ローソン竹増社長、加盟店オーナーから24時間営業の危機感訴えに「よい意見はどんどん持ってきて」
ローソンは4月3日、沖縄県那覇市のホテルで、加盟店オーナーで構成する「オーナー福祉会」の理事会とローソン役員との意見交換会を行い、報道陣に公開した。福祉会は加盟店が保険や慶弔見舞金制度をメインに、32年前に自主的に立ち上げた共済会のような組織。その後福利厚生の制度も加え、オーナーとその家族、店舗で働く従業員が対象になる。
全国各地域から選出された理事が集まる理事会は年2回行われているが、ローソントップが参加するようになったのは、三菱商事出身の社長になった時から。フランチャイズ(FC)本部では加盟店同士の横のつながりを嫌うところは多く、ローソンの「オーナー福祉会」のような組織が存在することは稀なケースだといえる。オーナー同士が本部への不満を共有することも多く、その会合に本部役員が参加することも極めて異例。「お互いに言いたいことを言い合うので、健全なコミュニケーションの場になっている。」(ローソン幹部)という。
理事会は任期3年。今回の2019年上期会合では、任期を終える第10期理事と、新たに任命された第11期理事など加盟店オーナー計25人、そしてローソンからは竹増貞信社長と役員計11人が参加した。
〈加盟店オーナーから24時間営業の是非、人手不足に関する意見〉
意見交換会では昨今話題になっている24時間営業の是非、人手不足に関する意見も多く出た。ホンダやスズキなどの大手メーカーの工場がある静岡県浜松市のオーナーからは、「工場の夜間勤務者が減少したら、営業を続けていけなくなるという危機感は常にある。本部が省力化の取り組みを実行してくれているのは十分に理解しているが、現場では3年後5年後ではなく、今すぐなんとかしてほしいと思っている」という訴えがあった。
その女性オーナーは、「馬鹿げたことと思われるかもしれませんが」としながらも、「本部は24時間を維持していくため無人レジなどを考えてくれているが、私なりに夜間の営業方法を考えてみた」とし、「銀行ATMコーナーのように(深夜は)半分シャッターを閉め、飲料や弁当などの自販機を置く。警備会社に連絡すれば、(無人でも)対応してもらえる。24時間灯りが点いていることは安全面から重要で社会貢献にもつながる」と話した。
また、別なオーナーは複数店を経営をしており、業績や人手不足などの観点からある店舗を閉店したが、近隣の顧客に大きな迷惑をかけたことを今も悔やんでいるという。地域の拠点としていかに維持していくかという意見で、竹増社長も、「ありがたい、うれしい。それぞれのエリアで様々なオーナーが、色々な考えをもっている。各エリアでよい意見はどんどん持ってきてもらいたい」と話した。
〈リスク分散・経営安定化の面から複数店経営を推奨〉
ローソンはリスク分散、オーナーの経営安定化の面から複数店経営を推奨し、平均10店以上を運営し、企業化しているMO(マネジメント・オーナー)の意見交換会「MO総会」も年1回開催している。MOの多くが地域にドミナント展開しているため、夜間は基幹店のみ営業し、その他の店舗を閉めるという考え方はできないのかという記者の質問に対し、竹増社長は、「本部は加盟店の売り上げと粗利を上げることに全力を尽くしている。24時間営業の店舗、そうでない店舗を混在させることは物流の仕組みを変えなければならず、生産性の検討する必要があると考えている。デジタルなどを活用して省力化などの研究を行い、人手不足解消にチャレンジしていきたい。一方で「今後、世の中が24時間営業をしなくてもいいのではないかという風潮になってくれば、我々も考え方を変えなくてはいけない」とも話した。
第10期の前田明理事長は、「AIの進捗があと2~3年早ければ、時短という議論も出てこなくて、乗り越えられたのではないか」と指摘した。また、前田理事長からは、「オーナーも高齢化している。10年契約では更新は無理だが、3年契約ならまだ続けられるというオーナーもいる」という意見も提出された。
「オーナー福祉会」第10期・前田理事長(中央)
〈竹増社長「ローソンをやっている人は全員ローソンが好き」〉
竹増社長は、「ローソンをやっている人は全員ローソンが好き。ローソンも今年で45年目に入り、30年、40年と経営していただいているオーナーさんもいる。75歳で10年更新と言われても難しいが、好きだからもう少しやりたいという声も聞く。本部も65歳定年で、定年後にローソンをやりたいが10年では厳しく、5年ぐらいのパッケージならやってみたいという声も多い。今はまだないが、そういった先輩方に感謝するパッケージがあってもいい」と、新たなFCパッケージの検討を示唆した。
オーナー福祉会には、2015年から女性オーナーによる「オーナー女子部」が発足しており、メンバーの松本小百合理事から活動報告も行われた。18年4月にスタートした子ども1人につき、保育所や託児所の費用を毎月1000円を補助する制度は今年1月までに526人の登録が報告された。人出不足対策として、駅前立地店に集中しがちな外国人従業員を、エリア内で共有する活動なども報告された。また、除菌剤による手荒れに悩む従業員の意見を汲み、手荒れの少ない推奨除菌剤の推奨商品を選定するなど、きめ細かい活動も行っている。
「オーナー女子部」メンバー・松本理事
〈「福祉会」と本部役員らで懇親会も〉
「オーナー福祉会 理事会」はローソン本部からも一部補助は出るが、福祉会と本人負担で年2回行われている。会合後は懇親会が行われた。
竹増社長(中央右)も出席、和やかな雰囲気の懇親会