アサヒ飲料、国内初のアプリ連動型ウォーターサーバー実証実験開始 働くZ世代に新しい給水体験を提案

「WATER BASE」を紹介する鈴木特任部長と三浦部長
「WATER BASE」を紹介する鈴木特任部長と三浦部長

アサヒ飲料は12月2日から、国内初となるアプリ連動型ウォーターマネジメントサーバー「WATER BASE」の実証実験を開始する。このサービスは、専用アプリやQRコード付きボトルを活用し、利用者が水分摂取量を管理できる新しい給水体験を提供するものだ。ペットボトル飲料を主力としてきた同社がウォーターサーバー市場に参入することで、消費者の多様化するニーズに応えるとともに、健康志向やサステナビリティの推進を目指す。

アサヒ飲料の未来創造本部CSV戦略部の三浦正博部長は、「我々のCSV戦略は、健康、環境、地域共創といった課題を事業を通じて解決し、新しい価値を生み出すことが根幹です」と述べる。ウォーターサーバー事業は、同社が掲げる「既存領域のバリューアップ」と「新規領域のインキュベーション」を融合した挑戦の一環だという。

水市場全体は近年急速に拡大している。アサヒ飲料が提供したデータによると、2018年から2023年にかけてミネラルウォーター市場は144%、ウォーターサーバー市場は147%に成長しており、特にウォーターサーバーが際立った伸びを見せている。市場拡大を牽引するのは、健康志向が高く環境への配慮を意識するZ世代だ。飲料全体の成長率と比較すると、20代のミネラルウォーター消費は約8.8%増加しており、他の世代を大きく上回る結果となっている。

ウォーターサーバーは日本国内に約500万台設置されており、清涼飲料の自動販売機を上回る普及率を誇る。しかし、今回アサヒ飲料が展開する「WATER BASE」の機材およびサービスは、まだ市場で手薄な領域を狙ったものだという。CSV戦略部Sustainable Drinksの鈴木学推進特任部長は、「個人がより主体的に活用できるウォーターサーバーはほとんど存在しません。生活スタイルに合わせて使える設計にすることで、後発ながらも十分にチャンスがあると考えています」と述べた。

また、鈴木氏は、ウォーターサーバー市場の種類についても次のように説明する。「ウォーターサーバーには、天然水などをタンクに詰めて展開する宅配水型と、水道直結型があります。市場として大きいのは宅配水型ですが、成長が鈍化しています。一方、水道直結型の需要が高まっています」。水道直結型は、天然水タイプと比較してタンクの交換や水の発注といった手間がなく、オペレーションの効率性に優れている点が特徴だ。鈴木氏は、「今後の市場成長も水道直結型が高いと見られており、現在求められているのはこのタイプだと考えています」と述べ、「WATER BASE」が市場のトレンドに即したサービスであることを強調した。

「WATER BASE」は、利用者が会員登録を通じて安全に使用できる設計が特徴だ。スマートフォン画面かマイボトルに取り付けたQRコードでロックを解除し、タッチパネルで操作を行う仕組みを採用している。水の温度は冷水、常温水、白湯、温水から選択可能で、給水量は専用アプリで管理できる。利用者は自身の水分摂取量を日別で確認することで、健康的な習慣を身につけやすくなるという。

冷水、常温水、白湯、温水の選択が可能
冷水、常温水、白湯、温水の選択が可能
給水量を記録する専用アプリ
給水量を記録する専用アプリ

実証実験は2024年12月から3か月間、埼玉県大宮のレンタルオフィス(エキスパートオフィス大宮)で実施される。対象は働くZ世代とされ、利用者からのフィードバックをもとに改良を重ねていく計画だ。その後、大学や公共交通機関、駅など、さらに多様な場所での展開が予定されている。

アサヒ飲料は「WATER BASE」の2026年事業開始を目指し、初年度には100台、2030年には3000台の設置を計画している。2030年の登録者数は12万人、売上は21億6000万円を見込んでおり、これを新たな収益基盤とする考えだ。

三浦部長は、「既存領域と新規領域を両輪として進めることで、飲料業界が直面する社会課題に向き合いながら持続可能な価値を生み出していきます」と述べた。アサヒ飲料の挑戦は、飲料業界の未来を変える可能性を秘めている。Z世代の価値観に応えるサービスとして、「WATER BASE」がどのように市場を切り拓くのか注目される。

「WATER BASE」専用のマイボトル、他のボトルでも給水できる
「WATER BASE」専用のマイボトル、他のボトルでも給水できる