清涼飲料のパッケージ刷新が加速、Z世代・環境配慮で若年層取り込みへ
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最近、清涼飲料のパッケージが大きく変わり始めている。これまでは、同じカテゴリー内でパッケージデザインが似る傾向にあった。だが、持ち運びたくなるデザインや環境に配慮したボトルの導入が進み、各社はブランド価値の向上を図っている。
これは、Z世代を中心に幅広いライトユーザーを取り込む狙いがある。特に茶系飲料や水は生活者の買い回りが多いカテゴリーで、ブランドの流出入が頻繁にあるため、新デザインは一度手に取るきっかけになりやすく、今後も広がりそうだ。
〈清涼飲料のデザイン戦略の変化〉
飲料のパッケージは、茶系飲料は緑色、水は青色など、どの会社の商品も一瞬見ただけで中身が想起できるものが多い。これは競合品との違いを訴求するよりも、各社が自動販売機で自社商品を並べる中で利用者が見分けやすくすることが要因のひとつだった。
だが、最近では、新たなデザインを導入する取り組みが増えてきた。SNS映えや若年層の購買行動に「デザイン」が影響を与えていることのほか、サステナビリティ意識の高まりも背景にある。
実際にラベルレス飲料の販売が拡大しており、アサヒ飲料は2024年のラベルレス飲料の販売数量は2023年比で112%、2019年比で約9.7倍の970万ケースまで拡大している。コスト増により価格改定が行われる中、新デザインの導入は、ブランド価値を高める戦略の一環だ。
〈清涼飲料各社の取り組み〉
アサヒ飲料は、2月4日から「アサヒ 十六茶」の中味とパッケージをリニューアルし、コンビニエンスストアでは「アサヒ 十六茶 アートデザイン」(660mlPET)を発売している。パッケージはイラストレーターの武政諒さんのデザインを施し、「毎日をかざる」をテーマに、持ち歩く際や部屋においた時に心が明るくなるような3種類の風景デザインを展開する。
同社は、若年層を中心にデザイン性の高いパッケージへの関心が近年高まっていることに注目し、同社としては初めてこのような狙いのアートボトルデザインを発売した。「お客さまとの接点を増やすとともに飲用シーンの拡大を図る」ことを目指すとしている。
サントリー食品インターナショナルは、3月4日からサントリー緑茶「伊右衛門」(600mlPET他)の味わい・パッケージを大刷新する。緑茶が本来持つ「一息つける心地よさ」という価値を提供する狙い。
パッケージは“京都の静やかさ”をイメージし、心に余白をもたらす伊右衛門史上初の白を基調としたデザインだ。さらに、初代伊右衛門の竹筒をモチーフとした新しいシンボルマーク「京竹(みやこだけ)」を開発し、ラベル上部に配置。また、新たに茶碗シズルを入れて丁寧に淹れられた緑茶のおいしさを直感的に表現している。
伊藤園は、「お~いお茶」から、大切な人へエールを送る想いを込めた春限定の「お~いお茶」桜エールパッケージ(600mlPET他)を、1月20日から季節限定で販売している。「お~いお茶」桜パッケージは2015年から毎年展開し、春の風情が感じられることから支持されている。
今年展開する桜パッケージは、昨年に引き続きイラストレーターの“げみ”さんによるデザインを採用。春の訪れとともに大切な人へエールを送り、元気と勇気を与える演出をすることで、春の温かみを伝えている。若年層を含め幅広い世代に手に取ってもらう狙いだ。
2024年のパッケージ変更で印象深かったのは、同年4月に7年ぶりの大刷新をした「綾鷹」(650mlPET他、コカ・コーラシステム)だ。「波紋のモチーフ」を取り入れ、グリーンでリフレッシュ感、ネイビーで本格感を表現。このリニューアルが若年層を中心に支持され、2024年の茶系飲料販売数量は前年比109%となり、その成長をけん引したのが「綾鷹」だった。
キリンビバレッジの「生茶」(525mlPET他)は、2024年4月のリニューアルで「Life Tea」をコンセプトに、飲む瞬間だけでなく、持ち運ぶ時や置いている時も楽しめるデザインを採用した。これが奏功し、2024年の販売実績は前年比112%と大きく伸びた。2025年4月にはさらに進化する予定という。
清涼飲料のパッケージデザインは、 飲料が人々の生活に浸透する中で飲むだけでなく、持つこと自体が楽しさや心地よさにつながる価値を提供する方向へと進化している。
この流れは今後も各社のブランド戦略の差別化要素として定着しそうだ。一方で、環境負荷低減を意識したデザインの取り組みも、さらに加速するとみられる。