローチを強化している。
カゴメによれば、2023年の野菜飲料市場は前年比1%減の1708億円となった。ここ数年の野菜飲料市場は、乳酸菌飲料などで機能性をアピールする商品が大幅に増えたことや、コロナ禍で在宅時間が長くなり、人々が家庭の食事で野菜を十分摂っていると考えたことから飲む理由が薄れ、減少が続いていたという。
だが、昨年8月から金額ベースで前年実績を上回る傾向になっている。外での活動が増えるにつれて食生活が乱れがちになった人々が、手軽に栄養の摂れる野菜飲料に手を伸ばしているようだ。また、いろいろなカテゴリーが値上げしているため、価格と価値のバランスにより野菜飲料が選ばれることも増えているという。
さらに、トマトジュースが美容ニーズの高まりから人気になったことも追い風となっている。2024年もその勢いは継続しており、野菜飲料市場は数量でもプラスで着地する可能性があるという。
ただ、一方でユーザー数は以前ほど戻っていないのはないかという声も業界内からは聞こえる。ユーザー層が高齢化しており、新規ユーザーを十分に取り込めていないためだという。今後の市場成長に向けては、日本人の野菜摂取量が目標(1日あたり350g)に大きく届いていないことを訴求して認知を広めることや野菜が持つ栄養機能価値、また、ノンユーザーが関心を寄せるような新しい価値を持つ商品発信していくことが大切になる。
カゴメは、2024年3月から「にんじんジュース 高β-カロテン」(200ml紙容器/720mlペットボトル)を投入した。トマトジュースに続いて、にんじんという単一素材の商品ラインアップを強化するねらい。「野菜生活100」では、スッキリとして甘くない糖質30%オフの「レモンサラダ」(200ml紙容器)を投入し、これまでの野菜飲料にはなかった肉料理時の食事にも合う訴求を行うなど、飲用シーンの拡大を図っている。
伊藤園は、「1日分の野菜」ブランドを強化しており、350g相当の5つの栄養素が摂れる設計であることを訴求している。3月に発売した新商品の「1日分の野菜 mealup ザクザクスムージー」(200mlキャップ付き紙容器)は、新容器の採用により紙容器では日本初となる固形物の入った野菜100%のスムージー。独自原料の“にんじんクラッシュ”を使用することで、野菜を食べているような食感が楽しめるという。
キッコーマン食品は、リコピンは摂取したいがトマトジュースの味が苦手という人たちに向けて、3月から「デルモンテ リコピンリッチフルーティー」(200ml/800mlペットボトル)を投入した。トマトジュースにりんごと桃、レモンの果汁を加え、フルーティーな味わいに仕上げたトマト飲料となっている。
各社は新商品で野菜飲料を飲まない人が指摘する“味が苦手”、“甘い”、“野菜を摂った感じがしない”などの課題を解決することで、野菜飲料ユーザーを増やすことに取り組んでいる。