「特定技能」による新たな外国人材受入れに関する制度、概要まとめ
農林水産省は新制度の普及・推進を図るため、2月14日から3月18日にかけて、飲食料品製造業分野及び外食業分野における新しい外国人材の受入れに関するブロック説明会を開催しており、初回・埼玉会場には、定員を超える200名以上の外食事業者・食料品製造事業者らが参加し、飛び交う質問の多さに注目度の高さが見て取れた。
特定技能1号は、通算で最長5年在留が可能。また、昨年11月に外国人技能実習の対象職種に追加された医療・福祉施設給食製造分野で、技能実習1号(1年間)・2号(2年間)を修了した外国人が、その後特定技能に移行した場合は、合計8年間在留できる。人手不足解消の一手として注目を集める新制度の現時点の概要をまとめる。
〈急ピッチですすむ「特定技能」の制度準備〉
2月14日にさいたま新都心合同庁舎で開かれた第1回説明会には参加申し込みが殺到し、大勢の外食事業者・食料品製造事業者らが会場を埋め尽くした。新藤光明外食産業室室長は「本年4月1日の制度施行に向けて、出入国環境の手続きの整備や試験の実施対策等の準備を急ピッチですすめている。制度初年度で検討中の部分や未決定の部分がどうしてもあり、情報が五月雨的になるが、分かりやすい情報提供に努めたい。本日を皮切りに全国で説明会が開かれる。参加者の質問や指摘により我々が想定してなかった論点が生まれ制度がより良いものになる。積極的な質問を期待したい」と述べ、制度概要と制度利用フロー等について丁寧に説明し、参加者と質疑応答を行った。
〈特定技能1号・2号の位置づけと対象産業分野〉
【図1】就労が認められる在留資格の技能水準(法務省資料より)
「特定技能」の概要説明の前に、在留資格全体の位置づけを把握したい。【図1】は就労が認められる在留資格の技能水準を示しており、上にいくほど技能レベルが高くなっている。在留資格はこれまで、高い技能を持つ専門的・技術的分野で活躍する「現行の在留資格」と、非専門的・非技術的分野である「技能実習」の2つがあった(※1)。政府は「現行の在留資格」と「技能実習」の技能レベルに差異があることから、専門的技術的分野のハードルを下げることを目指し、「特定技能1号・2号」を新設した。「特定技能1号」の対象産業分野は、外食業(給食サービス含む)、飲食料品製造、介護、農業、漁業など14業種である。現行の在留資格と並び、より高度な技能が求められる「特定技能2号」については、制度開始からの運用は建設、造船・舶用工業の2分野のみに限られており(※2)、当面、外食(給食サービス含む)は特定技能1号のみ受け入れることができる。
※1 留学生のアルバイトは資格外活動であり、週の勤務時間は28時間内に限られている。
※2 制度として可能性が閉ざされているわけではなく、制度を運用していく中で、具体的な要望・提案があれば検討していく、という。
〈「特定技能1号」のポイント〉
特定技能1号のポイント(法務省資料より)
「特定技能1号」のポイントは表のとおり。在留期間は通算で上限5年まで可能。技能測定試験と日本語基礎テストによる能力の確認が必須だが、「技能実習2号」を修了した外国人は試験等が免除される。この試験免除について補足すると、技能実習は1号、2号、3号があり、1号が1年間、2号が2年間、3号が2年間、合計5年間の在留資格があるのだが、2号を修了した外国人がその後、特定技能1号に移行する場合は試験が免除されるというもの。ただし、外食業への移行が認められている技能実習2号の移行対象職種は「医療・福祉施設給食製造」業種のみであり、「医療・福祉施設給食製造」が技能実習の対象職種に追加されたのは昨年の11月16日であるため、当面は試験で入ってくる人のみが対象となる。
〈外国人を受け入れるための基準と義務〉
受入れ機関が外国人を受け入れるための基準・受入れ機関の義務(法務省資料より)
【図2】制度概要(受入れ機関と登録支援機関、法務省資料より)
制度の概要を示したものが【図2】である。基本的には受入れ機関(企業)が雇用される外国人と直接、雇用契約を結び、直接、支援を実施。出入国在留管理庁に対して必要な届け出を行い、指導・助言を受ける。ただし、受入れ機関が外国人への支援を自ら行うことが難しい場合は登録支援機関に委託することもできる。その場合は、登録機関が様々な支援を行い、すべて委託すれば、受入れ機関に支援に必要な体制がなくても支援体制があるものと満たす。以下に、外国人材、受入れ機関それぞれの制度利用フロー【図3】【図4】を掲載する。
【図3】外国人材からみた特定技能の制度フロー(法務省資料より)
【図4】受入れ機関からみた特定技能の制度フロー(海外から採用するケース、法務省資料より)
〈外食業分野の対象業種・業務〉
外食業分野の対象は、日本標準産業分野の「飲食店」「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当する事業者が行う業務とされ、具体的には食堂、レストラン、料理店、喫茶店、ファストフード店、テイクアウト専門店(店内で調理した飲食料品を渡すもの)、宅配専門店(店内で調理した飲食料品を配達するもの)、仕出し料理店などが挙がり、給食サービスも含む。特定技能1号の外国人が従事する業務は、飲食物調理や接客、店舗管理など外食業全般である。
なお、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務として、原料の調達・受入れ、配達作業等があるが、これらの業務を付随的に従事することも可能である。
〈受入れ見込み数は5年間で5万3千人〉
厚生労働省「外国人雇用状況」の届け出状況まとめによると、外食業の外国人労働者数は2017年10月末時点で約14.3万人。7割は留学生などの資格外活動であり、在留資格を持つ人は3割に過ぎない。そのうち、外国料理の調理師など専門的・技術的分野で働く人は8%の11,911人であり、技能実習(セントラルキッチン等の食品製造部門で働く人)は1%の1,426人である。
農林水産省は、特定技能の外食業分野におけるむこう5年間(2019年度~ 2023年度)の受入れ見込み数を最大53,000人としており、これを5年間の受入れ上限として運用していく、という。
〈特定技能1号の在留資格の取得条件〉
新藤室長は「留学生のアルバイトと同じ人材ではなく、飲食店等における全般的な知識を持ち、何かしらのリーダー的な立場に育っていく素養がある人を選ばなくてはいけない」とし、次のとおり資格取得条件を説明した。
外食業分野における特定技能1号の在留資格を受け入れる外国人は、以下に定める【1】及び【2】の試験に合格した者、または、「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を修了した者とする。
【1】技能
国外・国内ともに、外食業技能測定試験(仮称)。
試験内容:食品衛生に配慮した飲食物の取扱い、調理及び給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能を確認する。また、業務上必要な日本語能力水準についても確認する。
試験科目:「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」について知識、判断能力、計画立案能力(簡単な計算能力を含む)を測定する筆記試験とする。全ての科目を受験することを要すが、飲食物調理主体または接客全体を選択すれば、配点について傾斜配分を受けることができる。
実施回数:国内及び国外でそれぞれ概ね年2回程度(予定)。
開始時期:2019年4月(予定)。
開催地:東京・大阪(予定)。
※国外の開催について
ベトナムで4月に試行する(調整中)。ただし、教育訓練等を行う送り出し機関の参入を待たなくては難しい部分もあるため、本格実施は2019年秋・冬頃になる見通し。
【2】日本語能力
国外では「国際交流基金日本語基礎テスト」または、国外・国内共通で「日本語能力試験(N4以上)」。
〈雇用する事業者に課される条件〉
なお、雇用する事業者は、農水省、関係業界団体、登録支援機関らから構成される「食品産業特定技能競技会」の構成員となることが求められ、各種情報の周知・報告、協力が必要。また、「飲食物調理」「接客」「店舗管理」の業務であっても、「接待」を行わせることはできない。
〈特定技能 制度スケジュール〉
3月1日以降、地方出入国在留管理庁で相談受付が始まり、申請書のサンプルも配布開始。3月中旬には、政省令が交付され申請書の確定版がホームページでダウンロード可能となり、4月1日に制度運用が開始、各種申請の受付が始まる。
届け出の詳細及び様式については、3月中は法務省ホームページ、4月以降は新設される出入国在留管理庁ホームページに掲載予定である。
〈給食雑誌「月刊メニューアイディア」2019年3月号より〉