メーカーから”サービス産業”へ、大量生産・消費から脱却
食品業界はビジネスモデルの転換期にある。国内の人口が減少し、長年デフレに苦しんできた中で、大量生産、大量消費から脱却し、限られたターゲットに付加価値のある商品やサービスを提供する動きが出ている。
生活者の中に飛び込み、ニーズを徹底的に捉えて生み出された商品は、たとえ割高でも定着する。ドライバーに新たな飲み物の選択肢を増やしたノンアルコールビールや、容器・味・形状で、単純なつゆから、多様に変遷してきた鍋つゆなどが、生活者のニーズを先取りして開発した商品として良い例だろう。最近では、商品のプレミアム化が各カテゴリーで進み、自社の強みを活かして商品をレベルアップし、単価を上げることにも成功している。
また、商品を買ってもらうのを待つだけでなく、ユーザーのいるところに出向いて展開する新しいサービスに成功している例もある。「ネスカフェアンバサダー」(ネスレ日本)や「オフィスグリコ」(江崎グリコ)は、オフィス需要を取り込んでいる。ネスレ日本の高岡浩三社長は、「21世紀の製造業は、単にモノの価値ではなく、サービスの価値も含めて消費者に提供しないといけない。モノが溢れている時代なので競合他社との差別化もままならない」と話す。
メーカー、卸、小売、外食のそれぞれが知恵を絞ってプロダクトアウトからマーケットインに舵を切った。利益体質の企業に向け、脱皮する機会でもあり、16年はまずます期待できそうだ。
【加工食品】加工食品や飲料では、技術に裏付けられた新需要開拓型の商品は数多い。15年発売の商品でも日清フーズの小麦粉「日清クッキングフラワー」は、サラサラでダマになりにくく、溶けやすい容器入り小麦粉がある。付加価値を付けることが容易でない分野で小麦粉の普段使いの機会増加を図り、新規需要を獲得した。時代を大きくさかのぼれば、缶詰、冷凍食品、即席麺、レトルトパウチ、フリーズドライなど食品の形態を大きく変えた革新的技術は数多い。しかし、近年に限ってみても、新たな需要開発につながった技術、商品は少なくない。