日本コカ・コーラが持続可能な水資源保全活動を加速、「工場」「製品」に加え「原材料」の育成まで範囲拡大、静岡県御前崎市・掛川市と連携協定
日本コカ・コーラは7月29日、持続可能な水資源保全をさらに推進するため、静岡県の御前崎市と掛川市との連携協定を締結し、「原材料」に着目した水資源保全活動に取り組み、農業サプライチェーン周辺流域の健全性向上を目指すと発表した。自社製品に茶葉の使用実績のある両市と3か年の地域での活動計画をそれぞれ策定し、2025年春から開始する。
コカ・コーラシステムは、これまで「工場」や「製品」に使用する水の還元に取り組んできた。「工場」では、100以上の水に関する独自の品質管理システム「KORE」と、地元自治体条例の水質基準を順守し徹底的に排水を管理、設備の運転状況や水質分析機器の測定結果を連続モニタリングしている。「製品」では、涵養活動を推進しており、製品に使用された水の量に対してどれだけの水を自然に還元したかを示す水源涵養率は、300%以上となった(2022年時点)。全国21カ所の全ボトリング工場の19周辺流域全てで水資源保全活動に取り組み、水源涵養率は2024年末までに全工場で100%以上を達成する見込みだ。
そして、今回新たに「原材料」の育成にも着目し、日本のコカ・コーラとして初めて農業サプライチェーン周辺流域まで水資源活動の範囲を広げることを決めた。日本コカ・コーラ広報・渉外&サスティナビリティー推進本部の田中美代子副社長は、次のように話す。「水資源保全の活動において、工場で使用する水や製品の中身に使用する水からさらに幅を広げて、原材料の栽培などに使用される水にも責任を持つために、新たな取り組みをスタートする」。
同社は、原材料の生育などに多量の水を使用することに着目。そして、グローバルのコカ・コーラが「優先原材料」と定めている12の原材料(アーモンド、砂糖〈サトウキビ・テンサイ〉リンゴ、コーヒー、オレンジ、大豆など)の中から、日本での調達占有量が多い茶葉の産地と連携し、農業サプライチェーン周辺流域の水資源保全に取り組むことにした。御前崎市と掛川市は、茶農家を含めたサプライチェーンが存在し、かつ、同社が調達する茶葉の産地の中でも使用実績において重要であることから今回の連携に至ったという。日本コカ・コーラは、両市と7月23日にそれぞれ連携協定を行っている。田中副社長は、「連携の提携にあたっては、将来的に3か年の計画を立てて、その中で水質、あるいは水量を担保することを目的に、両市の流域の健全性の向上に向けてタッグを組んで取り組んでいく」と話した。
具体的な活動について、御前崎市では、市内の湧き水拠点16地点のうち14拠点で水が減少または枯渇している状況という。そうした中で、原材料の生育に使用する水量を担保するために地下水の調査・保全活動を行う考え。その他にも、松くい虫被害に対応するため植樹による森林保全や、コンポストを使用した資源循環にも取り組むという。御前崎市の下村勝市長は、「このたびの日本コカ・コーラ社との連携協定による取り組みを進めることで、地下水保全や森林保全の活動がさらに充実し、地域の水資源の保全に貢献できることを期待している」と話した。
掛川市では、「オーガニックビレッジ」という生産から消費まで一貫した地域ぐるみの取り組みで、有機農業を推進している。しかし、有機栽培への転換による品質や収量の低下の恐れがあり、新たに有機栽培に取り組む際のハードルとなっていたという。そこで、日本コカ・コーラと品質・収量の向上に向けた研究などに取り組むことで、生物多様性の保全や水循環の健全性の向上を図る。掛川市の道田佳浩産業経済部長は、「この連携により、環境にやさしい農業の拡大が促進し、環境への負荷を低減していくことで、生物多様性の保全や水循環の健全性の向上につながることを期待している」と語った。
なお、米国本社のザ コカ・コーラカンパニーは、2021年に「2030年水資源保全戦略」を発表。世界各国・地域で工場の運営、流域、地域社会の3つの柱に基づく活動を進めている。また、2023年3月には、重点的に取り組む主な領域に関連したグローバル目標の詳細について以下のように公表している。
〈1〉2030年までに、水資源の持続可能性にリスクがあると特定した世界175カ所の工場において、100%リジェネラティブ※な水に使用に取り組みます。
※リジェネラティブ=再生
〈2〉2030年までに、当社の事業と農業サプライチェーンにとって重要だと特定した60カ所の流域の健全性向上に、パートナーと取り組みます。
〈3〉2021年から2030年にかけて累計で2兆リットルの水を世界中の自然と地域社会に還元します。