東海・北陸・近畿の食品流通業界 流通再編の勢い止まらず、ドラッグ・Dsの流入活発
◎sM 新業態や細かいサービスで対抗
東海・北陸、近畿エリアの食品流通業界は引き続き、業態間の壁を越えディスカウント(DS)やドラッグストア(DgS)の流入が進んでいる。ユニー・ファミリーマートホールディングスは6月、DS大手のドンキホーテホールディングスとの業務提携の検討を発表した。また、関西のDgs大手のキリン堂ホールディングス(大阪市淀川区)も、冷凍食品や日配品の売り場を拡大する方針を打ち出した。そんな中、スーパーマーケット(SM)各社も負けてはいない。大阪の万代は好調に業績を伸ばし、売上高3000億円の大台を突破。快進撃を続ける阪急オアシスも、初のネイバーフッド型ショッピングセンター(NSC)「オアシスタウン」を出店。このほかの地場SMも様々な取り組みを行っている。本紙は、SM各社の入手可能なデータ(アンケート回答、公表数値、調査資料=主に2016年度実績)をもとに、西日本の売上高と店舗数をランキング形式でまとめた。
キーコーヒーは、9日に秋冬商品発表会を本社で開き、「定番商品の魅力向上で〝いつもの〟をより贅沢に」をテーマに開発した商品(9月1日発売)を紹介した。目玉は、同社が約7割のシェアを持つVP(真空包装)カテゴリーでフルリニューアルした「プレミアムステージ」だ。アラビカコーヒー100%を使用し、いつまでも飲み続けていたい味わいを実現した新ブランドとなっている。
アイテムは4品で「同スペシャルブレンド」のほか、濃度感と香味が向上した「同モカブレンド」と「同キリマンジェロブレンド」(各200g粉)、新商品は酸味を弱め濃度感を濃くした深い味わいの「ロイヤルビター」(180g粉)をラインアップ。マーケティング本部R&Dグループの鈴木勇治コンシューマープロダクツチームリーダーは「VPをもっとお客さまに近い存在にしたいと考え、新たに名前を付けた。当社が長年培ってきた安定した味わいが楽しめるブレンドであり自信がある」と話した。
発売20周年を迎えた簡易抽出タイプの「ドリップオン」は、パッケージリニューアルと香味改良、そして新商品投入を実施する。
「同スペシャルブレンド」(6P/10P)は、iTQi優秀味覚賞連続受賞をパッケージで訴求し、「同モカブレンド」(10P)はスペックを見直し香味を向上。新商品の「同ロイヤルテイスト」(同)は、VP新商品同様に酸味を抑えた心地よい苦みと深いコクが特徴だ。また、簡易アソートで売上トップの「同バラエティパック」(6種×2P)は、「ロイヤルテイスト」と、期間限定で「ブルーマイスター」の2品を採用する。「ドリップオン」は、累計で18億杯を超えるまで愛飲されてきた。同社は10月から12月にかけて、「コーヒーをいれたからすこし話そうよ♪キャンペーン」を実施するほか、商品では謝恩メッセージ入りパッケージを展開する。サンプリングも行い、開くと「♪コーヒーをいれたから」が流れる手紙を同封して口コミでの広がりも図る。
そのほか、テレビCM(一部地域)や交通広告、コンテンツサイトを活用したキャンペーンの告知を実施する。ほかの製品では、レギュラーコーヒーで、倒れにくく自立性の高いヘム付パッケージに変更し、発売から2年で売り上げが75%伸長した大容量袋タイプの「グランドテイスト」(330g粉、3種)、トアルコトラジャを使用した中容量の「ブルーマイスター」(180g粉、2種)、iTQi優秀味覚賞受賞の「カフェインレスコーヒー」(150g粉)で採用する。インスタントコーヒーでは、「グランドテイストダーク」(180g)を発売。コク深い味わいが特徴だ。
エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)グループ傘下の阪急オアシス(大阪府豊中市)は7月、激戦区である兵庫県伊丹市に初のNSCである「オアシスタウン伊丹鴻池」をオープンした。核テナントとなる「阪急オアシス伊丹鴻池店」など計16店を運営する。千野和利会長兼社長は「(伊丹市は)当社の主要エリアである北摂と神戸をつなぐ重要な立地で、ドミナント戦略・物流の面でも欠かせない」と息巻く。「マーケットがシュリンクする中で、いかにブランド価値を高めるか」と常日頃危惧を表明している千野社長の勝負の一手だ。2020年に売上高1500億円、営業利益50億円を当面の目標に掲げており、年間3店を限度に売場面積1500㎡以上の大型店を出店していくという。
ライフコーポレーションも昨年6月、健康志向に特化した新業態「BIO‐RAL靭店」を大阪市西区にオープン。また、昨年3月からのクレジットカード発行に加え、8月からは自社型電子マネー「LaCuCa(ラクカ)」による決済サービスも全店で開始。「前期は過去にないぐらいチャレンジをした」(森下留寿常務管理統括本部長)と話すように、激変する業界に次々と新たな一手を投じている。
東海地区への出店に積極的なオークワ(和歌山市)は、2月から岐阜県の惣菜工場の稼動を開始。東海圏で好まれる「甘濃い味」の研究を重ねた商品を供給することで、東海のドミナント強化を狙っている。
◎顧客獲得へ新たなサービス 地場sM独自の活路模索
新業態などの大きな変化だけではない。
ライフ(兵庫県伊丹市)と関西スーパーマーケットは、この夏から店舗に宅配便ロッカーを設置するサービスを開始した。利便性の向上を図るとともに、新規顧客の取り込みも視野に入れる。また、和歌山県が基盤の松源は、自宅にパソコンがない高齢者に向けて、ネットスーパーのサービスをテレビで受けられるテレビスーパー事業を一部店舗で導入した。このような細やかなサービスで、地場SM独自の活路を模索している。
一方で、DgSの食品業界への進行の勢いは止まらない。コスモス薬品(福岡市)の前期売上高は初の5000億円を超え、うち食品は約2800億円を占める。関西大手のキリン堂も日配や冷凍食品の品ぞろえを拡大する方針だ。また、福井地盤のゲンキーは既存店139店への生鮮導入を進める。来期は50店を出店し、残りの既存店への生鮮導入も完了させる。
バローホールディングス(岐阜県多治見市)は、主力業態のSMが苦戦する一方で、DgS(中部薬品)とホームセンター事業が絶好調だ。「DgSからSMを作るという発想もある」(田代正美社長)とし、DgSにタチヤを導入した店舗を9月に出店予定。新たなSMの形態にチャレンジする。
DS大手のドンキホーテは、ユニー・ファミマとの業務提携の検討を発表。商品の共同開発・仕入れや物流機能の合理化などを検討するとしているが、ファミリー層をターゲットとしたGMS「MEGAドン・キホーテ」を展開するドンキが、今後GMS事業へ注力する布石ともとれ、今後も目が離せない。