紅茶飲料で無糖シフト加速 、大手各社が相次いで新商品投入

紅茶飲料市場に変化が起きている。2025年春、大手飲料メーカーが次々と新商品やリニューアル商品を発表し、特に無糖紅茶に注力する動きが目立つ。
各社の戦略はさまざまで、キリンビバレッジは「アイスティー文化の定着」を狙い、コカ・コーラシステムは「香りを楽しむフレーバー系無糖紅茶」を提案。サントリー食品インターナショナルは「2種の紅茶に爽やかな香りの烏龍茶をブレンドした新しい味わい」、アサヒ飲料は「国産紅茶の本格感」を打ち出している。
無糖紅茶カテゴリーは過去3年間で年間平均7%の成長を遂げている(出典:インテージSRI、金額ベース)。今年は、各社が新商品・リニューアル品を次々と投入しており、さらに伸長する可能性がある。
好調の背景には、消費者の嗜好の変化がある。ブラックコーヒーが定着したように、紅茶でも「甘くない選択肢」を求める人が増えている。さらに、フレーバーティーの人気が高まっており、香りや茶葉の品質にこだわった無糖紅茶飲料が支持されるようになった。
そして、飲料各社が無糖紅茶に注力する背景には、紅茶飲料がまだ拡大の余地を残していることがある。2024年度のデータでは、紅茶飲料の箱数シェアは4.8%にとどまり、コーヒーの17.0%、緑茶の14.8%に比べるとまだ小さいため、伸ばせる余地がある。緑茶や烏龍茶といった無糖茶カテゴリーは成熟しつつあり、人々の嗜好が多様化する中で紅茶飲料市場にとっては成長のチャンスを迎えている。
2024年の無糖茶全体の販売数量が前年比101%(食品マーケティング研究所調べ)と増えていることも、各社が期待を寄せる要因だ。
そして、飲料全体でも無糖の人気は年々高まっている。2023年の国内市場は無糖飲料の比率が53%に達し、2000年時点の31%から大きく伸びている(伊藤園調べ)。健康志向の高まりも無糖紅茶の市場拡大を後押ししている。
では、各社は無糖紅茶飲料の市場活性化に向けてどんな取り組みをするのか。紅茶市場では、カフェ文化を背景に“アイスティー”として、無糖紅茶の需要が伸びているという。カフェメニューの多様化やアレンジティーの流行も、さらに勢いを増している。
そこで、各社は今年、無糖紅茶を単なる「お茶」ではなく、ライフスタイルに寄り添う飲料として進化させようとしている。

キリンビバレッジは、「午後の紅茶 おいしい無糖」を3月18日からリニューアルする。パッケージデザインを刷新し、「無糖アイスティー」というカテゴリーをより強調した。ダージリン茶葉を使用し、香り高くすっきりした後味に仕上げたという。タンブラーを活用したキャンペーンを展開し、アイスティー文化を広める狙いだ。

コカ・コーラシステムは、「紅茶花伝 無糖 アールグレイアイスティー」を10日に発売。手摘みセイロン茶葉100%を使用し、ベルガモットの香りを生かしたフレーバーティーに仕上げた。650mlの大容量設計も特長で、生活のさまざまなシーンで飲んでもらう考え。パッケージにはベルガモットの花の紫を採用し、「アールグレイといえば紫」の認識を広めて認知拡大を図る。

サントリー食品は、「クラフトボス」ブランドで新シリーズ「世界のTEA」を展開。「クラフトボス ブルー セイロンティー無糖」(4月15日発売)は、セイロンティーをベースに発酵度の異なる紅茶と「青茶」とも呼ばれる烏龍茶をブレンド。ブレンドでは「サントリー烏龍茶」の知見を活かした。「香り高いのに後ギレよく飲める、新しい味わい」を目指し、カフェユーザーも取り込んでいく考えだ。
アサヒ飲料の「和の紅茶 無糖アイスティー」(3月4日発売)は、国産紅茶葉100%を使用し、本格的な紅茶の深い味わいと、尖りなくまろやかな飲みやすさを目指した。同社によれば、ユーザーからは「国産ということに親近感を覚える」「品質が良いと感じる」といった声が寄せられたという。

また、2024年に発売35周年を迎えた大塚食品の「シンビーノ ジャワティストレート」も、ロングセラーとして無糖紅茶飲料市場を支えている。今年は環境配慮に配慮した取り組みを進め、2月から「レッド」と「ホワイト」の270ml製品で100%リサイクルペットボトルを順次導入し、夏までに500ml製品でもボトルの切り替えを行う方針だ。
今春の売り場で、無糖紅茶飲料の品揃えは増えることが予想される。だが、その後は消費者の選択が無糖紅茶カテゴリーの未来を左右する。これまで無糖飲料といえば水、緑茶、コーヒーなどが主流だったが、そこに紅茶が多くの人の目に見える形で加わる。無糖紅茶が紅茶飲料市場で主役になれるかは未知数だが、無糖飲料の選択肢の広がりを歓迎する声は多そうだ。