オムロン 飲料検査機器大手・キリンテクノシステムに出資、不良品“出荷しない”から“作らない”製造現場へ
キリンビールは完全子会社であるキリンテクノシステム(KTS)の発行済み株式のうち60%を電気機器メーカー大手・オムロンに譲渡する株式譲渡契約を締結した。10月18日、オムロンは締結の内容について発表した。持分比率はオムロン60%、キリンビール40%となる。
安心安全な飲料の供給に向けて実施したもの。キリンビールとオムロンの両社は、検査データを活用した“製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)”のソリューション(提供価値)をともに開発し、食品・飲料業界の発展に貢献するとしている。
オムロンの高度な制御技術と、KTSの検査技術を融合させ、新たな提供価値を共創する。具体的な事例としては、検査データから不良となる原因を特定し、対策することで、工程内不良を作らない製造現場を目指すという。
通常、検査機は前工程完了品の良否を判定し、不良品の流出を防ぐことで品質を担保している。だが、オムロンは、不良品を“出荷しない”から“不良品を作らない”製造ラインの開発に取り組んでいる。KTSの高性能の検査機から得られるデータを活用し、不良を引き起こす予兆を捉え、前後の工程を自動制御していくという。
オムロン執行役員常務の辻永順太インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長は、「両社の技術シナジーにより新たな価値を提供する。生産不良品の排気量・エネルギーロスを削減し、地球環境保全に貢献したい。さらに、DX化されたモノづくりにより全品質データを消費者に届け、安心安全で充実した“食”の実現を目指していく」とした。
2社の共創により生み出したソリューションを、アジアを中心に世界中の飲料業界の顧客(メーカーなど)に展開することで、食品・飲料業界全体の品質改善・生産革新を促進し、不良品の削減などを通じて地球環境保全への貢献も図る。
オムロンは、飲料業界を成長が見込める市場とし、グローバルでは2021年に178兆円規模を、2024年には210兆円まで増加するとした。それに伴い、飲料検査装置市場も2021年の690億円から2024年には820億円となり、130億円の増加が期待される成長市場だとしている。
今回のオムロンのKTSへの出資は、飲料検査装置の需要の高まりに応えるとともに、国内外の取引先をさらに拡大するねらいがあるとみられる。