【新年インタビュー】ポッカサッポロフード&ビバレッジ 時松浩代表取締役社長

ポッカサッポロフード&ビバレッジ 時松浩社長

〈未来の食のあたりまえを創造〉

ポッカサッポロフード&ビバレッジは、経営理念で「人と社会に向き合い、未来の食のあたりまえを創造する」を掲げる。同社は、これまで新しい価値を提供する商品を生み出し続けてきた。これからも人と社会と向き合い、新しい価値をいち早く形にして届け続けることで、未来の食のあたりまえを創造していく考え。環境の変化に対応し、構造改革を進めながら、市場シェアトップのレモン事業中心に活動を強化している。

ーー昨年を振り返って

サッポロホールディングスが2022年末に策定した中期経営計画の食品飲料事業には2つのポイントがある。国内の構造改革を行うことと、強みのある分野に集中することだ。そして、サッポログループ全体として、酒類を軸に取り組むという方針があるので、そのつながりを強めていく。

これら方針を踏襲し、ポッカサッポロとしても2024年までに構造改革、特に財務体質の改善に目処をつけることに取り組んできた。2023年1月の社長就任時点では、財務状況も非常に厳しい状況だった。そこで構造改革を行う形でキャッシュ・アロケーションを行ったことで、財務体質はおおむね食品メーカーとしてスタンダードな状況になったと思っている。

具体的には、エンジニアリング会社などを株式譲渡したほか、植物性ヨーグルト事業についても更なる事業発展を目指し、業務提携をしているヤクルト本社へ2024年10月に事業譲渡を実行した。

原材料や物流面、人件費の上昇は今後も見込まれるため、株式資本市場から要請に応える水準になるまでは構造改革を続ける。一方、創業の強みがあるレモンは戦略的に投資していく。

〈レモン事業を強化し新需要創出へ〉

ーー各事業について

レモン事業については、お客様のウェルビーイングを提供することが中心になる。「ポッカレモン100」は、長年の研究成果により血圧に効果があることがわかり、2024年9月から“高めの血圧(収縮期血圧)を下げる”と表示した機能性表示食品へ刷新した。また、「キレートレモン」は、堅調に推移し、特に派生商品の「キレートレモン MUKUMI」の評価が高い。

しかしながら、持続的成長には、一部原材料の供給不足などの課題解消にも取り組む必要がある。

そして、単純に最終商品だけということではない。自社のレモン栽培地を持ちながら、これまで瀬戸内海の広島エリアを中心に国産レモンの生産振興に取り組んでいたが、2024年にレモンの産地形成へ静岡県磐田市とJA遠州中央の3者で連携協定した。

お茶農家を中心とした農業の持続性に懸念がある中、同市でお茶畑からレモンへの転作を図り、2030年には磐田市全体で100ヘクタールを目指している。当社の現在の国産レモンの取り扱い規模は400ー500トンなので、転作が進むと磐田エリアを含め当社が取り扱う国産レモン量は、1000~1500トンになる見込みで、それに応じた加工体制を今後検討していきたい。周辺自治体ともコミュニケーションしながら、一大産地を形成して農業従事者の持続的な成長に貢献していく考えだ。

飲料事業は、さまざまなコストアップの課題があり、数年にわたって自販機を中心に事業効率化を図っている。特に缶コーヒーは、原料のコーヒー豆価格高騰など、市場環境としても厳しい状況と認識している。

SKUの最適化やアウトドアロケーションを中心に不採算の効率化を図り、採算性や効率性の向上ということにベースにおいて展開している。

手売りを中心に展開する「北海道コーン茶」や「北海道富良野ホップ炭酸水」などは、サッポログループ全体の特色にもつながる商品であり、堅調に推移している。これら商品のように、正面から切り込むいうより、カテゴリーを絞り込んでニッチな形で展開している。

スープ事業については 原料高の影響が大きく、地球温暖化の影響で、これまでより寒さを体感できる期間が短縮され、温かいスープ需要が鈍る傾向にあることも課題だ。一方、スープ市場で一定の存在感がある「じっくりコトコト」ブランドについては、その価値を改めて提案していきたい。

昨年は、一食完結型というコンセプトで、この秋に「じっくりコトコト」ブランドから「超盛」シリーズを展開した。単にスープというカテゴリーにとどまらない、今後の方向性を担う商品だと考えている。

ーーレモン事業の方向性は

レモンの用途を広げることや価値を向上することが重要だ。当社はレモン果汁調味料で約8割のシェアがあるので、しっかりビジネスや消費の機会を創出していく。特に生活者ニーズというところは、我々の方から作り出せると考えている。

ーー生活者ニーズは多様化し、細分化しています

レモンは、お客様からのニーズに応えるというよりも、創出していくことが我々の責任だと考えている。そういう意味では単にレモンを搾った調味料ということではなく、機能性表示食品の「キレートレモンMUKUMI」や「ポッカレモン100」など、レモンから派生する機能を突きつめて、新たなニーズや価値を作っていくことが重要だと考えている。

ーー2025年の取り組みは

構造改革を継続しながら、特にレモン事業へ注力していく。どんどん新商品を出すということではなく、レモンを軸にしっかり集中すべき分野に集中して成長させていきたい。飲料は「北海道コーン茶」や「北海道富良野ホップ炭酸水」、スープは「じっくりコトコト」ブランドを引き続き育成していく。

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=本体価格12,000円+税6ヵ月=本体価格23,000円+税1年=本体価格44,000円+税