日清医療食品、和洋女子大学の学内実習にクックチル商品“モバイルプラス”を提供

〈学生はクックチル商品の有効活用と現場の省力化を体験〉
日清医療食品(株)は管理栄養士を目指す学生の育成支援の一環として、和洋女子大学家政学部健康栄養学科の多賀昌樹准教授の授業に、通常、契約先病院・介護施設のみにしか提供していない、同社のセントラルキッチン(以下、CK)で製造されたクックチル商品「モバイルプラス(※)」(常食・エネルギーコントロール食(以下、エネコン食)を提供した。同社が大学に「モバイルプラス」を提供するのは、昨年の龍谷大学農学部食物栄養学科に続いて2回目。

※モバイルプラスは、日清医療食品(株)のセントラルキッチンでクックチル方式により調理され、同社受託先事業所に配送する食事サービス。医療版、福祉版の2種類があり〈1〉常食、〈2〉全粥食、〈3〉塩分6g未満食、〈4〉エネコン食の4食種と、刻まない介護食「モバイルプラス やわら御膳」(※福祉版のみ)を展開している。

学外実習を控えている3年生約120人は、クックチル商品の活用と現場の省力化の効果を体験して、これからの生産年齢人口減少に伴う人員不足などの課題に、給食サービス業界はどう対応していくべきかを強く考える機会を得た。産学連携のコラボ授業の詳細をまとめる。

和洋女子大学 南館

和洋女子大学 南館

〈労働力不足で求められるCK方式 そのメリットとは〉
モバイルプラスが提供されたのは、3年生を対象に通常食と治療食の違いを学ぶ「栄養療法(治療食)実習」の授業。和洋女子大学(千葉県市川市国府台2-3-1)南館の3階調理実習室で合計3回、1回あたり40食が提供された。

7月9日に行われた実習には、40名の学生が参加した。調理を始める前、阿南道也管理栄養士(東京支店管理部受託管理企画課)は、「少子高齢化に伴いマンパワーの減少は避けて通れない。少ない人数で高い品質の食事を一括して管理、提供することが求められている」とCK 方式に注力する理由を説明して「全国のCKの献立を共有し、調理工程を同一とすることで、安定した品質と不足の事態での供給力を確保できる。また、集中した品質管理を行うことで、安全で衛生的な食事提供が可能だ。さらに、献立作成業務の集約により、事業所運営の省力化も実現する」とCK 方式のメリットを説明した。

その後、「モバイルプラス」を1日10万食製造可能なヘルスケアフードファクトリー亀岡(HFF亀岡)のPR動画を放映。5割の省人化を実現した最新工場の設備に多くの学生がくぎ付けになっていた。

〈「モバイルプラス」を実際に使ってCK方式の強みを学ぶ〉
40名の学生は5名8班に分かれ、4班が常食を、残り4班がエネコン食を担当する。常食のメニューは「ごまだれ冷やし中華」「焼き餃子」「ほうれん草の温サラダ」「フルーツヨーグルト」の4品。実習室をサテライトキッチンに見立て、学生は同社の現場で使用している調理マニュアルをもとに調理に挑む。クックチル商品を手にした学生は餃子や冷やし中華の“ タレ” まで、真空パックされていることにビックリしていた。

和田寛章調理師(東京支店管理部受託業務課)は「プロがやらないとできない料理を全国に広めても仕方ない。誰がやっても一定以上の食事が提供できることがモバイルプラスの強みだ。皆さんに『え、これでできちゃうの!』と思ってもらえたら、授業に参画した意味があります」と述べ「普段の実習では手袋を付けないと思うが、我々は現場で必ず手袋を付けているので、本日は手袋を付けて調理、盛り付けを行って欲しい。また、実際にプロが作った献立を作ることで、常食とエネコン食で一体どこが違うのか、考えながら調理を進めて欲しい」と求めた。学生は誰が指示するわけでもなく、パックの開梱、計量、具材のカット、盛り付け、洗浄など調理作業を分担し、テキパキ動き、45分もすると、どの班も調理を完了した。

通常の調理実習が90分以上かかるところ、半分の時間で終了する手際の良さに驚く学生は多く、「めっちゃ楽!」「すごく簡単で手軽」「ハサミでパックを切って盛り付けるだけ」「下処理がいらない」「生ごみも少ない」など率直な思いを言葉にして、試食時には「美味しい!」の言葉が実習室から多く聞こえた。

上から、日清医療食品のクックチル商品(常食)、モバイルプラスを活用した常食メニュー、モバイルプラスを活用したエネルギーコントロール食メニュー

上から、日清医療食品のクックチル商品(常食)、モバイルプラスを活用した常食メニュー、モバイルプラスを活用したエネルギーコントロール食メニュー

〈常食とエネコン食の違い、盛り付けのコツ、そしてチームワーク〉
調理終了後、阿南管理栄養士は総評を次のように述べた。

「常食とエネコン食の大きな違いは3つある。1つ目は冷やし中華の麺の量。常食は200g に対しエネコン食は150g。2つ目はチャーシュー。常食にはあるがエネコン食にはない。3つ目はデザートの内容。常食はフルーツヨーグルトだが、エネコン食はマンゴー。エネコン食は調理師のことを考えて、できる限りベースである常食から外れないように献立を作っている」。

「盛り付けは、細かく盛ると見映えが良くなる。麺は中央を山盛りにして具材を盛り付ける方が良い。冷やし中華は具材がたくさんあるが、麺がある程度隠れるくらい盛り付けるとベスト。青菜も小高い方が見映えが良くて食欲がわく」。

そして「仕事で一番大事なのはチームワークだ。社会に出ていろいろな人と関わる際は、周りを見ながら自分が何をすべきか正確に把握する能力が必要。どの班もチームワークが良かったので、今後も研修などを通して能力に磨きをかけて欲しい」とエールをおくった。

〈管理栄養士・栄養士の役割の変化と給食のイメージの向上〉
大学関係者によると、給食調理は大変だから就職先として選びたくないと考える学生が増えてきているという。そういった状況があるからこそ、多賀昌樹准教授はCK 方式による簡便な食事提供を学生に身を持って体験させたかったという。

「現場にCK 方式が導入されることで、事業所は空いた時間で食形態の変更や栄養指導などに取り組むことができる。そのような食事提供システムの変化から、管理栄養士・栄養士の役割も変わってくる。献立作成だけでなく、患者と接して、患者にどのような食事が求められるのか分析する力が必要になってくる。手の込んだ料理を作るのではなく、数値を理解し、料理を理解し、患者の思いをたくさん汲み取れる管理栄養士・栄養士になって欲しい」と学生の今後に期待をかけた。

病院給食現場で働くことを夢見る学生もいる。佐藤日菜乃さんは「いつか病院で美味しい給食を作りたい。そして栄養指導も頑張りたい」と目を輝かせながら夢を語ってくれた。

労働力不足が進み、これまで同様、病院給食の提供を継続するためには、CK 方式のような新しい給食システムが不可欠になっている。今回の授業のような給食の仕事のイメージを払拭し、この業界に人を集める取組みはさらに求められてくるに違いない。

〈給食雑誌「月刊メニューアイディア」2018年8月号より〉