スーパーで惣菜が売れない? 34カ月ぶり前年割れ、節約志向のあおりか
今年度に入り、吉野家で牛丼より50円安い豚丼が4年ぶりにメニューに復活するなど、外食業界では一足先に節約志向の動きが出ているが、小売業界もここに来て、節約志向という言葉の登場頻度が高まっている。各協会が集計するスーパーの販売統計では、衣料品など非食品の買い控えが節約志向の主なもので、食品は堅調を維持していたが、6月に入って異変が起きている。日本チェーンストア協会の販売統計(既存店ベース)によると、好調をキープしていた惣菜が、6月に34カ月ぶりに前年割れに転じた。
日本チェーンストア協会によると、「家庭での調理が増えているのではないか」と分析する。惣菜がこの間伸びていたのは、商品力の向上ととともに、単身世帯や核家族の増加で、素材を買って調理するより、出来合いのものを買った方が割安ということがあった。共働きの増加で調理する時間がないこと、CVs(コンビニエンスストア)を含めた中食市場全体の進化もあり、家庭での「作らない化」は着実に広がっていた。しかしここにきて、自炊の方がもっと家計を切り詰められると判断する人が増えているのだとすれば、日本の個人消費の先行きは、相当厳しいと言わざるを得ない。
食品小売業界では、節約志向の高まりとドラッグストアなど異業種の食品小売参入で、加工食品の低価格競争が激しさを増している。加工食品を安く販売するにはスケールメリットが不可欠で、中小チェーンが大手流通グループの傘下に入るケースも増えている。
加工食品ではもはや利益が出せない。「作らない化」で生鮮食品も売れない。スーパーは今後、何屋になるべきなのか。惣菜の強化で、粗利の確保と競合との差別を打ち出すしかない。店内調理でCVsとも差別化してきたが、ここにきて人手不足という問題と、さらなるコスト競争への対応にも迫られ、惣菜の店内加工を減らし、PC(プロセスセンター)からの供給を増やすスーパーも増えている。
ただこの場合、大手CVs以上の弁当・惣菜がPCで開発できなければ、スーパーは自らの首を絞めることになる。大手CVsには、40年以上積み重ねてきたPC供給の弁当・惣菜のノウハウがある。そして1万店以上という圧倒的なスケールメリットと全国ネットワーク、ローコストオペレーションのしくみもある。それをスーパーが超えることは難しいだろう。
個人消費がここまで冷え込んでいるのは、足元の経済環境の悪さだけでなく、国内外で起きている政情不安やテロなど、あらゆることで先行きが見えない今の状況が背景にある。
こればかりは、一企業で解決できるものではなく、政治の力に託すしかない。では、企業は何をすべきか。顧客満足度を高めるための努力を続けるしかない。