東日本大震災から10年、復興の最前線を支えるスーパー、食品供給などなくてはならないインフラに

イオン浪江店
東日本大震災で、東北地方、特に福島県浜通りは甚大が被害が出た。10年を経て復興は徐々に進むが、住民の帰還に欠かせないのが、生活に直結する食品を供給する食品スーパーだ。

ヨークベニマル新富岡店(福島県富岡町)は2021年3月で開店から丸4年。イオン浪江店(福島県浪江町)は2019年7月に開店し、7月で丸2年を迎える。両店は、食品の販売とともにATM、公共料金の支払いなど住民の生活を支える社会的インフラの役目を果たしている。復興を急ぐ行政からの依頼で出店した経緯があるが、企業としては収益を上げながら、同時に復興のためのインフラの役目を担うという難しい役割が求められている。

しかし、両店を訪れて気付いたことは、パート勤務者を含め従業員のモチベーションがきわめて高いことだ。住民・お客さんのため、ひいては復興のため、努力は惜しまないとの姿勢が表れていた。限られた店舗面積の中で、あらゆる商品を並べることはできない。当初は、工事関係者のために温かいお弁当、総菜、そして酒類を中心に品ぞろえしていた。お弁当や総菜も大容量で肉系が多かった。それが住民の帰還が進み、女性を含めた家族のニーズから、お弁当は大容量だけでなく、容量の少ない商品、肉系とともに魚系の商品が増えてきた。もちろん地域柄、鮮魚の品ぞろえは必須で、さしみ、お寿司はインストアで対応する。

さらにお客さんの声を聞いて商品をそろえ、地元のしょうゆ、お好み焼きのソースなどの調味料、コーヒーのカクテルなどをそろえた。また誕生日に使うためラッピングをして欲しいなど店側では気が付かない点にも、細かく対応してきた。こうした要望の多さは、帰還者が増えたことにつながっている。

ヨークベニマル新富岡店の村松信人店長は、店舗の裏側を案内し、「開店当時、ここから見ると建物は一つもなく、夜、店を閉めて出ると、見渡す限り真っ暗だった。それがここまで住宅ができ、あちこちで明かりがついている。店のお客さんにもお子さん連れが増えた。普通の生活が営まれていることにホッとする」と少しずつだが復興が進んでいることを強調する。

イオン浪江店は、数キロ先に帰還困難区域を控える復興の最前線だ。二本木俊介店長は、「足元の人口は、出店時の500人から1500人に増えた。町の発展、住民の帰還のためには店舗を続けることが使命。この1年でお子さんがだいぶ増えた。ただ、もっともっと増えてほしい」と話す。

共通することは、復興を支えるという強い思いだ。なくてはならないインフラを支える、との思いがモチベーションにつながっている。両店を取材して、流通を含めて食品産業の原点を改めて考えさせられた。食料を安定的に供給すること、そして細かな要望に応え、より充実した生活、つまり普通の生活を実現することだ。その一方で、住民の皆さんの帰還は徐々に増え復興は進んでいるが端緒についたばかり。まだまだ我々がしなければならないことは多い。