本紙選定重大ニュース 1位はTPP大筋合意。食品業界は新たな時代へ

▽2位は、食品メーカー、小売業の好決算が顕著

本紙選定の今年の重大ニューストップは何と言っても11月のTPPの大筋合意をあげた。発効時期は未定だが食品業界は新たな時代へ突入する。2位の「食品メーカー、小売業の好決算目立つ」は久しぶりに明るいニュース。円安などで値上げラッシュも15年の特徴だが、直近のFRBの利上げが円安に振れれば輸入食品のコストアップにつながる。食品表示法と機能性食品表示制度、軽減税率、食事摂取基準などの制度は16年以降に大きな影響を与えそうだ。

①TPPが大筋合意。食品業界は新たな時代へ

11月に大筋合意したTPP。正式に発効する時期は不透明だが、関税など貿易だけでなく、投資や労働、知的財産など多くの分野で従来とは異なる参加12カ国での国際関係が変化する。発効すれば、食品業界にとっては輸入食料の関税が即時または経時的に無税になるなどプラス面もあるが、国産農水産物への打撃は大きく、将来の国産原料調達は課題が山積する。また海外製造、海外市場開拓、輸出などのチャンスでもあり食品業界は新たな時代へ突入する。

②食品メーカー、小売業の好決算目立つ

食品メーカーの中間決算は増収・増益企業が前年度に比べて大幅に増加。営業利益率も久しぶりに4%台に乗った。海外進出の加速、穀物及び原油の国際価格安と値上げ効果などが要因。小売業も食品スーパーは加工食品の値上げ、生鮮品価格の上昇など、百貨店はインバウンド効果で好決算。大手総合スーパーは苦戦。

③メーカー、小売で大型統合発表

食肉加工2位の伊藤ハムと同7位の米久が来年4月に経営統合する。合計売上高は約6300億円で、3位以下を大きく引き離す。

コンビニ3位のファミリーマートと4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスも来年9月に経営統合する。コンビニの国内合計店舗数は約1万8000店で、1位のセブン‐イレブンと並ぶ。メーカー、小売ともに、業界内の寡占化が加速している。大手同士の統合の背景には、国内市場縮小に加え、中国や新興国の食糧需要急増で、原料調達への危機感があるため。スケールメリットの拡大と効率化で、国内外で優位に立てる基盤作りを急ぐ。

④円安、原料高等でコスト上昇、製品値上げラッシュ

政府の円安誘導は輸入原料に多くを頼る食品業界にとってはコストアップにつながる。物流費、電力、包材も高騰。またトマト、コーヒーなど国際価格の高騰がみられる原料もある。このため、年初から冷食、即席麺、食用油、豆乳など、4月以降も牛乳・乳製品、ケチャップ、コーヒー、味噌、ソース、パン、チョコレートなど値上げラッシュとなった。

⑤食品表示法が施行、5年後完全移行

食品表示に関する規定を統合・一元化する法律で4月1日施行。具体的な食品表示の項目や表示の方法は「食品表示基準」に規定され3月に公布された。経過処置期間を経て5年後の20年4月から完全移行する。

⑥外食、量販、物流などで人手不足

労働集約型のサービス産業での人手不足が深刻だ。スーパーは新規出店ラッシュが続くが、開店までに必要なパート従業員数が確保できず、派遣で埋め合わせる事態が常習化している。物流もネット通販拡大の一方で、ドライバー不足が各地で起きている。スーパーではプロセスセンター整備で、店の人員を減らすほか、外国人技能実習生の受け入れで人員を確保しようという動きも出てきている。

⑦機能性表示食品制度がスタート

機能性表示食品制度が4月にスタートし、6月中旬から「キリン 食事の生茶」などの商品が順次発売された。同制度は、論文などの科学的根拠に基づいた機能性が、事業者の責任で表示されるもの。商品展開数は当初の予想よりも少ないが、じっくり育成することで、かえって定着しそうだ。

⑧コーヒー消費量3年連続過去最高

国立がん研究センターが5月に「コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは飲まない人より24%低い」と発表したことも追い風となった。こだわりカフェの増加や、コンビニや家でおいしいコーヒーを飲める環境になったことが大きい。

⑨17年の消費増税、食品に軽減税率適用

17年4月に予定されている消費税の10%増税時に、食品は8%で据え置くことが、与党内で決まった。外食は外されたが、その線引きが不透明で混乱を招きそう。またメーカー、流通などに新たな設備や事務の煩雑化を強いることにもつながる。小売・流通・外食5団体は軽減税率反対を決議していた。

⑩ファミレス、牛丼チェーン等で“ちょい飲み”流行

居酒屋の既存店売上高の前年割れが続くなか、ファミリーレストラン、ファーストフードにおける飲酒需要の取り込み「ちょい飲み」が好調だった。酒やつまみを提供する吉野家の「吉呑み」や、15時からハッピーアワーを導入するすかいらーくの「ガスト」などがその代表例。1杯から気軽に飲める敷居の低さで、多くの客を引き付けた。

⑪日本人の食事摂取基準が4月から運用開始

5年に1回改定される日本人の食事摂取基準が4月から運用を開始した。エネルギー量からBMIの注視、塩分摂取目標地の下方修正などが主な改定点。減塩・節塩食品に早くも注目が集まっている。

⑫ミラノ万博で日本館、日本食が人気に

5月1日~10月31日までの半年間、食をテーマにした「2015年ミラノ国際博覧会」がイタリア・ミラノ市郊外で開催された。日本館は、来場者約200万人を突破。JFが中心となって出展したフードコートも好調で、和食のアピールに成功した。今後の課題は、海外での和食人気を国内の和食にどう反映させていくかだ。

◎番外 好調なインバウンド需要に対応進む

15年の中国人など外国人入国者数は年間1900万人を超えることが確実となった。爆買は流行語にもなったが、小売業界では外国人向けのコーナーを設置、人気商品を揃えたり、免税レジを新設するなど対応が進んだ。

【その他の項目】

▽JTが飲料事業撤退▽穀物、大豆の在庫率が史上最高の見込み▽ニチレイ、味の素の冷食炒飯が好調で市場活性化▽こめ油、アマニ油、エゴマ油、ココナツ油がブームに▽コメ生産調整、史上初の達成-など。