無人コンビニ「600」導入企業が拡大、品揃えを自由にカスタマイズ、昼休みの時間浪費を回避

無人コンビニ「600(ろっぴゃく)」
無人コンビニ「600(ろっぴゃく)」を導入する大手企業が増えている。冷蔵庫大の冷蔵ショーケースで、電源コンセントさえあればどこにでも設置できる。菓子やカップ麺、飲料、日用品など、取扱商品は導入した企業の要望により自由にカスタマイズできる。1台で100品を取り扱え、商品の補充は週2回が基本。1カ月で600品を扱えることから「600」と名付けられた。最初の設置料金が別途かかるが、利用料金は1カ月5万円からで、補充頻度によって料金が変わる。

商品にはID情報を埋め込んだ「RFIDタグ」が付けられ、タグによって購入されたものが判別される。決済は扉につけられた端末によるクレジットカード決済。カードを端末に通さないと扉が開かないため、万引きのリスクもない。SNSのLINEとSlackを通して、欲しい商品のリクエストもできる。

運営するのはベンチャー企業の600株式会社(東京都渋谷区)。久保渓社長は以前の勤務先が高層ビルで、昼食時に混雑するエレベーターやコンビニの長蛇の列で浪費する時間をなくし、その分を仕事や家族との時間に使いたいという思いから「600」を開発。久保社長は今回4回目の企業。過去には「LINEペイ」の前身の「ウェブペイ」を開発した実績もあり、「600」の開発もお手のものだった。

2018年6月にサービスを開始。サービスエリアは東京、神奈川に限定されるが、KDDIやLINE、トヨタなど従業員1000人以上の大企業を中心に、現在約100カ所に導入され、高層ビルの上階への導入が多い。2019年夏からはマンションへの導入も始めた。醤油や味噌などの調味料なども扱い、買い忘れた時などに役立っているという。今後は新築マンションへの導入拡大を目指し、「600」があることがマンションのセールスポイントになるようにしていきたい考えだ。

首都圏の3カ所の倉庫を拠点に、約3000アイテムを用意して商品補充を行っているが、リクエストがあればそれ以外の商品も臨機応変に仕入れて対応できる。生鮮品など日持ちしないもの、弁当や乳製品など無人での販売が規制されているもの、冷凍食品を除き、日持ちするものなら扱える。

人手不足などを背景に、大手コンビニも省人化や無人化のシステム開発を進めている。しかし、商品補充などのサプライチェーンや廃棄ロスなどの費用を誰が負担するのか。無人状態での商品管理、決済システムなど様々な課題がクリアできずに模索しているのが現状。

「600」は独自のシステムでこれらをクリアし、コストも利用料金、商品の売り上げから得る利益で賄う。企業側にとっては毎月の利用料金が発生するが、働きやすい環境のための福利厚生費と考えれば高いものではない。また、同社はダイドードリンコと業務提携しており、ダイドーの自販機とセットで導入すれば、自販機の利益から600の利用料金を賄うという利用料金ゼロのプランも用意する。

同社は2月からメーカー向けに、発売前の商品を試験販売する場として、「600」を提供するサービスも開始した。100カ所で100通りの品揃えで展開するため、メーカー側はターゲットにしたい立地を選べる。600側からは商品の購入層、購入時間、頻度、併売商品などのデータをメーカー側に提供できるという。