福神漬のライバル企業がタッグ、「漬物」の家庭科用副教材を共同制作/新進・やまう
日本の伝統的な食事や各地の伝統的な漬物を紹介する内容だ。中でも「福神漬」について詳しく説明している。新進とやまうの2社は、それぞれ福神漬カテゴリーで販売シェアの高いライバル企業だが、業界活性化と消費拡大に向けて共同で副教材の制作に取り組んだ。食の嗜好が固まる前の幼少期から、漬物に親しんでもらうねらいだ。
今回製作された家庭科用副教材「日本の伝統的な食について」は、2022年に入って東京都と群馬県の小学校約83校に1万部程度を配布された。さらに、希望した学校には両社の福神漬を配布した。実際に各家庭で味わってもらうことで、理解を深めてもらうとともに、業界の活性化と福神漬の消費拡大を目指している。
副教材の内容は、野菜について摂取の重要性やおいしい食べ方を楽しく学んでもらうため、日本の伝統食である漬物や、子どもたちに人気の高いカレーライスと一緒に登場する機会の多い「福神漬」に焦点をあてて紹介している。欧米風の食生活が浸透する中、日本の古き良き食文化を伝える目的もある。
配布にあたって2社は共同発表会をオンラインで開催した。そこで、今回の共同制作が実現できたのは、新進の籠島正雄社長と、やまうの梅澤綱祐社長が、業界の会合などで話をするうちに、食育についての問題意識が共通していることがわかったためという。
やまうの梅澤社長は、「普段は市場で競合としてぶつかる両社だが、問題意識は一緒だったので、その部分は共感しあっていた。お互い本社は東京で、工場も群馬県にあり、福神漬けを扱っているなど、昔から共通点がいろいろある。社長同士の年齢が近いこともあり話が進んだ」とする。
新進の籠島社長は、「漬物市場が縮小傾向にある中で、いかに漬物を食べていただくかが、業界全体が抱える大きな課題だ。私は以前より、食育を通じて幼少期からお漬物に親しんでいただく重要性を考えていた」と話す。
やまう 梅澤社長、新進 籠島社長
核家族化が進んだことで、幼少期から漬物を食べる機会が減っている。そして、その子どもたちが親になる世代になってきた。小さい頃から食べ慣れていない世代のため自然と漬物は食卓に並ばず、消費が徐々に下がっていったという。
籠島社長は、「現在は60~70代の購買層がいらっしゃるが、20~30年後は一体どうなっているのかを考えると、本当に恐怖を覚える。このような状況を考えた時に、食の嗜好が固まってしまう前の幼少期のうちに、いかに漬物に親しんでもらえるかが本当に大事になる」と話した。
両社の社長は、「この(食育)活動は短期間では効果が出ない」とする。これから長期にわたって、今回の副教材を使いながら、子どもたちに少しずつ認知してもらい、20-30年後に大きな変化が生まれることを期待しているという。漬物という食文化を残すため、中長期的な視野で活動を進めている。
やまう「やさしい福神漬 平袋 100g」、新進「国産野菜カレー福神漬 減塩100g」