8月の食品値上げ642品目、秋は半年ぶり2000品目台の値上げラッシュ、価格引き上げ→内容量減など「価格維持」にシフトの動き/帝国データバンク
帝国データバンクは7月31日、2024年8月以降の食品の値上げ動向と展望・見通しに関する分析を発表した。
8月の食品値上げは642品目。一方で、価格引き上げから内容量の減量などによる「据え置き・維持」へのシフトが目立ちはじめており、値上げの勢いは後退感もみられる。
◆8月は642品目の食品を値上げ、平均値上げ率は2024年最低水準
主要食品メーカー195社の家庭用を中心とした8月の飲食料品値上げは642品目となっている。2023年8月(1197品目)と比べて46.4%減と、8カ月連続で前年同月を下回ったほか、4カ月連続で1千品目以下の水準にとどまり、値上げ沈静化の傾向が続いた。また、値上げ1回あたりの平均値上げ率は8月単月で12%となり、2024年内では最も低い水準だった。
◆8月の値上げは「加工食品」が最多の319品目
2024年8月の値上げは、「加工食品」が全食品分野で最多の319品目。輸入小麦で輸送費の上昇などを背景に、大手各社で乾麺やソースなど「パスタ製品」で一斉値上げが目立ったほか、家庭用ミックス粉など「原材料」(52品目)も値上げとなる。「菓子」(128品目)は、引き続き原料となるカカオ豆の価格高騰を背景に、「チョコレート製品」の値上げが中心となる。チョコやレーズンの価格上昇で一部菓子パン製品でも値上げがみられた。
9月以降は、冷凍食品やハム・ソーセージ製品の値上げが予定されているほか、清涼飲料水を中心とした缶・PET飲料、ビール類を除く酒類、アイスクリーム・氷菓製品、パックごはんなど、幅広い品目で値上げとなる。
◆「物流費」要因が上昇、「円安」要因は3割に上昇
2024年通年の値上げ品目数(予定含む)は、11月までの累計で1万1617品目となり、年間の平均値上げ率は17%となった。
2024年の値上げ要因では、「物流費」の上昇による影響が広がりをみせている。24年(1-11月)に予定される値上げ品目のうち、「物流費」要因の値上げが品目数ベースで68.2%となり、前年の同時期(57.5%)に比べて上昇した。急速に進んだ円安ドル高による輸入コスト増を背景に、「円安」要因の値上げは30.2%に達した。要因として最も大きい「原材料高」は92.4%を占め、特に春以降の値上げで原材料高の影響が広がった。猛暑や干ばつなど天候不順による不作の影響を受けた値上げが多く、なかでも「チョコレート」を使用する幅広い食品で大幅に価格を引き上げる動きが相次いだ。
◆今後の見通し、値上げ→価格維持にシフトの動き
一時的に160円を超える急激な円安の進行に加え、食品トレーやビンなど包装資材、物流費などのコスト増が複合的に発生している。また、オレンジジュースやチョコレート製品では、大雨や猛暑、干ばつをはじめとする世界的な異常気象による原材料高が表面化している。国産由来の原料でも原料米価格の高騰を背景にパックごはん製品で価格が引き上げられ、飲食料品に対する値上げ圧力は高まった状態が続いている。
他方で、実質賃金の伸び悩みによる購買意欲の低下を背景に、値上げ後の商品を買い控えるといった消費者の値上げ疲れ、PB(プライベートブランド)製品など低価格の代替品志向といった動きが強まっている。このため、近時は本体価格の「引き上げ」から内容量の減量などによる「据え置き・維持」へのシフトが食料品でも目立ちはじめており、値上げの勢いは後退感もみられる。
先行きでは、10月の食品値上げ予定品目数が今年4月以来となる2千品目台で推移している。資材価格の高騰が続くビール類やRTD飲料(主に缶チューハイ・缶カクテル・缶ハイボールなど)、日本酒など酒類製品で値上げが実施される場合、2023年10月並みとなる4千品目前後に到達する可能性がある。24年通年では、10月に値上げラッシュを迎えた後は11・12月ともに総じて落ち着いた推移が想定され、1万5千品目前後での着地が予想される。
なお、品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした。値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む。