【中国・アセアン進出企業特集】関心高まるチャイナプラスワン

中国国家統計局の発表によると、中国の昨年の国内総生産(GDP)は実質ベースで6・9%増と、天安門事件の影響があった1990年(事件の翌年)以来、25年ぶりの低い伸びとなった。これまで成長を支えてきた輸出が欧州や日本向けが減少したことで前年の4・9%増から2・8%減の2兆2765億ドルとなった。また輸入も原油価格の低下もあるが、やはり内需の低迷が大きく14・1%減の1兆6820億ドルとなった。貿易総額の減少(8%減)が示す通り、中国経済の行方は非常に気ががりである。

これを裏付けるように16年の成長率はIMF国際通貨基金が6・8%増、中国政府系の中国社会科学院が6・6~6・8%増と予測、さらにその後も成長率は6%台まで徐々に下がる(IMF)とみており、8%以上の成長が当然だった中国経済は新しい状況に入ったとみられる。

それでも14億人近い人口と6%台の経済成長はやはり脅威であり、世界2位の経済大国の地位はゆるぎないようで、世界の大消費地であることは間違いない。

一方、本邦食品企業の中国への進出は、10年以上前から本格化した。当初は生産基地という性格が強かったが、現在では冷食等を除き、完全に中国国内市場をターゲットにした生産・販売に移行している。加えて、外食や流通企業の中国進出は、始めからその巨大市場をターゲットとしている。最近では給食、惣菜まで加わってきた。

しかし、最近の2国間関係はかなり冷え込んでいる。12年9月の野田政権による尖閣諸島の国有化や安倍政権の集団的自衛権行使を可能にする安保関連(戦争)法案を強行可決するなどがやはりマイナスに影響している。日中首脳会談こそ、昨年の5月と11月に国際会議中に行われたが、短時間でありほとんど成果はなかった。

確かに中国政府は国内の格差拡大などの国民の不満をそらすため、もともと国民の目を海外に向けさせる傾向が強く、特に反日感情をあおる作戦をとっていた。こうした複合的な要因が重なり、中国国内の本邦流通店舗が破壊活動を受けたり、本邦自動車メーカーの販売台数の激減、食品メーカーの商品の売り場撤去などの被害も記憶に新しい。最近では、かなり改善されているようであり、喜ばしい限りだが、潜在的なカントリーリスクとして、しっかり認識しておく必要がある。

一方、これまで進出の最大の利点だった人件費の安さも先進地域では失われている。従来からの課題といわれる模倣品の氾濫、売掛金回収、物流・インフラなどの課題も完全に解決されたわけではない。このようにいろいろな面で中国リスクが存在することは確かだ。

それでも現状では世界最大級の巨大市場である。両国民の感情的対立が強まったといっても、経済的関係がここまで強化された以上、本邦進出企業にとってこの巨大市場を失うことはできない。しかも制度的に撤退や縮小も簡単ではない。

ただ、他地域への転換・進出を図る「チャイナプラスワン」に関心が高まっている。その対象地域は、市場としてはアメリカ、欧州であり、将来を見据えてアフリカ、南米、インドなどとなる。生産基地としては、本邦企業にとって歴史的つながりが強く、政治的安定、高質安価な労働力など有利点の多いアセアン諸国が最も期待される。内需の拡大化もあり、現地市場としての期待も大きい。

この特集では、我が国食品関連企業の中国及びアセアンでの活動などを見ていく。ビール、飲料、冷食、小売、外食の各業種の中国及びアセアン事業を概観する。6面には先行進出企業の現状についてアセアンを含めて紹介する。また、中国及びアセアンの専門家お二人のご意見も紹介する。