ライバル企業が持続可能な社会に向け協働、コカ・コーラとサントリー「ボトルtoボトル」水平リサイクルの啓発をサッカースタジアムで実施、ペットボトルは“外でも分別”を呼びかけ

埼玉スタジアム2002で行われた啓発イベント「ボトループ ファクトリー」
埼玉スタジアム2002で行われた啓発イベント「ボトループ ファクトリー」

日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナルは、ペットボトルを分別して水平リサイクルする大切さを広く知ってもらう啓発活動で協業し、サッカースタジアムでそれぞれイベントを行った。これは、「ボトルtoボトル」水平リサイクル(※)の認知拡大に向けて取り組んだもの。「外でも分別」を共通テーマに、日本コカ・コーラは浦和レッズと、サントリー食品は鹿島アントラーズと協力し、ペットボトルをボトル、キャップ、ラベルの3つに分別する体験機会を作った。
※水平リサイクル=使用済み製品を原料として用いて同一種類の製品につくりかえるリサイクルのこと。

【コカ・コーラは「ボトルtoボトル」の仕組みがわかるゲーム“ボトループ ファクトリー”を展開】

コカ・コーラは6月30日、浦和レッズのホームゲームが行われた埼玉スタジアム2002(埼玉県さいたま市)で、「ボトルtoボトル」が楽しく学べるイベントを実施した。これは「ボトループ ファクトリー」と名付けられ、飲み終わったペットボトルを持参し、ボトル、キャップ、ラベルに分別するとゲームに参加できるもの。

このゲームは、大画面にアニメーションが映し出され、排出したペットボトルを新しいペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」を理解できる内容になっている。体験者には100%リサイクルペットボトル容器の「コカ・コーラ」500mlがプレゼントされることもあり、幅広い世代がチャレンジした。

「ボトループ ファクトリー」のゲーム画面
「ボトループ ファクトリー」のゲーム画面

また、イベントブース内には、ペットボトルが生まれ変わるまでの様子を紹介するコーナーがあり、実際にフレーク状になっているものや、ふくらませる前のプリフォーム成形などの展示を行い、来場者は実際に手に触れて感触を確かめていた。

イベント会場で展示された「ペットボトルが生まれ変わるまで」
イベント会場で展示された「ペットボトルが生まれ変わるまで」

埼玉スタジアム2002では、埼玉県や浦和レッズなどが連携し、来場者から排出されたペットボトルなどのリサイクルが可能なものの分別回収の有効な手法の検証や再製品化の検討を行い、「サーキュラーエコノミーの見える化」を目指す取り組みを進めているという。

中でも大きな成果となっているのは、ペットボトル3分別率(ボトル、ラベル、キャップの分別)の上昇だ。2023年4月時点では、(キャップとラベルを外し)ボトルだけの状態で排出された量は3%だったが、2024年4月時点では68%まで高まった。この背景には、スタジアム内のコンコースに3分別用回収ボックスを設置したことや選手から呼びかけ、同スタジアムでサステナブルDAYなどを実施して取り組みを紹介してきたことがあるという。埼玉県の職員は、「この1年でスタジアムのペットボトルの3分別は大きく伸びた。屋外においても、飲み終わったペットボトルを分別する体験が広がった」としている。

スタジアム内のコンコースに設置された「サーキュラーステーション」
スタジアム内のコンコースに設置された「サーキュラーステーション」

【サントリーは鹿島アントラーズのホームで“ペットボトルポスト”設置、分別の大切さ訴求】

サントリー食品インターナショナルは7月6日、鹿島アントラーズのホームゲームが行われた県立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)で、「ボトルtoボトル」水平リサイクル推進に向けた啓発イベントを行った。

会場では、鹿嶋市の栗林裕副市長、鹿島アントラーズの小泉文明社長のほか、小学生(アントラーズアカデミースクール生)が参加し、同社オリジナルのペットボトルポストへの投函式を行った。今回のイベントは、飲み終わったペットボトルを持参し、“ペットボトルポスト”に分別して投函した人に、100%リサイクルペットボトル使用の「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」600mlを1本プレゼントするもの。多くの人が飲み残しをなくし、ボトル、キャップ、ラベルに分別し、ペットボトルポストに入れる体験をした。

カシマサッカースタジアムに設置された“ペットボトルポスト”
カシマサッカースタジアムに設置された“ペットボトルポスト”

鹿島アントラーズとサントリー食品は2023年9月から、同スタジアム内で集められた使用済みペットボトルを回収して新たなペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」水平リサイクルの取り組みを始めている。現在まで、約8tの使用済みペットボトルをサポーターの人々から回収し、約40万本(1本=20g換算)分のサントリー製品の100%リサイクルペットボトルとして生まれ変わっているという。

サントリー食品インターナショナルでサステナビリティを担当する吉田直保さんは、「“ペットボトルは、きれいに分別すれば新しいぺットボトルに生まれ変わり、次の人に届く”、“街中にあるリサイクルボックスはゴミ箱ではなく、次の人に届く入り口、すなわちポストみたいなものである”というメッセージを込めて、家庭の外でもきれいな分別をお願いしたく、今回のイベントを実施した」と話した。

鹿島アントラーズの小泉社長は、次のように語る。「今回のイベントは、サントリー食品と協働し、“外でも分別”をテーマにサッカースタジアムで分別啓発を行っている。ペットボトルは、ポイ捨てされると問題だがきれいに分別して再生すれば環境に良い。日本は欧米諸国と比較して(リサイクル率や回収率の高さで)優秀なので日本の取り組みをもっと先進的に作っていき、数字も出していけば、グローバルで、より環境に優しい仕組みができるのではないか」。

「スタジアムでは昨年9月からボトルtoボトルの取り組みを行っているが、これだけ多くのスタジアムに遊びに来てくれている方々に、しっかりと行動変容を起こしてもらい、習慣化してもらえたら嬉しい。暑い日が続くが、サッカーなどスポーツをする環境で気候(変動)についてもっと意識していかないと、そもそもスポーツ自体が非常に危ない行為になってしまう。われわれだけでなく、Jリーグとしても気候問題にアプローチしていく」。

「ボトルtoボトル」の記者説明会(左から鹿嶋市の栗林副市長、サントリー食品の吉田さん、鹿島アントラーズの小泉社長)
「ボトルtoボトル」の記者説明会(左から鹿嶋市の栗林副市長、サントリー食品の吉田さん、鹿島アントラーズの小泉社長)

【清涼飲料のトップ2企業が非競争領域でタッグを組み広く発信】

コカ・コーラとサントリーが協業して「ボトルtoボトル」の啓発活動に取り組むのは昨年に続き2回目となる。2023年は広島サミット開催に合わせて、啓発広告の展開を協業で行っていた。

今回、コカ・コーラとサントリーが協業してサッカースタジアムで啓発活動に取り組むことについて小泉社長は、「(ボトルtoボトルは)飲料業界の方々が、会社の垣根を超えて本気で向かっている社会の次の道なのだと感じた。私たちが本当に社会を変えていかなくてはならないと、改めて強く思った」と話す。

イベントには栗林副市長や小泉社長、アントラーズアカデミースクール生も参加
イベントには栗林副市長や小泉社長、アントラーズアカデミースクール生も参加

両社は、シェアでトップ争いをするなど、普段はライバル関係にあるので協業自体が異例。そのため多くの注目を集めることから、協業をきっかけにペットボトルの水平リサイクルを知る人も多いという。両社は、新たな石油由来原料の使用量削減とCO2排出量の削減ができる「ボトルtoボトル」水平リサイクルの啓発活動を非競争領域と位置づけ、今後もより広く情報発信していく考えだ。

「ボトルtoボトル」水平リサイクル啓発メッセージ
「ボトルtoボトル」水平リサイクル啓発メッセージ