コンビニの主戦場は都心から郊外へ、ライフスタイル変化でビジネスモデル見直し不可欠

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が出された2020年4月の小売業は、業態と立地で業績の明暗が分かれた。

生活必需品以外は営業の自粛対象となり、百貨店やショッピングセンターは休業や営業時間の短縮などで、売り上げが前年の半分以下となったところが大半。生活必需品を扱う業態は食品スーパーやドラッグストアの多くが軒並み2ケタ増となった一方、CVS(コンビニエンスストア)の売上高(既存店ベース)は、セブン-イレブン・ジャパンが前年同期比5%減、ファミリーマートが同14・8%減、ローソンが同11・5%減と大きく前年を割った。

CVSは全国津々浦々に店舗展開しているが、日販が高いオフィス街や繁華街、観光地などの店舗が業績を支えてきた実態が改めて浮き彫りになった。テレワークの浸透で、今後ライフスタイルが変化すると、都心偏重のビジネスモデルからの脱却が必要になる。

大手3社の中でセブン-イレブンが5%減にとどまったのは、都心部の多くの店が落ち込む一方、売り上げを伸ばした店が多い住宅地や郊外の構成比が比較的高く、店舗網がバランスよく展開されているためだ。

大手で最も落ち込みが大きかったファミリーマートは、店舗網が大都市圏に比較的偏っている。同社は2010年にam/pmジャパン、2016年にサークルKサンクスを吸収し、大型合併を繰り返して急拡大してきたことが、大都市圏に店が偏った背景にある。提携する鉄道会社がCVSの中で最も多いのも同社で、その多くはam/pmジャパンから引き継いだもの。駅構内は高日販店が多いが、在宅勤務や学校の休校、観光客の減少で鉄道の乗客が大幅に減少すると、これらの店舗が大打撃を受けた。

新型コロナウイルス収束後、オフィス街に従来通りオフィスワーカーが戻ってくるかはわからない。やむを得ず導入されたテレワークだが、働き方改革という流れも後押しし、これを機に浸透・定着する可能性は十分にある。そうなると都心部に林立するCVSは供給過多になり、今後大量閉店が起こる可能性もある。

オフィス街からCVSが激減しても、この間に増加した外食のテイクアウトが、オフィス街の中食需要を補完していく可能性もある。

外出の自粛が続く中、「ウーバーイーツ」などのフードデリバーサービスも急成長している。オフィス街だけでなく住宅地を含め、「食」の提供チャネルが、今後変わっていく可能性がある。

電車で通勤するライフスタイルが減り、人々が郊外に住むようになれば、大都市への一極集中も緩和され、都心偏重のビジネスモデルは通用しなくなる。「近くて便利」で成長してきたCVSの主戦場が、都心から郊外に移る可能性はある。しかし、人口が減少に転じた日本の郊外に新規出店の余地はあまり多くない。

近い将来、ラストワンマイルが小売の主戦場になることは必至で、ここに新型コロナウイルスを機に、「アマゾン」や「ウーバーイーツ」など異業種が入り込んできている。CVSは過去、様々なイノベーションで成長を維持してきたが、今回も成長イノベーションを起こせるのか。ローソンは昨年、都内の一部店舗で「ウーバーイーツ」のサービスを導入したが、外出自粛による利用者の急増で、5月中にサービスエリアを神奈川、大阪、京都、兵庫の約500店に拡大する。異業種とタッグを組むというのもひとつの選択肢だ。