本紙が選ぶ2016年食品業界重大ニュース 健康価値訴求品 成功続出
今年は今後の食品業界に重大な影響を与える制度や税制の方向付けが数多く行なわれた。また昨年のトップに位置付けたTPPの大筋合意もトランプ新政権のもとでは、あやしい。そこで、今年実際に起きた明るい出来事として、ヨーグルト、即席麺、コーヒーなど「健康や価値向上で好調食品群が目白押し」をトップに掲げた。各業界で大型統合が移相次いだ年でもあった。本紙制定の重大ニュースを発表する。
①健康や価値向上で好調食品群が目白押し
史上最高の販売量となった品目が続出した。健康価値訴求が成功したのは、機能性ヨーグルトに代表されるヨーグルト、様々な健康効果が後押ししたコーヒー、無糖茶、チーズ、食酢、オリーブ油・アマニ油などの植物油、ハイカカオチョコレートなどがあげられる。またプレミアム化が成功した即席麺、冬アイスなどのマーケティングによるアイスクリームは過去最高の販売量。冷凍炒飯も市場を拡大。
②トランプ政権発足で、TPP暗雲、ドル高進行
11月のアメリカ大統領選挙で大方の予想に反してトランプ氏が当選。1月の正式就任前からその歯に衣着せぬ発言でトランプ氏の影響が各方面に影響が出ている。最も大きいのがTPPの行方。TPPに批准しないことを明言しており、TPP発効は難しい段階だ。しかし、アメリカとの2国間EPA・FTAに移行する可能性は含まれている。また急激なドル高・円安が進んでおり、年明けからの輸入農産物のコスト上昇が確実視される。
③業界で大型統合が相次ぐ
4月1日に伊藤ハムと米久が統合し「伊藤ハム米久ホールディングス」が誕生、9月1日にユニーグループHDとファミリーマートが統合し「ユニー・ファミリーマートHD」が誕生した。来年4月にはコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストが統合し、売上げ1兆円のコカ・コーラジャパンが誕生する。大手でも生き残りをかけた統合劇となる。
④原料原産地表示が全ての加工食品に義務化
11月に加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会の中間取りまとめが発表され、全品目について上位1位の原料の原産地の表示を義務付けることとなった。しかし、ラベル表示にこだわったためか、可能性表示、大括り表示など例外が多く、食品業界にとっても、消費者にとっても課題の残る結着となった。
⑤ビール類酒税が一本化、清酒とワインも同一に
来年度税制改正大綱に、今後の酒税改正が明記される。10年後の26年にはビール系の酒税が350ml缶あたり55円に統一。清酒とワインも720ml瓶当り72円に統一される。
⑥熊本地震や台風で食品業界の支援活発化
4月の熊本地震、秋の北日本を襲った連続台風など今年も自然災害が多かったが、その被災者に対して食品業界は活発な支援を行った。東日本大震災の教訓から各社・各業界の支援は迅速かつ効果的なものとなっている。
⑦食品メーカーの中間決算が好調
トランプショックまでの円高と穀物類の国際相場の安定、さらに各社の体質改善策などにより、3月期決算メーカー99社中、70社が営業増益となった。全社平均の対売上高営業利益率は5・04%で過去最高。なお売上高は円高により減収が目立った。
⑧清涼飲料の多機能自販機が躍進
コカ・コーラの「コークオン」、サントリー食品の「グリーンプラス」、ダイドーの「スマイルスタンド」といったスマホ対応型や多言語対応型、そしてキリンの自撮り機能やアサヒ飲料の常温コラム付きなど、多彩な機能の自販機が続々登場し、自販機チャネルは活性化し売り上げも回復した。
⑨HACCPが食品全てに義務化へ
厚労省は12月に食品衛生管理の国際標準化に関する検討会の最終とりまとめ(案)を公表。対象となるのはフードチェーン全体。食品加工業はもちろん、外食店、惣菜・弁当、旅館・ホテル、各種処理業、食肉・魚介など販売業も含まれる。また企業規模も1人から全て含まれる。18年の通常国会に法案を提出予定。小規模業者を対象としたB基準の運用が焦点となる。
⑩外食、量販、物流などで人手不足
労働集約型のサービス産業での人手不足が深刻だ。スーパーは新規出店ラッシュが続くが、開店までに必要なパート従業員数が確保できず、派遣で埋め合わせる事態が常態化している。物流もネット通販拡大の一方で、ドライバー不足が各地で起きている。外食チェーンでは24時間営業を取りやめる店舗も目立つ。
⑪外食で低価格メニューが人気
景況感の悪化を背景に、ファーストフード店では低価格メニューが人気となった。吉野家では4月に4年ぶりに復活販売した「豚丼」(税込み330円)が大ヒット。「牛丼(並盛)」より50円安く、味はもちろん、価格の面でも支持を集めた。またマクドナルドではバーガー+ドリンクの「バリューランチ」(同400円)がヒット。中国産鶏肉問題以降、不振が続いていた同社の巻き返しにもつながった。
⑫セブン&アイHDの鈴木敏文会長が退任
鈴木会長が提案した井阪隆一セブン‐イレブン・ジャパン社長の退任人事案が、設置したばかりの指名報酬委員会で承認されなかった。日本のコンビニを作ったカリスマ経営者の突然の退任は、24年続いたトップダウン経営が時代に合わなくなったことを示した。井阪氏がセブン&アイHDの新社長に就任し、合議制による新経営体制が発足した。
◎番外 インバウンド需要は爆買いからコト消費へ
16年の中国人など外国人入国者数は年間2400万人と見込まれるが、最も多い中国人の爆買いはひとまず沈静化、スポーツ・文化の体験、日本食の食べ歩き、温泉散策、さらには医療観光までコト消費に移行している。
【その他の項目】
▽食品廃棄物の不適切な転売防止で制度を検討▽消費増税再延期▽キリンの47都道府県一番搾りがヒット▽国産牛肉相場高騰で輸入牛肉、豚肉、鶏肉へシフト▽今年の一皿にパクチー料理-など