広がる新型コロナウイルスの影響、食品関連のイベント中止や業績へのダメージも

国際ホテル・レストラン・ショーの会場
新型コロナウイルスの影響が拡大している。イベントや展示会の中止に加えて、企業の業績見通しにも暗い影を落とし始めている。酒類業界でも、2月下旬からのワインや清酒の展示会や試飲会が軒並み中止・延期の措置がとられている。3月14、15日に開催が予定されていた「にいがた酒の陣2020」は20日に臨時会議を開き、中止を決定した。例年、長蛇の列がでるほどの人気イベントだっただけに苦渋の決断となった。

アサヒビールは22日から8工場、ニッカウヰスキー2工場、サントネージュワイン1工場の見学を休止、アサヒ飲料は群馬工場、富士山工場、北陸工場、明石工場の見学を休止。サッポロビールは、25日から当面の間、工場見学3施設(北海道・千葉・九州)、ミュージアム2施設(北海道サッポロビール博物館、東京ヱビスビール記念館)、ワイナリー2施設(勝沼・岡山)の見学を休止する。

18〜21日まで幕張メッセで開催した「HCJ2020」(国際ホテル・レストラン・ショー)では、サーモグラフィーによる体温チェックを実施した。一定以上の体温の場合、来場者は入ることができない。展示会場内でも、場内はマスクをする人がほとんど。試食もあまり外気に触れないようラップをかけておく、アルコール消毒を実施するなどの対策が取られていた。一部の企業では出展を取りやめるなどの措置をとった。

企業の事業への影響で、ロイヤルホールディングスは新型コロナウイルスの売上高への影響を22億円の減収と想定する。同社はホテルや空港内の飲食店などを手掛けており、旅行者が減少した際の影響は少なくないという。食材大手でも、中国製造品から国内や海外の代替商品の提案を進めている。

〈味の素、新型肺炎で中国の工場停止も〉
また、味の素は新型コロナウイルスの事業への影響について、3カ月間継続した場合の試算を明らかにした。中国の工場停止や中国からの輸入原料の代替費用で最大9億円の減益要因となる一方、燃料価格の下落などで最大2.5億円の増益要因となると見込む。日本のほか主要国の景気への影響やMSG(うまみ調味料)など素材市場への影響については不透明だが、西井孝明社長は19日の記者会見で、今期の決算への影響は軽微との見通しを示した。

工場停止による固定費について3カ月で最大6億円の減益影響を見込む。内訳は上海味の素アミノ酸社で月間0.8億円、上海味の素調味料社で月間1.2億円。なお中国拠点は上海が中心となり医薬用アミノ酸精製会社があるほか、江蘇省の連雲港味の素冷凍食品が冷食を北米や日本へ輸出しているが、そのほかは中国エリア向けの製造拠点となる。

中国からの輸入原料の代替費用の増加は最大3億円。主に日本の生産への影響となる。使用量が多いのが野菜で、冷食や加工食品向け。そのほか水産品や一部香辛料などがあるとした。

原料・燃料費の減少については、経済活動の停滞により原油価格が下がると見込む。国内で0.2億円、海外で2.3億円のコスト低減の影響を見込んでいる。

MSGや動物栄養などの素材市場では、中国の競合企業への影響など不透明な部分があり確認中としている。インバウンドや外食、会合など経済活動への影響についても不透明な部分があるという。