食品大手の海外売上が軒並み増加 背景に為替安定と日本食ブーム
直近の決算期で海外売上高を公表した上位食品メーカー24社の全てが海外売上を増加させた。
16年度は年平均で米ドル、ユーロとも約11%の円高になったことから円換算では減少となり、増収はわずか8社にととどまったが、17年度の為替はほぼ安定したことから、本来の成長ペースを取り戻した。
本紙は食品業界の17年度売上高上位約40社(17年11月期~18年4月期)を対象に海外売上高を決算短信などの公表資料から調査した。
この中には乳業や畜肉関連など国内が主力というメーカーも多い。そのため海外販売についての記載がない、「国内販売が90%以上のため記載を省略」という企業が20社近くあり、海外売上高を公表したのは24社となった。
〈半数が2ケタ増収 グローバルな日本食ブームがプラス作用〉
表に示したように、上位24社の海外売上は全社増加となった。2ケタ以上の増収は12社。なお、大幅な増加となったアサヒグループHD、宝HDは海外売上げ自体も好調だったが、欧州の企業買収や新たな連結子会社化の影響が大きい。
表に海外売上を示した24社の海外売上高は合計で4兆8427億円で、前年比18.4%増。代表的な3通貨(米ドル・ユーロ・中国人民元)が円安となった分のかさ上げはあるが、為替差は5%に満たない程度。寿司・ラーメンなどのグローバルな日本食ブームがプラスに作用したとみられる。
〈国内の食料市場は減少継続の見通し、活路を求めて海外へ〉
国内市場は少子高齢化、人口減が本格化し食料市場は将来的に減少が続く。加工度の高い食品へ移行するという考えもあるが、やはり絶対量の減少が続く環境では簡単ではない。そこで大手を中心に海外市場に活路を見出そうという狙いが着実に実を結んでいる。また公開していないメーカーでも東南アジアなどへの進出は盛んだ。成熟市場の日本国内に対して、増収の期待が大きい海外市場に力を入れている。
海外売上比率が最も高いのがキッコーマンの58.6%、次いで味の素の54.6%。ヤクルト本社、不二製油グループ本社も40%以上。これらの多くは自社製品の輸出から現地生産へ拡大していったケースだ。
一方、海外売上高が最も多いのがサントリーHDの9539億円、次いでアサヒグループHDの6419億円、キリンHDも味の素に次ぐ5874億円。ビール3社は海外比率が30%を超えている。
〈食品産業新聞 2018年6月11日付より〉
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