大塚製薬、女性の健康支援をグローバルに拡大 日米の更年期の違いをふまえたアプローチ
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大塚製薬は2月7日、メディア向けセミナー「大塚製薬 グローバルでの女性の健康事業の取り組みと今後の展開」」を開催した。2023年に大塚製薬の傘下に加わったボナファイドヘルス社のチーフメディカルオフィサーであり婦人科医のアリッサ・ドウェック氏を招き、日本と米国における女性の健康課題の違いや共通点について解説したほか、大塚製薬の女性の健康事業の研究開発や今後の展開が紹介された。
〈日米で異なる更年期症状と受診行動〉
大塚製薬佐賀栄養製品研究所の上野友美所長によると、女性の健康課題はグローバルでも関心が高まっているが、日本と米国では更年期症状における認知に大きな違いがある。
日本では「なんとなく調子が悪い」「これは仕方のないこと」として症状を我慢する傾向があり、更年期による認知が十分でないため、婦人科ではなく内科や整形外科を受診するケースが多い。
一方、米国では「ホットフラッシュ(急な発汗や火照り)」や膣症状のみが主な症状として認識されている。米国の閉経学会では、ホルモン補充療法(HRT)を第一選択として支持しているが、学歴や経済力による受診の影響の大きさがある点も指摘された。
また、米国では更年期を迎えた女性の多くが、症状緩和のためにサプリメントを利用している。ドウェック氏は「ホルモン補充療法の選択肢がある一方で、自然由来の製品を好む傾向があり、サプリメント市場は急成長している」と述べた。
〈「更年期はホットフラッシュだけではない」、日本での知見と新たなアプローチ〉
上野所長は一例として、「手指の関節痛が更年期症状の一環であることが十分に認識されておらず、多くの女性が整形外科を受診していた」と説明した。産婦人科医と整形外科医が連携し、更年期症状としての認知を広げたことで、適切な治療が可能になったという。
一方、米国では、「ホットフラッシュ」のみが重要視され、その他の症状は重要視されていないという課題から、その国に合った正しい情報を提供し、認知を高めていく必要性があるという。
さらに、人種や生活習慣の違いが更年期症状に影響を与える可能性があることも示唆される研究もある。
〈日本の成功事例を米国で展開、グローバル戦略の鍵〉
セミナーでは、日本での成功事例をアメリカ市場に展開する計画についても語られた。そのひとつとして、大塚製薬が日本で提供している「エクオール」という成分の研究が紹介された。「エクオール」は、大豆由来の成分で、更年期の諸症状の緩和が期待でき、様々な研究結果が発表されている。日本では医療従事者等を通じた情報提供が進められ、ビジネスとしても成功を収めている。
ボナファイドヘルス社も米国市場において、医療従事者と連携しながら情報提供を行っており、日本の成功モデルも活用することで、米国市場での展開を強化する狙いがある。
〈「国ごとに適した製品展開を」、市場に合わせたアプローチ〉
上野所長は、「国ごとに求められる製品は異なるため、成分や生活に合った形態含め適応させる必要がある」と述べた。例えば、日本では粒状のものや飲料の形態が受け入れられやすいが、アメリカではサプリメントタイプが一般的である。 このように各国の生活習慣や消費者ニーズに応じた製品開発を行うことが重要とした。
また、同社は北米市場の実態調査を進めており、現地の女性が抱える健康課題を明らかにした上で、実証試験を実施する計画だ。上野所長は「科学的根拠に基づいた情報提供を続けることで、女性の健康分野のリーダーを目指したい」と語った。
〈更年期市場の成長と今後の展望〉
米国の更年期サプリメント市場は、ドウェック氏によれば、2023年に約170億ドル規模に達し、2030年には244億ドルに成長すると説明。市場拡大の背景に、自然由来のサプリメントのニーズの高まりがある。ボナファイドヘルス社は女性の健康における満たされていないニーズを特定し、製品開発を行ってきた。

大塚製薬の井上眞社長は「当社は一人ひとりの生活者がウェルビーイングの実現に向けて課題に取り組む姿をサポートしたいと考えている。更年期を含む女性の健康課題は、社会的にも重要性が増しており、科学的根拠に基づいた製品で健康ソリューションを提案していく。カテゴリーリーダーとしての成長基盤を構築し、当社のグローバルな取り組みを通じて、より多くの人々の健康支援を実現していきたい」と述べた。なお、井上氏は2025年1月に大塚ホールディングスの社長にも就任しており、事業全体をリードする立場にある。
大塚製薬は、日本での成功事例を活かしながら、米国をはじめグローバルでの展開を加速させる考えだ。日米の更年期症状の違いを理解し、それぞれの市場に適した製品・情報提供を行うことで、女性の健康課題の解決に貢献することを目指している。