東日本大震災から10年、被災地のスーパー進出状況/三陸地区=出張販売から復興、原発エリア=避難解除で地元が誘致

福島県広野町「ひろのてらす」(背後は広野町役場)
東日本大震災の被災エリアでは、地域のライフラインを支え、復興を後押しするため、地元スーパーや大手スーパーが、震災の直後から順次営業を再開している。

津波で多くの店舗が崩壊した三陸地域では、出張販売や仮設店舗で営業を再開し、町の再建とともに、スーパー各社も新店舗の建設を進めてきた。福島第1原発事故による避難指示が発出された福島県浜通り地区では、除染作業が進み、避難指示の解除エリアが拡大することに伴い、住民帰還のためのインフラ整備として、国や県、地元自治体が誘致する形で、スーパーが順次オープンしている。

イオンは震災直後の2011年4月から、津波被害が激しい岩手県大船渡市で移動販売車による出張販売を始めた。内陸のイオンスーパーセンター一関店(岩手県一関市)を母店に、営業休止中のグループのホームセンター「サンデー大船渡店」の駐車場を活用して販売を行った。6月からは隣りの陸前高田市からの要請を受け、地元のキャンプ場を活用して陸前高田市でも出張販売を開始した。8月にはサンデー大船渡店が営業再開。翌12年にはイオンスーパーセンターが陸前高田市で仮設店を開設。2014年7月には地元との要望を受け、それまでの出張販売と仮設店の実績も踏まえ、未出店地域だった陸前高田市に「イオンスーパーセンター陸前高田店」を開店した。

三陸地区で最も被害を受けたのは、岩手県大船渡市に本部を置く地元スーパーのマイヤだ。地盤の大船渡市内では4店中の3店と本部を失った。隣りの陸前高田市は2店すべて、大槌町でも唯一の店舗で旗艦店の1つだったマストを失い、計6店舗を失い、一時10店舗(岩手県内9店、宮城県気仙沼市に1店)まで店舗数が減少。当時、大船渡市内で唯一残った大船渡インター店に本部を移し、被災地域で出張販売を展開した。2011年12月には大槌マスト店の営業を再開。その後、店舗を失った大船渡市、陸前高田市では、スクラップ&ビルドで拠点を取り戻した。2019年には気仙沼市の片浜屋を傘下に収め、現在は岩手、宮城に18店を展開するまで復活してきている。

原発エリアでは2016年3月、福島県広野町が役場前の駐車場だった場所に公設商業施設「ひろのてらす」を設け、核テナントとして食品スーパー「イオン広野店」を誘致した。広野町は原発から25キロ圏で居住制限区域外だが、当時多くのエリアが帰還困難区域または居住制限区域に指定されていた双葉郡の最南端で、町の人口も震災前の半分に落ち込んでいた。

イオンはその後、イオンモールいわき小名浜(いわき市、2018年開店)、イオン浪江店(浪江町、2019年7月開店)など、国や福島県、地元自治体の要請を受け、福島県浜通り地区に順次店舗を出店している。

福島県で最も被害を受けたのは、県内最大手のヨークベニマル(福島県郡山市)だ。同社は一時全170店中、半数を超える87店が営業できない状況に陥った。当時、原発の避難地域には6店舗があった。同社の大高善興会長は当時を振り返り、「会社存続の危機を感じた。しかし、震災で従業員の目の色が変わり、自分の店は自分たちで守るという意識が芽生えた。お客様と接し、自分で考え、自分で動けるようになって、会社が変わった」と話す。

ヨークベニマルは2017年3月、翌月の避難指示解除を控え、富岡町の「新富岡店」の営業を再開した。国と県の要請によるもので、旧「富岡店」の建物を町が買い取り、3分割してヨークベニマル、ツルハ(ドラッグ)、ダイユーエイト(ホームセンター)がテナントとして入店した。その後、2020年2月に震災以来休業していた「原町店」(南相馬市)を建て替えて営業再開した。

東日本大震災後に復興目的に開店した小売

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