【主要CVS4社の24年度上期決算】日販でセブン苦戦、客数減への対応図る、ファミマ、ローソンは過去最高日販で前年比では明暗別れるも、“セブンは依然大差で1位”と強さ際立つ
国内主要コンビニエンスストア(CVS)4社の2025年2月期第2四半期業績(単体)が出揃った。全店平均日販は、ファミリーマート(ファミマ)、ローソンで過去最高を更新した一方、唯一セブン‐イレブン・ジャパン(セブン)のみが前年同期比でマイナスとなり、明暗が別れた。とはいえ、全店平均日販の金額では、依然セブンが他のチェーンと比べて断トツに高水準であり、既に打ち出している価格戦略などの施策が下期以降どう発揮されるか注目される。また、ミニストップは同社の特殊な事情もあり3年ぶりに営業赤字に陥った。
【関連記事】イオン「トップバリュ ベストプライス」強化で価格訴求強化、年末商戦に向け客数増定着化、荒利総額確保目指す、10月下旬に「トップバリュ」大規模キャンペーン、約100SKUで増量企画
CVSの業績における重要指標である全店平均日販は、セブンが前年同期比2000円減69万9000円、ファミマが1万1000円増57万3000円、ローソンが2万2000円増57万3000円、ミニストップが1000円増43万4000円とセブンのみがマイナスとなった。客数がセブンのみマイナスだったことが響いた。ファミマとローソンは全店平均日販で並び、ともに過去最高を更新した。とはいえ依然としてセブンと2位グループには12万6000円もの差があり、セブンの強さは際立っている。
〈セブンは減収・減益、質を重視して価格が上昇、「セブンは高い」イメージで客数減〉
セブンの単体業績は営業総収入が1.3%減、営業利益が8.1%減の減収・減益となった。業績悪化について、セブン&アイ・ホールディングスの丸山好道取締役常務執行役員は「インフレ進行により生活防衛意識が高まる中、食品全体のうち7割以上がオリジナル商品で、質を重視して価格の上昇をもたらしてきたこともあり、特に若年層においてセブンの商品は高いとの認識が高まったことから客数が低迷した」と話す。
下期の方針について、セブンの永松文彦社長は、客数減への対応の1つとして9月3日より、価格戦略「うれしい値!宣言」を開始したことを挙げる。約270品を市場価格と比べても競争力があるお買い得な商品として前面に打ち出した。
〈ファミマは店内デジタルサイネージが連結営業利益押し上げ〉
ファミマの業績は単体では不採算直営店の閉鎖で営業総収入が減収、基幹システム刷新やAI・デジタル投資で営業減益となったが、連結では実質増収・増益となった。特に連結営業利益は、店内設置のデジタルサイネージによるリテールメディア「FamilyMartVision」を中心とする広告・メディア事業が押し上げており、細見研介社長は「将来を切り開くことを感じさせる決算」と評した。
営業面では、既存店日販が36カ月連続プラスを達成。リニューアルした「クリスピーチキン」など中食が継続して好調だったことに加え、「たぶん40%増量作戦」等のキャンペーンも奏功したという。
なお、下期はイートイン設置店舗約7000店のうち約2000店でイートインを売場に変更、売場面積の拡大による品揃え強化を表明している。
〈ローソンは増収増益、マーケティングや改装などで売上伸長〉
ローソンの単体業績は営業総収入が3.2%増、営業利益が3.6%増と増収増益。連結(IFRS基準)での営業利益・純利益は過去最高を更新した。約2年半継続している「ハピろー!」などさまざまな切り口でのマーケティング施策や、店舗理想形改装効果などで既存店売上高が伸長した。竹増貞信社長は「インフレで生活防衛意識が高まっているが、それでは楽しさがない。単に値段を下げるのはなく、わざわざリアル店舗でする買い物は楽しい・ワクワクが必要だ」と強調する。
9月からはKDDIと三菱商事の共同経営となり、「Global Real × Tech Convenience」を掲げさまざまな施策を実行。具体的には、7月に全店導入完了した新発注システムによる顧客満足と加盟店利益の最大化や、デリバリー事業効果、店舗や本部のオペレーションDXなどを進め、2030年度に30%以上のオペレーション効率化達成を目指す。
〈ミニストップは特殊要因で増収減益、3年ぶり赤字〉
ミニストップの単体業績は、営業総収入は直営店増加と既存店日販の伸びもあり8.8%増と大きく伸びたが、営業利益は21年度以来3年ぶりに赤字に転落した。藤本明裕社長は「本来であれば経営指導体制がPS(パートナーシップ)契約の移行に先行すべきところ、その遅れとPS契約店舗の構成比拡大との時差が掛け算として負のインパクトとなり、結果として直営店の増加と質の低下、PS契約店舗の収益力低下を招いた。そして直営店の質の低下がさらなる経営指導の遅れにつながった」と話す。
宮崎剛専務によれば、2021年度に開始したPS契約店舗のうち複数店経営者に対しては支援付き契約店舗というメニューがあり、一定の条件を割り込むと本部から支援が入るという。通常契約に戻すまでの年限も決まっており、それに向けて経営努力を互いに進めていく。その間本部は効果的な指導をして店舗の状態を好転させる必要があるが、その指導体制の遅れがあったという。
その支援付き契約の条件を23年度から厳しくしたことで、直営店舗の増加を招き、さらに人手不足の問題があり、加盟店が経営を断念して直営化するケースもあるほか直営店も人材難に陥り、運営レベルに問題を抱え収益力が低下してしまったという。